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特集:オピオイドUp to date
処方確認、副作用対策、欠品時対応……「知ってるつもり」の基本を再確認しよう
日経DI2014年9月

2014/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年9月号 No.203

 オピオイド鎮痛薬の処方箋を応需したらまずチェックしたいのが、処方医の資格確認が必要な薬剤かどうか。フェンタニル貼付薬では確認書を持参しているかも聴取する(表4)。その他の主な確認事項を表8にまとめた。医療用麻薬では、処方箋の備考欄に処方元の麻薬施用者免許番号と患者の住所が記載されているが、「患者の現住所が異なることもあるので、患者からも住所聴取を」と、コスモファーマ薬局馬庭店(群馬県高崎市)管理薬剤師の伊藤雅之氏は言う。

表8 オピオイド鎮痛薬が処方された患者への確認事項

 家族構成の把握も重要。特に小児が同居している患者には、薬剤そのものに加え使用後の廃棄物についても小児の手の届かない所に置くよう十分に注意を促しておきたい。

 オピオイド鎮痛薬の主要な消化器系副作用である便秘と悪心・嘔吐。以前は、予防のため初回投与時から下剤と制吐薬を併用することが多かった。だが、「副作用の発現には個人差があるため、日本緩和医療学会の最新のガイドラインでは、予防投与ではなく症状が表れてからの投与が推奨されている」と、あけぼのファーマシーグループの坂本氏。症状発現時の評価と対応が一層重要になったと言える。

 オピオイド鎮痛薬により悪心・嘔吐の生じる機序は3つに大別でき、症状の表れ方から機序を推測できる(図5)。

図5 悪心・嘔吐の機序に応じた制吐薬の選択
(日本緩和医療学会『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014年版』を一部改変)

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 症状が持続的ならオピオイド鎮痛薬による化学受容器引き金帯(CTZ)のμ受容体刺激が原因だが、食後に表れれば消化管のμ受容体刺激に起因する求心性のCTZ刺激、体動時なら内耳前庭器のμ受容体刺激による遊離ヒスタミンが原因と考えられる。適切な制吐薬の処方提案が行えるよう、症状のパターンを把握しておこう。

 癌性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬が開業医から処方されている場合、医師は必ずしも緩和ケアの専門家ではない。そのため、「副作用が出てオピオイド製剤を切り替えたい場合や、経口摂取ができなくなって経口薬から貼付薬への変更が必要になった場合など、『どう処方を書けばいいか』という問い合わせをしばしば受ける」。こう語るのは、地域がん診療連携拠点病院の近隣にあり、在宅医療にも対応している博芳堂薬局(東京都品川区)の薬剤師で、同薬局を運営する三弘(東京都品川区)常務取締役本部長の土田孝氏だ。

 オピオイド鎮痛薬の製剤変更(オピオイドスイッチング)時に、先行薬と変更薬の間隔をどれくらい開ければいいかには一定のルールが示されている(表9)。鎮痛効果に切れ目が生じないよう、先行薬の作用持続時間、変更薬の効果発現開始時間を考慮した変更方法だ。

表9 オピオイド鎮痛薬の製剤変更方法
(厚生労働省『医療用麻薬適正使用ガイダンス』を一部改変)

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 用量は、オピオイド鎮痛薬の換算比に従って換算量を求め、先行薬で痛みがない状態にコントロールされている場合は換算量の20~30%減から変更薬を開始。一方、先行薬の投与下で痛みがある状態なら、換算量より増量して開始するよう考慮する。

 こうした変更ルールについては、在宅訪問先から電話が掛かってくることもあり、迅速に回答することが大事。「あらかじめガイドラインなどの該当ページをまとめておき、誰が電話を受けても答えられるよう薬局内で準備しておくことが大切だ」と土田氏はアドバイスする。

 なお、開業医からのオピオイド鎮痛薬の処方は、患者が癌の治療を受けた病院で開始された処方内容を踏襲していることが多い。標準的な使用方法であることがほとんどなので、定型的な変更方法に従った回答で問題となるケースはまずないという。

 医療用麻薬は納品後、未開封でも返品できない。残りわずかでも在庫の補充はせず、実際に処方箋が来てから発注するという方針の薬局も少なくない。そのため、処方箋の記載数量分が薬局になく、一部を渡して残りは後から取りに来てもらうか、薬剤師が届けるという対応を取ることがよくある。

 だが、医療用麻薬の即日納品は難しいことが多い。また、07年9月の麻薬及び向精神薬取締法施行規則改正により、薬局間での麻薬の貸し借りが可能になっているが、それには事前に近隣の薬局がグループを組んで「麻薬小売業者間譲渡許可申請」を地方厚生局に出しておかなければならない。各薬局で在庫を持つことが原則であるため、貸し借りは1回に限るといった運用を行うケースも多く、廃棄ロスを覚悟して各薬局が在庫を持つ以外の抜本的な解決策は見当たらない。

 このため、1日、2日分の在庫を最低限確保しておき、翌日に取り寄せて届けるのが、現状で取れる対応策だろう。なお、医療用麻薬の書留郵便による配送は、医薬品卸から薬局への納品においては可能だが、「薬局から患者宅への配送は不可」(厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課)であることに留意しておこう。

 オピオイド鎮痛薬の標準的な使用法は「学会ガイドラインを参照するのが基本」(あけぼのファーマシーグループの坂本氏)。これに加え、厚労省の『医療用麻薬適正使用ガイダンス』など、標準使用法のポイントをコンパクトにまとめた資料は利用価値が高い。麻薬の廃棄時には東京都福祉保健局の『医療用麻薬廃棄方法推奨例一覧』が参考になる。どちらもPDF形式の文書としてダウンロードできる。

 また、癌の緩和ケアに関する教育資料は、07年4月施行のがん対策基本法で重点目標とされたことで、かなり充実した。中でも「緩和ケア普及のための地域プロジェクト(OPTIM)」のウェブサイトは患者や家族への説明用資料が充実しており、ぜひ活用したい。

表10 参考書籍・資料・ウェブサイト一覧

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