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副作用症状のメカニズム
かぶれが悪化している気がする
副作用症状のメカニズム

2014/10/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年10月号 No.204

講師
名城大学薬学部
医薬品情報学准教授
大津 史子(おおつ ふみこ)
1983年、神戸女子薬科大学卒業。滋賀医科大学外科学第2講座勤務を経て、名城大学薬学部専攻科に入学。87年に同大学薬学部医薬情報センターに入職、同学部医薬品情報学講師などを経て、2008年から現職。

症例
 20歳、男子大学生。10年来のアトピー性皮膚炎。外用ステロイドで治療をしているが、顔面の皮疹だけがなかなか治らない状態が続いている。最近は、皮疹が悪化しているような気がしている。

接触皮膚炎のメカニズム

 日常的に「漆にかぶれた」「○○に負けた」というような表現で経験する、いわゆる「かぶれ」が「接触皮膚炎」である。

 慢性的に起こる接触皮膚炎は、「職業皮膚炎」と呼ばれ、同じ物質に日常的に曝露することによって起こることが多い。洗剤や消毒剤などをよく使う美容師や医療従事者、主婦に多い。

 洗剤で手を洗うと、皮膚の表面を保護している脂肪膜が壊れ、角質層内の脂肪や保湿成分が溶け出る。通常は、皮膚には優れた再生能力があり、障害が起こらない。しかし頻回、同じ物質に触れ、皮膚の再生能力を上回るスピードで表皮細胞が傷害されると皮膚組織が損傷される。すると、サイトカインが放出され、炎症細胞の浸潤が起こり、接触皮膚炎が発症する。

 これらは、アレルギー性の機序で起こることが多い。これは、経皮的に侵入した化学物質(ハプテンと呼ぶ)が皮膚組織の細胞膜や細胞外間質などの自己蛋白質と結合して、抗原となることから始まる。このとき、ハプテンが紫外線曝露による構造変化を起こして、反応性を獲得することがある。これを「光アレルギー性接触皮膚炎」という1)。抗原は、真皮内の抗原提示細胞(樹状細胞)であるランゲルハンス細胞に取り込まれて処理される。ランゲルハンス細胞は、抗原を提示してリンパ節へ遊走し、T細胞を活性化させ、感作T細胞を誘導して感作が成立する。その状態で同じ物質に曝露してハプテンが経皮的に進入し、自己蛋白質と結合すると、再びランゲルハンス細胞に取り込まれ抗原提示される。これを感作T細胞が発見して活性化され、抗原を排除しようとして炎症性サイトカインやケモカインを放出して炎症が起こる。

 「接触皮膚炎」と呼ばれるのは、化学物質などに接触した部位に限局して起こることが多いためだ。急性に起こる場合は「○○に触った」などの認識があるため、原因特定が比較的容易である。

 これに対して、接触部位から離れたところに、薬疹が起こるような場合を「接触皮膚炎症候群」と呼ぶ。また、過去に皮膚炎を起こしたアレルゲンを、経口的または経気道的に吸収したときに全身に湿疹や多形紅斑などの皮膚症状を起こすものを「全身性接触皮膚炎」という2)。いずれも「湿疹型」と呼ばれる、痒みを伴い赤いぶつぶつができるものが多い1) 中には、「扁平苔癬型」と呼ばれる、中毒性表皮壊死症(TEN)やスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)と同様の機序と考えられる病態となる場合もある。「蕁麻疹型」になる場合を「接触蕁麻疹」と呼ぶが、これについては前々回の「蕁麻疹」で触れた。

 接触皮膚炎症候群は、例えば、漆やぎんなんなどに接触して、ひどいかぶれを起こした後に、遠隔の皮膚に汎発性の湿疹ができる場合などが該当する。漆に含まれるウルシノールは、ぎんなんに含まれるギンゴリック酸と類似した構造を持つため交差感作を起こし、より強い症状が起こることもある。

 他にも、例えばマンゴーなどの果物やカシューナッツやピスタチオなどの豆類もウルシ科植物であり、抗原に類似性が見られる2)

