DI Onlineのロゴ画像

InsideOutside
セルフメディケーションの有用性のエビデンスをわれわれで作ろう!
日経DI2014年12月号

2014/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年12月号 No.206

 この国では、セルフメディケーションは未来永劫進むことはない─。去る10月24日に公表された日本医師会総合政策研究機構(日医総研)のワーキングペーパー(WP)を読んで、そんな感想を持った方も少なくないだろう。「薬局等でのセルフメディケーションの現状と課題について」と題したそのWPは、日医総研が日本医師会のシンクタンクとしての役割を実にしっかりと果たした内容となっている。

 内容をかいつまんで紹介すると、薬局等での自己採血検査に強い懸念を表明したものとなっている。安全対策の不十分さに始まり、ビジネス化への憂慮、そして薬剤師が診療行為を行うことを警戒しているかのような内容だ。これに一々反論していても始まらないことは承知しているが、今回はあまりにも誤解が多いので、指摘しておきたい。

 まず指摘したいのは、セルフメディケーションに対する認識不足だ。「セルフメディケーションはいまだにその定義も確立しておらず、国民のコンセンサスも得られていない」との見解を示す一方で、世界保健機関(WHO)や厚生労働省による定義も明記している。何をもって「定義が確立していない」と主張するのか。根拠を問うてみたい。

 こうした主張の裏にあるのは、医師のセルフメディケーションに対する拒否反応だろう。やや話はずれるが、イコサペント酸エチル(EPA)製剤エパデールのスイッチ化がいい例だ。OTC医薬品という、薬剤師が主体的に扱っていくものに対して、日医は首を突っ込むどころか体を張って阻止することで、スイッチ化は骨抜きにされ、形ばかりのものになってしまった。そして実際に、EPA製剤のOTC薬であるエパアルテは販売中止に追い込まれた。

 WPの結論部分には、「セルフメディケーションが医療費を抑制するというエビデンスはない」との記載がある。しかし、少なくとも今の調子で医療費が膨らんでいけば、国民皆保険制度を維持できなくなるのは明らかだ。だからこそ、今後の日本の医療制度を守るものとして、セルフメディケーションの推進が声高に叫ばれているのである。

 日医がこれほど強硬に反発するのは、ほとんどの医師は健康保険制度で生計を維持しているため、セルフメディケーションを推進すると医師の食い扶持が減らされてしまうと考えているからだろう。他方、簡単な検査だけでなく、採血や予防接種も薬局で行っている国もあるというのに、日本では、医師不足を嘆き、業務過多を訴えながらも、医師が全ての業務を抱え込み、その費用を健康保険でまかない続けている。こんなことを続けていては、医療制度の崩壊は避けられない。

 セルフメディケーションとは、医師を排除するものではないということに気付いてもらわなければ、この国の医療に未来はない。そのために、私たち薬剤師がなすべきことはただ一つ。薬剤師によるセルフメディケーション支援の実績を積み重ねて、その意義を示すことだ。今回の例で言うなら、薬局単位、地域単位で自己採血検査を行うことで、健康管理に努める動機付けを地域住民に対して行うとともに、受診すべき患者を適切に見いだして医師への受診を促し、地域の医療水準を低下させずに医療費を削減できると示すことだ。

 「セルフメディケーションが医療費を抑制するというエビデンスはない」とWPは書いたが、そのエビデンスをわれわれが作るのだ! そんな気概を持って取り組みたいものだ。(十日十月)

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