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患者指導ワンポイントレッスン
漢方薬の味をマスキングする飲食物
日経DI2014年11月号

2014/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年11月号 No.205

監修 武井 克己氏
(たけい小児科・アレルギー科)

 小児科領域における漢方薬は、かぜ症候群や感染性胃腸炎(嘔吐、下痢)の他に、夜泣き、疳の虫など西洋医学で対処できない病態にも用いられる。しかし乳幼児は漢方独特の味や香りが苦手であり、飲ませるのが難しい。

 漢方エキス剤を導入している当院では、服薬アドヒアランスを改善する目的で、味を分からなくさせる(味マスキング)効果のある飲食物を探し、実際に医院スタッフが味見をして服薬指導に反映させてきた。

 今回は、かぜ症候群に対して処方頻度が高い漢方エキス剤と飲食物による味マスキング効果の組み合わせを次ページの表にまとめたので参考にしていただきたい。より詳しい情報は当院のウェブサイト(http://www.takei-c.com/diary/cn43/kanpo_drug.html)に公開している。

 一口に漢方エキス剤といっても味は様々である。例えば、もともとの味が飲みやすい麦門冬湯は、どの飲食物に混ぜても労せず服薬できるが、苦みの強い半夏瀉心湯は、ココア以外では十分な味マスキング効果が得られなかった。

調製は隠れて行うべし

 飲食物を用いて調製する際、薬を混ぜているところを子どもに見られてはいけない。薬を飲む行為そのものを拒否している場合、飲食物に薬が入っていることがばれてしまうと飲ませるのが非常に難しくなる。

 具体的な味マスキング法は、用いるものが液体の飲料と半固形の食物とでは少々異なる。

 ジュース、ココアなどの飲料にエキス剤を溶かして飲ませる場合、まず処方された1回分のエキス剤にティースプーン1、2杯のお湯を加え、5分ほど放置して水分を浸透させる。溶けてきた頃合いを見計らって飲料50mL程度を加えて混ぜる。これより少ないと漢方薬の味が強く出てしまい、これより多いと飲み残しが心配になるため、試行の末、50mLに落ち着いた。

 アイスクリームのような半固形物の食品には、混ぜ込んで与えることを基本としている。子どもはエキス剤顆粒のざらつきを嫌がる場合があるので、薬包の上から麺棒やすりこぎ、太いペンなどを用いてあらかじめ押し潰しておく。混ぜる食品の量は大きめのスプーン2杯分くらいが適当である。

 各種の飲食物の中で、ココアはほぼ全てのエキス剤に対して味マスキング効果を示した。アイスクリームも有効で、これは強い甘みだけでなく、冷たさによる味覚の鈍麻も有利に働いていると見られる。

 ココアの強い味マスキング効果は、ココアに含まれるカカオバターが舌の味蕾にある親油性苦味受容体に結合し、他の苦味物質の結合をブロックすることによる1)。なおココアに含まれるカフェインの量は微量であり、1、2歳以降であれば飲用可能とされている。子ども向けに販売されているココア味の麦芽飲料でも代用可能である。

 服薬補助ゼリー類も試したが、味が弱くて漢方エキス剤の味に負けてしまい、マスキングには不十分と判定せざるを得なかった。

 なお、味マスキングは漢方薬の香りによる効果を消してしまうため、否定的な意見もあるが、服薬に慣れるための方便と考えている。漢方薬を長期間服薬している小児の場合、初めこそ苦労しても最終的には水やお湯で飲めている子が多い。

 小児患者の漢方治療における最初のハードルを越える手助けを、薬剤師にはお願いしたい。

参考文献
1)都甲潔、内田享弘『食品・医薬品の味覚修飾技術』(CMC出版、2007)p.17.-21.


指導箋は、複製して配布するなど、薬局での患者指導に自由にご活用ください。DIオンライン(http://di.nikkeibp.co.jp)からもダウンロードできます。

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