 接触皮膚炎症候群の原因としては、抗原が反応局所から吸収され、全身に散布されることが考えられているが明確には分かっていない。強い局所反応が起こった後に起こるため、T細胞や樹状細胞が強く活性化されて炎症性サイトカインが多量に遊離されることも関与しているのではないかと考えられている1)

 全身性接触皮膚炎は、過去に皮膚炎を起こしたアレルゲンを、経口や経気道的に吸収すると全身に湿疹や多形紅斑などの皮膚症状が出るものをいう2)。医薬品によるものが多い。

 アレルギー性の機序で起こるものとは別に、塩酸など毒性の強い化学物質などに触れて皮膚が傷害される場合もある。これは、一次刺激による接触皮膚炎である。

 例えば、暖めるタイプの鎮痛消炎貼付薬でかぶれる場合がある。これは、とうがらしの成分であるカプサイシンが原因の場合が多い。

 カプサイシンは、貼り始めは刺激が強く血管を拡張させるが、長時間貼り続けることにより、遅効性の侵害刺激の化学伝達物質であるサブスタンス Pを遊離させ、その貯蔵を枯渇させることによって侵害受容器を遮断する。こうした、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)などとは全く異なる機序で鎮痛効果を発揮する3)。しかし、何らかの傷害を受けた皮膚の場合、一次刺激が強過ぎるためにかえって痛みを増したり、炎症を強めることがある。また、皮膚が過敏な人は短時間貼るだけでもかぶれることがある。

 光アレルギー性接触皮膚炎は、基本的にはハプテンが光を吸収して励起され、抗原となり、アレルギーを起こす。

 また、身の回りにある金属でアレルギーが起こることがある。ニッケル、クロム、コバルト、金などあらゆる金属でアレルギーが起こることが知られているが、そのメカニズムは明確にはなっていない。ニッケルは、ピアスやネックレス、装飾品、ベルトなど様々なものに使われているため、報告が多い。

副作用による接触皮膚炎

 副作用による接触皮膚炎としては、前述した(1)接触した部位に限局して起こるもの(接触皮膚炎)、(2)接触皮膚炎症候群、(3)全身性接触皮膚炎─のいずれも起こり得る。

(1)接触皮膚炎
副作用で接触皮膚炎が起こる場合としては、皮膚外用薬(貼付薬、軟膏薬、クリーム、ローションなど)や点眼薬、眼軟膏によるものが多い。

 主薬が原因となることが多いが、基剤や添加物によるものもある。外用薬では、異なる主薬であっても、基剤や添加物が同じことがある。基剤や添加物による接触皮膚炎の場合、その原因が分からずに、何度も同じ副作用を起こすことがあるので注意が必要だ。

 また、外用ステロイドでも接触皮膚炎を起こすことがある4)。本来かぶれを治療するために使っているため、気付かれにくい。ステロイド骨格そのものが抗原決定基になる場合や、側鎖が原因であったり、交差反応を起こしたりすることも多い。

 これまでに報告されている例は、ベタメタゾンの基本構造(ステロイドD環16位のメチル基がβ位に付いた構造)、デキサメタゾンの構造などである。例えば、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル(商品名リンデロン-DP他)、ベタメタゾン吉草酸エステル(ベトネベート、リンデロン-V他)、デキサメタゾンプロピオン酸エステル(メサデルム他)などがある。

 側鎖では、C17位のアルキル側鎖(クロベタゾン酪酸エステル[キンダベート他]、クロベタゾールプロピオン酸エステル[デルモベート他]など)や、ステロイドD環上のC16位およびC17位の2つの水酸基の保護基にアセトニド構造があるもの(トリアムシノロンアセトニド[アフタッチ、ケナログ他]、フルオシノニド[トプシム他]など)などである5)。外用ステロイドを塗布していても皮膚炎が治りにくかったり、塗布している部分の皮膚炎が増悪する場合は、外用ステロイドそのものによる接触皮膚炎の可能性を疑う必要がある。

