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CaseStudy
クルーズ薬局西風新都店(広島市安佐南区)
日経DI2014年10月号

2014/10/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年10月号 No.204

 「お薬を飲んで何かあったら、すぐに連絡してくださいね」─。そう患者に伝えても、実際に患者から連絡があることは極めて少ない。薬剤師が副作用モニタリングを行う機会は、次回来局時になってしまうことがほとんどだ。「どうしたら副作用が発生した時点で患者から報告してもらえるか。検討した結果、『体調チェックシール』をお薬手帳に貼るという方法に行き着いた」。クルーズ薬局西風新都店(広島市安佐南区)エリアマネージャーの湯淺伸輔氏はこう話す。

「患者の自主報告により、適切な対応が可能になる」と話すクルーズ薬局西風新都店の湯淺伸輔氏。

 同薬局では、ハイリスク薬が処方された患者に体調チェックシールを発行し、お薬手帳の処方薬の記録の下に貼るようにしている(写真1)。チェック項目には、「胃の調子」「からだの痛み」「ストレス・疲れ・だるさ」などシンプルな単語が並ぶ。項目数は薬剤によって異なり、最大で12項目。これはハイリスク薬の副作用をカテゴリーに分類したものだ(表1)。

写真1 お薬手帳に体調チェックシールを貼って副作用の自主報告を促す試み

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表1 全ハイリスク薬を対象とした体調変化カテゴリー

 服薬指導の際に、お薬手帳にこのシールを貼り、「お薬を飲んで、ここに書かれている体調変化を感じたら、すぐに連絡してください」と伝えることで、患者からの自主報告が増えたという。

感知できる初期症状を抽出

 体調チェックシールは、「患者から“何か”あったら報告してもらうには、あらかじめ患者が“何を”報告すべきかを理解していなければならない」という、いわば当たり前の発想から生まれた。

 湯淺氏は、薬局から提供する情報を、患者が感知できる初期症状に絞り込み、それを理解しやすい表現にする必要があると考えた。

 そこで、添付文書の「重大な副作用」のうち、患者本人が感知可能な初期症状を抽出し、その体調変化を患者が分かりやすい表現に変換することにした。例えば全身倦怠感を「体がだるい」、黄疸を「白目が黄色くなる、皮膚が黄色くなる」という言葉に変えた。

 ただ、こうすると表現は分かりやすいものの、数が膨大になってしまう。そこで共通性のある体調変化をカテゴリーごとにまとめることにした。こうして薬剤と体調変化カテゴリーを整理した結果、多くの副作用がある場合でも、体調変化カテゴリーの数は限られるため、情報を絞り込めることが分かった(図1)。

図1 副作用発現時に患者から自主報告を得るための工夫

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 例えば「からだの痛み」は、体の部位、痛みの程度や頻度に関わらず、何らかの痛みがあれば該当する。「体調変化カテゴリーで表すと、該当する症状の範囲が広がり、患者から情報を引き出しやすくなる」と湯淺氏は話す。

シール作成し手帳に貼付

 次に検討したのが、どのような形で患者に体調変化カテゴリーを伝えておくかだ。薬局では薬剤情報提供文書を使って服薬指導しているが、「1枚の紙よりも、お薬手帳を活用した方が経時的な服薬状況も把握でき、携帯性も高いと考えた」(湯淺氏)。

 そこで試験的に、糖尿病治療薬の重大な副作用について体調変化カテゴリーを記した体調チェックシールを作成し、このシールの有無による患者の自主報告の変化を調査した(表2)。

表2 お薬手帳へのシール貼付の有無と自主報告数の関係

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 調査は2011年3月から4カ月間、グループの22薬局の糖尿病薬服用患者1591人を対象に行った。手帳を所持していた353人に対しては、体調チェックシールを貼付し、体調変化が発生したらすぐに報告するように指導。一方、手帳を所持していない1238人には通常の服薬指導を行った。その結果、自主報告人数は、シール非貼付群では1238人中1人だったのに対し、シール貼付群は353人中11人で、電話や非定期来局による報告が5件あった。

 自主報告をした11人の中には、メトホルミンを服用していて足のしびれを訴え投与中止になった患者や、インスリンを使用中に低血糖症状を訴え、インスリンの単位が変更になった患者もいたという。

電子薬歴システムに搭載

 糖尿病治療薬で有用性が確認できたことから、対象とする薬剤を全てのハイリスク薬に広げ、薬剤と重大な副作用、体調変化カテゴリーを結ぶデータベースを構築した。

 対象薬剤が増えると、シールを選択し記録に残す業務の負担が大きくなる。そこで、電子薬歴システムメーカーのハイブリッジ(東京都世田谷区)と協力して、ハイリスク薬が処方された際にシールを自動的に発行する機能を、同社の電子薬歴システム「Hi-story」に搭載することになった。この機能は、ハイリスク薬が新規に処方されたり種類が増えたりするとポップアップ画面が立ち上がり、シール発行の要・不要を選択できるというもの。また、指導文が自動で指導歴に登録され、薬歴にも記録が残る(図2)。新しい処方だけでなく、過去の処方に遡ってシールを発行できるので、お薬手帳を更新した場合などに再発行することも可能だ。

図2 電子薬歴システムに搭載された体調チェックシール発行機能

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 この機能を、クルーズ薬局西風新都店を含む17薬局で、12年7月から2カ月間にわたって運用したところ、電話や非定期来局での報告3件、定期来局での報告5件の計8件の自主報告が得られたという(表2)。

表2 体調変化発生時に患者から薬剤師に報告があった事例

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 ハイブリッジは、同機能を12年8月より「Hi-story」のオプション機能として販売しており、14年9月現在、全国の薬局182店舗で採用されているという。

見えてきた新たな課題とは

 これまでの使用経験から、新たな課題も浮かび上がってきた。ハイリスク薬では、注意喚起すべき体調変化カテゴリーが多くなり、特に複数のハイリスク薬を服用している患者では、常にほぼ全ての体調変化カテゴリーが記載されることになってしまう。「一律に記載するのではなく、副作用の出やすさ(出現する確率)を患者が分かるように色分けするなど、さらなる工夫が必要と考えている」と湯淺氏。合わせて、体調変化カテゴリーの表現についても、ブラッシュアップしていく考えだ。

 この方法を定着させるには、お薬手帳を持ち、日常的にその内容を確認することを患者に習慣付ける必要がある。「単なる記録ではなく、大事な情報が書かれていることを具体的に説明している。患者が、自分にリスクがあることを理解できれば、お薬手帳の所持率も上がるはず」と湯淺氏は期待を込める。

 体調チェックシールを提供する際の、薬剤師による注意喚起の方法も検討が必要だ。自主報告が多く得られている薬局の方法を参考に、報告を得やすい説明方法を探っていくという。湯淺氏は「患者に伝えておくべき情報、想定される患者の反応、その反応に対する適切な対応が規定できれば、薬剤師全員が、より適切な服薬支援を行えるようになる」と、薬剤師間での情報共有にも力を入れる方針だ。(佐原 加奈子)

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