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相談室1:アトピー性皮膚炎患者は 汗をかいた方がいい?
日経DI2014年10月号

2014/10/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年10月号 No.204

 アトピー性皮膚炎患者にとって、汗は痒みを増強したり、皮疹を悪化させることがあるため、増悪因子とされてきました。「汗をかかないように」という患者指導も一般的に行われてきました。しかし最近になって、患者の一部には、発汗の機会を持ち、かいた汗を洗い流すことで皮疹が著明に改善するケースが存在することが明らかになりました。かいた汗による皮膚への刺激と、発汗のメリットは別々に考えるべきであると考えられるようになっています。

 汗の機能といえば、まずは体温調節が思い浮かびますが、実は保湿や感染防御(抗菌ペプチドやIgAを含む)などの機能もあります。汗と皮脂が混じり合うことで皮脂膜が形成され、これが皮膚のバリア機能に重要な役割を果たしています。

 アトピー性皮膚炎患者では、健常者に比べて発汗機能が弱まっており、発汗量が少なく、汗をかくまでの時間が長くかかっていることが分かってきました。加えて、汗の中の抗菌ペプチドが少ないなど、汗の質も低下していました。汗をかかない生活をしていると、さらに発汗機能が低下する恐れもあります。

 汗は主にエクリン汗腺で生成され、汗管を通過する間に、塩化ナトリウムや重炭酸イオンなどが再吸収されて汗孔から分泌されます。この仕組みにより、通常、汗のpHは低めに抑えられています。

 ただし、大量に発汗するときは汗管での再吸収があまり行われず、塩分が多くpHの高い汗が分泌されます。この汗を放置して水分が蒸発すると、皮膚を刺激しやすくなります。そのため、たくさん汗をかいたときは洗い流すように指導してください。

 汗を洗い流すといっても、必ずしもシャワー浴が必要というわけではありません。腕や肘なら水道水で洗い流したり、塗れたタオルを当てて患部の汗を拭き取るだけでも十分です。

 私たちの臨床研究で、アトピー性皮膚炎で外来を受診した患者42人に対し、従来通りの薬物療法に加えて、汗の機能を説明した上で、患者に発汗の機会を持ち、かいた汗は洗い流したり拭き取ったりするよう指導したところ、34人の患者で皮疹の改善が見られました。中には著明に改善した患者もいました。一方、8人は不変あるいは皮疹が若干悪化しました。この研究から、少なくとも患者の一部には、発汗の機会を持ち、かいた汗を洗い流すという汗対策を行うことで皮疹が改善するケースが存在することが証明されました。

 汗をかくと同時に、保湿剤や抗炎症薬などをきちんと使うことも大切です。炎症に伴って皮膚の肥満細胞から分泌されるヒスタミンが、発汗機能を低下させるため、炎症を抑えることは病状を改善させるだけでなく、発汗機能を向上させる副次的な効果も期待できるからです。

 汗とアトピー性皮膚炎の病態をつなぐ詳細なメカニズムはまだ明らかになっておらず、今後の研究の進展が待たれます。また、汗をかくことが全てのアトピー性皮膚炎患者に有効というわけではないので、どのような患者に有効なのかを、今後の研究で明らかにしたいと考えています。

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