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調剤報酬請求の落とし穴
指導や監査のルールと動向 個別指導はここ数年増加傾向
日経DI2014年12月号

2014/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年12月号 No.206

水口錠二●Mizuguchi Jyoji
事務職員として医療機関に勤務後、独立して医療コンサルタントとなる。一般社団法人日本医療報酬調査会理事長として、医療機関や薬局の経営コンサルティング、レセプト指導、査定対策などを行う。池坊短期大学文化芸術学科教授として診療報酬、保険制度、関連法規などの講義も受け持つ。

 今回は指導や監査について解説する。指導とは、各地方の厚生局が中心となり、都道府県や厚生労働省などが加わって行う、調剤行為やレセプトのチェック行為のこと。審査と異なるのは、当局が不適切と考える調剤行為・レセプト請求について、是正に向けた“アドバイス”を行うのが目的という点である。

 アドバイスというと聞こえはいいが、かなり強い口調で指導されることもある。指導時の叱責や罵倒などを苦に、医師や歯科医師が自殺したとする事件がこれまで複数発生している。

 不適切な調剤行為・レセプト請求をしなければ指導は受けない、とは言い切れない。指導の対象は、後述するようにレセプト単価で決められる部分が大きいためである。調剤行為の適切性を判断するのが難しいケースも多々あり、全ての薬局が対象となり得る。

一度は必ず受ける集団指導

 図1に、指導・監査の大まかな流れを示した。指導には「集団指導」「集団的個別指導」「個別指導」がある。

図1 指導・監査のフローチャート

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 「集団指導」は新規開局時などに一律に行われるもので、心理的負担はさほどないだろう。集団指導は、市町村公共施設などの一室に薬剤師を集め、講習会方式で行う。保険薬局や保険薬剤師の新規指定・登録時や更新時、調剤報酬改定時などに行われる。このため薬剤師は必ず一度は集団指導を受けているはずである。

 集団指導の約1カ月前に、日時や場所、出席者などを記載した「指導実施通知書」が届く。開催日時は平日の午後であることが多い。時間は約1時間程度で、医療保険制度の仕組みや、保険薬局・保険薬剤師の責務、保険調剤の基本的ルール、調剤報酬点数における留意事項、不適切な処方の具体例、指導・監査などの説明が行われる。個別指導のように叱責されることはないので心配する必要はない。

“高単価”で集団的個別指導

 多くの薬剤師にとって心理的負担が出てくるのは「集団的個別指導」以降の指導である。

 保険医療機関に対する指導の指針である厚労省の「指導要綱」において、集団的個別指導は「地方社会保険事務局および都道府県が共同で指導対象となる保険医療機関等を一定の場所に集めて個別に簡便な面接懇談方式により行う」とされている。

 内容としては、集団指導と同様に講習会方式での指導が行われる。代表的な処方箋記載内容の誤り、算定要件不足、施設基準不備などが紹介され、適切な算定の仕方についてもアドバイスされる。これに加えて、面接方式の個別指導も実施され得るが、実際は省略されることが多いようである。

 集団的個別指導の選定基準は形式的で、調剤報酬明細書1件当たりの平均点数が高い順に選定することになっている。一般に、1件当たりのレセプト単価が各都道府県の平均よりも1.2倍以上となっている薬局のうち、上位8%の薬局が選ばれる。ただし、当局が別途必要と認めた薬局が選ばれることもある。

 長期処方や高額な薬剤が多いなどの理由でレセプトが高額になったとしても、指導対象になる。指導の条文では、「(集団的個別指導を受けた)翌年度においても高点数保険医療機関に該当した場合、翌々年度に個別指導を行う」などとされているため、集団的個別指導を受けた翌年度の請求点数には神経を使う薬局も多い。読者の中にも、請求の一部を自ら取り下げた経験のある人もいるだろう。

個別指導は自主返還要求も

 「個別指導」は、個別に面接方式により行われる。個別指導の対象となるのは前述したように、集団的個別指導の結果、翌年度も高点数(上位4%)の薬局に該当した場合が多い。また個別指導の結果、「再指導」の評価を受けた場合や、「経過観察」の評価を受けその後改善が認められない場合、監査で戒告または注意を受けた場合なども対象となる。他に、支払基金や保険者、患者などからの情報提供に基づき個別指導が行われることもある。

 個別指導の内容は様々だが、基本的に指導官との面談で行われるため心理的負担がかなり大きい。指摘事項に関しても厳しい措置が取られ、指摘された項目に関する調剤報酬の自主返還を求められることが多い。個別指導を受けた薬剤師に聞くと、「あれは指導や質問じゃなくて尋問」「監査や指定取消をちらつかせ、脅迫に近い」などと話しており、いかに厳しい口調で指導が行われるかがうかがえる。

 個別指導後、「概ね妥当」「経過観察」「再指導」「要監査」の4段階で評価され、要監査となれば後述する監査が行われる。また、「再指導」の評価を受け、再指導後も改善が見られない場合も、監査に移行することになる。

 なお、個別指導には、薬局の新規保険指定後(約1年以内)に行われる「新規指定後個別指導」もある。こちらは集団指導と同様に教育的意味合いが強いが、通常の個別指導と同様、レセプト内容に基づき調剤報酬の自主返還が求められることもある。

監査で原則5年分の返還

 監査は、指導の最終段階である。請求に不正または著しい不当が疑われる場合に行われるもので、薬局の開設者・管理者に対する出頭要請、指導官による薬局立入検査などが行われる。不正や不当の事実が認められれた場合は、原則として過去5年分の不正請求額の返還を求められ、この期間内の全患者分の調剤録を対象とした自主点検および自主返還も求められる。

 監査後の行政措置には「注意」「戒告」「指定(登録)取消」があり、最も重い処分は「指定(登録)取消」である。故意に不正請求を行った場合や、重大な過失により不正請求をしばしば行った場合などに、この処分が下される。「戒告」は、重大な過失により不正請求を行った場合や、軽微な過失により不正請求をしばしば行った場合などに下される。「注意」は、軽微な過失により不正請求を行った場合に下される。

 このほか、「指定(登録)取消相当」という措置もある。これは行政処分前に自主的に廃止・登録抹消した場合の扱いで、実質的には指定取消である。

 指定取消後の再指定について、行政側は5年間再指定を拒むことができる。薬局では自主廃業することも多い。

 参考までに、保険薬局に対する指導・監査の件数の年次推移を表1にまとめた。特にここ数年、個別指導の件数が顕著に増えている。保険財政の悪化に伴い、薬局に対する締め付けが強化されているといえるだろう。

表1 保険薬局に対する指導・監査の件数の年次推移

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