 このような場合には交差反応も考え、パッチテストなどを受けることを勧め、原因物質を追及しておくべきである。Finn Chamberという国際規格の試験紙を利用したパッチテストでは、感度と特異度は70~80%とされており6)、陽性となった場合は、その薬剤の使用は避けるべきといえる。

(2)接触皮膚炎症候群
 接触皮膚炎症候群の原因医薬品としては、ケトプロフェン(セクター、モーラス他)、ケトコナゾール(ニゾラール他)、ネチコナゾール塩酸塩(アトラント)、クロラムフェニコール(クロマイ、クロロマイセチン他)、フラジオマイシン硫酸塩(ソフラチュール、デンターグル他)などが知られている2)。これらは、OTC薬に含まれていることも多いので注意が必要である。

 また、局所麻酔薬であるプロカイン塩酸塩、アミノ安息香酸エチル(アネステジン他)、ジブカイン塩酸塩(ペルカミン他)、リドカイン塩酸塩(キシロカイン他)などは、痒み止めなどのOTC薬にも含まれ、交差反応性が強く、接触皮膚炎症候群の頻度も高いとされている2)

(3)全身性接触皮膚炎
 全身性接触皮膚炎の例としては、ゲンタマイシン硫酸塩(ゲンタシン他)の軟膏による接触皮膚炎を起こした患者が、その後、別の疾患で入院してアミカシン硫酸塩の注射薬の投与を受けた際に、全身性接触皮膚炎が誘発された例などがある7)。さらに特殊な例として、禁煙補助に用いられるニコチン製剤の貼付により感作され、喫煙やニコチンガムを噛むことでニコチンが吸収され、全身性の皮膚炎が誘発されることがある。喫煙量によって、増悪と寛解を繰り返す例も報告されている8)

 このような例は気付きにくい。その発見のためには、最初の接触皮膚炎、つまり局所における接触皮膚炎があった後に、全身に皮疹が出た場合は接触皮膚炎症候群や全身性接触皮膚炎の可能性があることを知っておきたい。最初の局所の接触皮膚炎と、後に起こる接触皮膚炎症候群の大きな違いは、アレルゲンの投与経路である。接触皮膚炎は、アレルゲンの経皮吸収による自家感作性の皮膚炎であり、接触皮膚炎症候群はアレルゲンの非経皮的摂取によるものである。

 薬剤による光アレルギー性接触皮膚炎もある。例えば、アリルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の貼付薬は、皮膚に長くとどまり、光を浴びて光接触アレルギー反応が誘起されることがある9)


 最初の症例を見てみよう。患者は、アトピー性皮膚炎で外用ステロイド薬を使用していた。しかし、顔の皮疹が治らず、悪化しているように感じたため、薬局に相談に来た。

 患者は、顔にはアルクロメタゾンプロピオン酸塩(アルメタ他)の軟膏を塗布していた。薬剤による接触皮膚炎を疑った薬剤師は皮膚科への受診を促した。患者は、パッチテストを実施したところ、陽性反応が出た。他のステロイドについてもパッチテストを行い、陰性の薬剤を使って治療を開始したところ、顔面の皮疹も軽快した。

図 薬による接触皮膚炎

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参考文献
1)池澤善郎、診断と治療 2011;99:271-81.
2)池澤優子、医学のあゆみ 2012;240:858-63.
3)浜六郎 他『鎮痛・解熱治療ガイドライン』(NPO医薬ビジランスセンター、2000年)
4)鈴木加余子ら、薬局 2013;64:1913-8.
5)大井綱郎、東医大誌 2012;70:181-92.
6)Bourke J.,et.al., Brit J Dermatol 2001;145:877-85.
7)池澤善郎ら、皮膚病診療 2006;28増刊号:19-31.
8)楠瀬智子ら、日本皮膚アレルギー学会雑誌 2006;14:135-8.
9)高山かおる他、日皮会誌 2009;119:1757-93.

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