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DIクイズ1(A)
DIクイズ1:(A)「脚気から来る心不全」の病態
日経DI2014年12月号

2014/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年12月号 No.206

出題と解答:笹川 大介
(はらだ薬局[鹿児島県薩摩川内市])

A1

(2)高拍出性心不全

A1

(1)ラシックス(一般名フロセミド)

 心不全とは、末梢主要臓器の酸素需要量に見合うだけの血液量を心臓から拍出できないために、動悸や労作時の息切れ、むくみなどの症状を呈する疾患である。わが国には約100~250万人の慢性心不全患者がいるとされる。有病率は年齢とともに増え、65歳以上が80%を占める。

 心不全の多くは、心筋が障害を受けて心臓のポンプ機能が低下し、心拍出量が減少してうっ血を来すものである(低拍出性心不全、うっ血性心不全)。高血圧は低拍出性心不全の主要な原因の一つで、心筋に継続的な圧負荷が掛かることで心肥大を起こし、心機能が低下する(高血圧性心不全)。

 一方、Tさんが医師に告げられた「脚気から来る心不全」では、心拍出量の増加が認められる。この高拍出性心不全では、まず末梢組織の酸素需要が増大する要因があり、それに見合うように心拍出量の増加が起きるが、十分には酸素需要を満たせないため、動悸などの心不全症状が表れるのである。脚気のほか、甲状腺機能亢進症や貧血などが原因となることが知られている。

 今回、Tさんに処方されたビタメジンは、ビタミンB1(チアミン)誘導体のベンフォチアミン、ビタミンB6のピリドキシン塩酸塩とビタミンB12のシアノコバラミンを含有する複合ビタミン剤である。チアミンには、糖質をエネルギーに変換する反応の補酵素としての作用と、神経機能を正常に保つ作用がある。このチアミンの欠乏により起こる代表的な疾患が脚気である。脚気は、多発性末梢神経障害を主体とする乾性脚気と、心不全症状が強い湿性脚気に分類できる。脚気の心不全症状は、心筋のエネルギー代謝障害や末梢神経障害に伴う末梢血管拡張により生じるとされ、Tさんの病態は、後者の湿性脚気と考えられる。

 チアミン欠乏の主要な原因には、(1)食事(摂取量不足、偏食など)、(2)需要量増大(糖質過剰摂取、重労働など)、(3)吸収障害(アルコールなど)、(4)活性化障害(肝障害など)─がある。また、薬剤性にチアミン欠乏を生じることもあり、Tさんが服用している利尿薬のフロセミド(商品名ラシックス他)も原因薬になる。

 利尿薬で尿量を増加させると、チアミンなど水溶性のビタミンの排泄が促進されて欠乏を引き起こすことが知られており、実際、1日80mgのフロセミドを服用した患者の96%(24/25)にチアミン欠乏が認められたとの報告がある。一方、Tさんが服用している他の2剤、β遮断薬のカルベジロール(アーチスト他)とアンジオテンシンII受容体拮抗薬のカンデサルタンシレキセチル(ブロプレス他)には、副作用としてチアミン欠乏を生じるとの報告はない。従って、医師が中止を指示した薬剤はフロセミドだと考えられる。

 なお、脚気の治療には、チアミン誘導体の単味薬(アリナミンF他)ではなく、チアミン誘導体を含む複合ビタミン剤がよく用いられる。これは、チアミン欠乏がある場合、他の水溶性ビタミンも不足していることが多いためである。生活指導としては、玄米や豚肉などチアミン含有量が多い食品の摂取や、飲酒習慣がある人には節酒を勧めることが大切である。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 脚気は、ビタミンのうちB1が不足すると起こる病気で、脚のむくみやしびれのほか、動悸など心臓の症状が出ることもあります。Tさんが飲んでいる3種類のお薬のうち、尿の量を増やしてむくみを取るラシックスが、尿に溶けやすいビタミンB1を体の外に出してしまっていたようですね。先生はラシックスを中止するようにおっしゃっていたと思いますが、いかがでしたか。

 それから、今日処方されたビタメジンは、ビタミンB1とB6、B12が配合されたビタミン剤です。飲んでいくうちに脚気の症状は軽くなると思いますが、お薬だけではなく、食生活の改善も大事です。ビタミンB1は玄米や豚肉に多く含まれています。また、アルコールはビタミンB1の吸収が悪くなる原因になりますので、できるだけ休肝日を作ってみてください。

参考文献
1)Can J Clin Pharmacol.2003;10:184-8.

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