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Interview
日本チェーンドラッグストア協会会長 関口信行氏
日経DI2014年10月号

2014/10/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年10月号 No.204

せきぐち・のぶゆき
1935年生まれ。薬剤師。58年東京薬科大学を卒業し、医薬品卸の重松本店に入社。62年三善商事(現龍生堂本店)を設立して社長に就任し、ドラッグストアのスーパー龍生堂1号店を開業。現在、東京都新宿区を中心にドラッグストアなど31店舗を経営している。11年日本チェーンドラッグストア協会会長に就任。

─日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の設立以来、この15年の間にドラッグストアを取り巻く環境は大きく変わりましたね。

関口 当時、ドラッグストアでは薬剤師がいない店舗で医薬品を販売していると批判されていました。薬剤師でなければ薬を売ってはいけないという法律はなかったのですが、日本薬剤師会からは「ドラッグストアは法律を守らないアウトサイダー」といった見方をされていました。薬剤師の絶対数が足りないと主張しても、日薬からも厚生労働省からも「薬剤師は足りている」「足りていないのはお前たちが勝手に店舗を出すからだ」などと言われました。

 それで色々と問題提起をして、ご存じのように2006年の薬事法改正で医薬品をリスクに応じて分類して、リスクの低いものは登録販売者が売ってもいいことになりました。07年には総務省統計局の産業分類の中に「ドラッグストア」ができ、ドラッグストアが医薬品を販売する業態としてやっと認められました。この15年の間に、国からも、業界からも、一般消費者からも認知され、業態として確立してきたと思います。

─かつて1.5兆円だったドラッグストア市場は、今や6兆円を超えました。消費者に支持された結果なのでしょう。

関口 特に女性から便利だと言ってもらえますね。昔は薬も化粧品も全て対面販売で、自分で商品を選ぶことはありませんでしたから。利便性を高めるために薬以外にも品ぞろえを増やし、土日も営業し、夜も遅くまで開けました。従来の薬局とは全く違いますが、消費者に味方になっていただいて本当に良かったと思っています。

─現在、ドラッグストアにはどのような課題があると考えていますか。

関口 一つは、もう少し秩序ある販売方法にしていくことです。これまで多くのドラッグストアが値引き(ディスカウント)競争をしてきたため、ディスカウンターと勘違いされている面がありますが、それではいけません。

 それから、専門家がきちんといて、消費者の相談などに対応できるようにしていかなければならない。そこで今、登録販売者の組織づくりを始めています。薬剤師会のように登録販売者の職能団体を確立し、研修などを行って専門家としてのスキルを高めていこうというわけです。そうすれば、消費者の信頼を一段と高められると思います。

 要するに、国が提唱するセルフメディケーションに、登録販売者がどれだけ寄与できるのかが重要だと思います。病気になった方の治療をするのではなくて、病気になる一歩手前の人たちに登録販売者が関わることで病気を予防する。そういう健康寿命の延伸に関わることで、登録販売者の地位も向上していくと考えています。

─セルフメディケーション推進に関わることは、ドラッグストアに限らず、薬局全般にとっての課題です。

関口 現在、いわゆる独立系の薬局は、調剤の売上高が80%くらいで、OTC薬をあまり売っていません。これは、処方箋調剤に薬剤師の手を取られて、OTC薬を売る余裕がなかった面もあるでしょう。ですが、医薬分業率は既に70%近くで、そろそろピークではないかと思います。また、日薬が先日公表した「薬局のグランドデザイン2014(中間まとめ)」にも、薬剤師は調剤だけでなく、健康増進などにも取り組むべきといったことが書かれています。

 来年4月に食品の新たな機能性表示制度が始まるのもセルフメディケーションの追い風になると思います。病気を治療するのは医師ですが、われわれは病気の一歩手前で健康寿命を延伸する。食品の機能性表示の新しいルールができれば、ドラッグストアの事業の一つの柱になってくると思っています。そうなると調剤中心の薬局もドラッグストア化していくかもしれません。

─調剤チェーンなどの薬局がセルフメディケーションに力を入れると、競争が激しくなりそうです。

関口 競争が激しくなれば、よりレベルアップしていくのではないですか。黙っていてもうかるのでは誰も勉強しませんから。そして、消費者はそれを見ているから、レベルアップしたところが生き残っていく。競争というと価格競争になると思われがちですが、そうではないと思います。既にうちの薬局では、糖尿病にはどの商品がいいのかといった研究を薬剤師が始めています。

 米国では、販売員がレベルアップして一人ひとりの患者さんに合った機能性食品を販売したことでドラッグストア 市場が拡大したと聞いています。食品の機能性表示の新しいルールができれば、2兆円から3兆円の市場ができると言われていますので、いい意味での競争になると思っています。

─薬局の将来を考える上で、セルフメディケーションと並んで重要なテーマが在宅医療です。

関口 在宅医療は、処方箋調剤のことも分かり、OTC薬やセルフメディケーションのことも分かっている薬剤師が取り組むのがいいでしょう。だから、在宅は調剤専門の薬局がやるよりドラッグストアがやる方がいい。個々の患者さんについて医師と相談する中では、栄養や食品の話も出てきますから。

 ドラッグストアの観点で言うと、調剤を併設することも医療の入口になりますが、在宅に取り組むことも医療に入っていく入口になります。だからうちの薬局では在宅に積極的に取り組んでいて、新宿区内のある店舗でも30~40人の患者さん宅を訪問しています。在宅をやるようになってから、地域包括支援センターの方から、「薬剤師は何ができるのか、看護師やケアマネジャーに講演してほしい」といった声が掛かるようになりました。

─ドラッグストアの役割も、在宅や地域医療に広がりつつあるわけですね。

関口 ドラッグストアは主に若い人や健康な人向けの物を売っていたのですが、これだけ高齢化が進むと、社会の受け皿としての役割がどんどん増していると感じます。

─コンビニエンスストアでも薬局を併設したり、健康関連の事業に力を入れたりしています。ドラッグストアと競合することはありませんか。

関口 今後はコンビニでも機能性食品の販売に力を入れたりするでしょうが、販売員に専門的な知識を持った人が少ないです。利便性という点ではものすごくいいですが、「どのビタミン剤を飲めばいいですか」と聞かれても相談に乗れません。だから、コンビニとドラッグストアは全く違うものになる。ドラッグストアは登録販売者などのレベルアップをすることで、さらに新しい業態に変わっていくと思っています。

インタビューを終えて

 関口氏が社長を務める龍生堂本店は年商135億円で、他の大手チェーンドラッグより売上高は1桁小さいですが、大半の店舗に調剤部門を併設し、在宅にも積極的に取り組むユニークな存在です。3年前、関口氏にJACDS会長として白羽の矢が立ったのは、そんな取り組みがこれからのドラッグストアの方向性を示していると見られたからかもしれません。いずれにせよ、薬局の在るべき姿と、ドラッグストアの目指す方向は、将来、かなり重なっていくように思えました。(橋本)

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