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Interview
ヨシケン岩月薬局開設者、日本ジェネリック医薬品学会理事、岩月進氏
日経DI2014年11月号

2014/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年11月号 No.205

いわつき・すすむ
1955年生まれ。78年名城大学薬学部卒業、塩野義製薬に入社。81年ヨシケン岩月薬局(愛知県刈谷市)を開設。2004年から10年まで日本薬剤師会常務理事を務め、11年4月より愛知県薬剤師会副会長。現在、愛知県内に薬局3店舗を開設している。10年4月から日本ジェネリック医薬品学会理事。

─今年4月の調剤報酬改定では、後発医薬品調剤体制加算の算定要件が変更されるなど、算定のハードルが上がったと言われています。改定にどんな印象を持たれていますか。

岩月 後発品の部分だけを見ると、いい改定だったと思います。愛知県薬剤師会でアンケートを行ったところ、加算を算定できなくなった人もいますが、準備をしていた人たちはついて行けた印象です。準備していた人というのは、何としても後発品の使用を進めなければという意識を持って、患者の啓発に取り組んでいた薬局です。

 近隣の医療機関の意向や、患者の意向など、それぞれ事情はありますが、大きいのは薬局と薬剤師がどういう意識で取り組んでいるかです。だからいい改定だと思うのです。やらなくてもできてしまうとか、やったのに算定できないようでは、いい改定とは言えません。

─努力したところとしないところで、二極分化し始めているわけですね。

岩月 そう思います。「国の政策に従えばいいのか」といった批判があるかもしれませんが、そもそも後発品は医療の効率化のために使うものですよね。後発品を使って、仮に効果が7割に落ちても値段が半分になったら、医療の効率は上がります。より効率的で適正な薬物治療を患者に提供しようとすると、後発品は避けて通れません。まして日本の後発品の品質は優秀なわけですから、使わない手はないです。国の政策だからやるというのではなく、患者のために進めるべきなのです。

 ただし、後発品の使用促進に伴う在庫負担の問題も考慮すべきです。病院では採用品変更で済むかもしれませんが、薬局や卸では在庫がかなり増えます。例えばブロプレス錠2・4・8・12mgの4規格あって、包装を考慮すると全部で13アイテムでしたが、9月に発売されたあすか製薬のカンデサルタン錠「あすか」は12アイテムあり、合計すると25アイテムになりました。それが12月には30数社からそれぞれ何アイテムも出てくるのですから、卸には大きな負担になります。

 薬局は卸ほど多くの種類を置く必要はありませんが、それでも先発品を置くのはやめられないので、在庫は増えます。後発品の使用促進には、そうした負担のしわ寄せが卸や薬局に来るという実態があります。

─負担増に対して、何らかの政策的手当てが必要ということですね。

岩月 金銭的なものかどうかは別にして、負担のしわ寄せをどうすればなくせるかは考えるべきです。薬局では在庫増に加えて、例えば自動分包機のカラムが増えるので、その設備投資の問題もある。さらに、後発品に切り替えることで売上高は減ります。つまり、売り上げを減らして在庫を増やしているわけですから、インセンティブがなかったら積極的に進めにくい話です。だから後発医薬品調剤体制加算が設けられているのかもしれませんが、これだけ後発品が増えると、それで十分にカバーできているのか疑問を感じます。

 在庫の問題をカバーするには、地域で使用する薬をリストアップした医薬品集のようなものを作って医療機関と薬局とで情報共有し、地域の中で在庫を融通し合うようなことも考えていかなければならないでしょう。

─後発品の普及率上昇に伴って、新しい課題も見えつつあるわけですね。

岩月 例えば後発品がごく普通の存在になったときに、先発品をどうするのかということも、今から考えておかないといけないでしょう。皆が後発品を使うようになったときに、果たして特許切れの先発品を持っている必要があるのか、といったことです。

 例えばアムロジピンベシル酸塩には、アムロジンとノルバスクという2種類の先発品があって、それぞれに普通錠とOD錠があり、その上に後発品が出てくる。しかも使われないと使用期限が来て廃棄しなきゃいけない。その損耗料が後発品の使用促進によってどのぐらいになっているのか。そういうこともちゃんと調査した方がいいと思うのです。

 それから、不動規格の問題もあります。メーカーでも実は売れていない規格はかなり廃棄していると聞きます。かつては、後発品の使用促進のためには全規格そろえることが政策的な命題としてあったわけですが、本当に今でも全部の規格をそろえる必要があるのでしょうか。全部の規格をそろえない代わりに価格を下げるという選択肢があってもいいのではないでしょうか。時代が変わったわけですから、政策誘導で進めてきた部分も変更することがあってもいいと思います。

─後発品の普及に伴い、薬剤師として業務に変化はあるでしょうか。

岩月 後発品への変更とは、製剤の変更です。有効成分は同じですが、添加物や製造方法が変わります。それを評価する仕事は元からあったのですが、今一層、薬剤師に求められている。

 例えば、メーカーも錠剤の両面にレーザー印刷で刻印したとか、普通錠だけど口腔内で崩壊しやすくしたとか言っています。それを評価するのは薬剤師以外にはいません。どうしてこの製剤を採用したのか。もちろん、薬価差が大きいからという理由では患者の納得は得られません。そういうことが試されていると認識すべきです。

 一般名処方になると、真の意味で薬物治療における役割分担ができたことになります。医師は有効成分をどれだけ使いたいのかを処方して、薬剤師はその有効成分だったら、この患者にはどういう製剤が適切かを判断する。これがちゃんとできれば本当の医薬分業になると思います。

─メーカーも様々な製剤の工夫をするようになっているので、薬剤師はそれを評価する能力を身に付けていかなければならないわけですね。

岩月 そうです。それがなければ薬剤師に調剤をさせる意味はありません。だからオーソライズド・ジェネリックについても、他に理由があるのならともかく、添加物が同じだから安心できると言って採用しているようでは、製剤評価の仕事を放棄していると見なされかねない。「同じだから安心」というような薬剤師側の都合ではなく、錠剤が小さいとか、味がいいとか、患者のメリットを考えて製剤を選択していくべきです。

 また、後発品の場合は、「こういう製剤だから、こういうメリットがあります」と言った説明ができるのだから、対人業務を増やしていく方向に調剤の仕事の中身を変えていくべきだと思います。そのために、機械化できる業務は機械に任せていくべきだし、いわゆる箱出し調剤についても採用していくべきだと思います。後発品の普及は、そうやって薬剤師の業務を見直すきっかけにもなるはずです。

インタビューを終えて

 全ては紹介できませんでしたが、話題は後発品を端緒に、医薬品供給システム、薬局業務の効率化、医薬分業や在宅医療、地域連携の在り方など、多方面に及びました。地域医療の現場にいて、薬局・薬剤師を巡る様々な仕組みに問題意識を抱いているからなのでしょう。その岩月氏が強調するのは、「これを契機に医療をもっと効率化すべき」という点。日本の未来を思えば確かに、単なる後発品への置き換えによる医療費節減で満足している状況ではなさそうです。(橋本)

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