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DIクイズ2(A
DIクイズ2:(A)便に錠剤が混じっていた患者
日経DI2014年10月号

2014/10/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年10月号 No.204

出題と解答:横井 正之
(パスカル薬局[滋賀県草津市])

A1

ゴーストピル(ゴーストタブレット)

A1

セレニカR錠(一般名バルプロ酸ナトリウム)、スローケー錠(塩化カリウム)、オキシコンチン錠(オキシコドン塩酸塩水和物)、ペンタサ錠(メサラジン)、ディレグラ配合錠(フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリン)、インヴェガ錠(パリペリドン)、コンサータ(メチルフェニデート塩酸塩)など

 錠剤やカプセルの形状を残した物体が糞便中に排出される現象は、しばしば患者から報告される。このような物体は、「ゴーストピル」または「ゴーストタブレット」と呼ばれている。

 ゴーストピルは徐放化製剤に見られることが多い。Kさんが服用しているデパケンR錠(一般名バルプロ酸ナトリウム)は、水に不溶の物質で格子構造を形成した基剤(マトリックス基剤)に主薬を分散させた上で、全体を徐放性被膜でコーティングした「マトリックス型製剤」である。服用後、主薬を含む粒子がマトリックス基剤から徐々に放出され、長時間効果を発揮する。通常、これらの基剤は消化管内で崩壊するが、まれに錠剤などの形状を残したまま、糞便中に排出されることがあり、これがゴーストピルとして発見される。

 ゴーストピルが見られる薬剤は、デパケンR錠以外にもある。例えば、オキシコンチン錠(オキシコドン塩酸塩水和物)は、親水性のヒドロキシアルキルセルロースと主薬を練合して顆粒状にし、高級脂肪アルコールでコーティングして打錠したものである。消化管内で錠剤に水分が浸透すると、ヒドロキシアルキルセルロースが水和化して主薬が溶解し、高級脂肪アルコールのマトリックスの空隙から徐々に主薬が放出され、マトリックスが残る。このほか、エチルセルロースなどの不溶性の被膜でコーティングした製剤や、インヴェガ(パリペリドン)やコンサータ(メチルフェニデート塩酸塩)などの特殊な徐放化システムを採用している製剤でもゴーストピルが見られることがある。

 残渣が錠剤の形状を残している場合、有効性に不安を覚える患者は多いが、強い下痢を呈していない限り、糞便中に排出された残渣中に主薬は残っていないと考えられる。例えばジソピラミド徐放錠「テバ」によるゴーストピルを回収し、10時間の溶出試験を行った結果、溶出率はわずか1.5%だったことが報告されている。

 ゴーストピルが排出される要因には、不明な点が多い。ただし、下痢などで腸管通過時間が短い場合や、水無しで服用した場合などには、ゴーストピルが観察される可能性は高くなると考えられる。

 筆者が医薬品医療機器総合機構(PMDA)の添付文書情報検索システムを用いて調べた結果、前述の薬剤のほか、テオフィリン徐放錠(一般名テオドール、ユニコン、ユニフィルLAほか)、塩化カリウム徐放錠(スローケー、ケーサプライ)、ニフェジピンCR錠の後発医薬品(「NP」「サワイ」「日医工」ほか)などについても、添付文書の「適用上の注意」や「その他の注意」の欄で、残渣の糞便中排出について注意喚起がなされていた。また、徐放化製剤ではないが、メサラジン錠(アサコール、ペンタサほか)、フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリン配合錠(ディレグラ配合錠)も残渣の排出が報告されている。添付文書上の表現は、「ゴーストタブレット(有効成分放出後の殻錠)」「マトリックス基剤」「白色の粒子」「白色の残渣」など様々である。

 特に、後発品によるゴーストピルの排出を経験すると、患者は後発品全般に対して不信感を抱く恐れもある。ゴーストピルが排出される可能性がある薬剤については、交付時に患者に説明しておくとともに、多めの水で服用するよう指導した方がよいだろう。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 お薬がそのまま出てきたように思われて驚かれたでしょうね。こちらのデパケンR錠というお薬は、体内で成分が少しずつ溶け出して、ゆっくり効くように作られています。この錠剤は、水に溶けない成分でできたかごの中に、薬の成分がぎゅっと詰まった構造をしているのです。

 Kさんがトイレで見られたのは、そのかごの部分が溶けずに残った物で、ゴーストピルと呼ばれています。他の患者さんでも同じ現象が見られることが知られていますし、排出されたかごの中には、薬の成分はほとんど残っていないことが実験で確かめられていますので、ご安心ください。薬を服用する時に、多めの水で飲んでいただくと、起きにくくなると思います。

参考文献
1)横井正之『賢いジェネリック医薬品との付き合い方』(メディカルドゥ、2010年)

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