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のぞみ薬局(広島市安佐北区)
日経DI2014年9月号

2014/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年9月号 No.203

 のぞみ薬局(広島市安佐北区)は、外来の処方箋調剤を中心にしながら、在宅にも力を入れている薬局だ。薬局から徒歩5分ほどの距離にある高齢者住宅、ラシュールメゾンやすらぎの訪問薬剤管理指導を、2012年9月に同施設が開設したのと同時にスタートした。現在は2人の担当薬剤師が、交代でほぼ毎日同施設を訪問し、入居者の薬剤管理を担っている。

 のぞみ薬局は以前から、地域の特別養護老人ホームやケアハウスなどで訪問薬剤管理指導を実施しており、ラシュールメゾンやすらぎを訪問することになったきっかけも、これらの施設で連携した医師とのつながりだった。

写真1 “病院と自宅の中間”の環境で充実した医療を提供

 ラシュールメゾンやすらぎには、のぞみ薬局がこれまで訪問してきた高齢者施設と異なる特徴がある。入居者として想定されているのが、終末期の高齢者である点だ。ラシュールメゾンやすらぎを担当している薬剤師で、のぞみ薬局を含め4店舗を運営するフォーリーフの事業統括部長でもある岡敦子氏は、「終末期医療に参加する機会を得て、薬剤師の職能を生かす道の一つだと思った」と話す。

 ラシュールメゾンやすらぎは、広島市北部でクリニックや訪問看護ステーションなどを展開する医療法人社団恵正会により作られた。「終末期の患者が、比較的安価な料金で利用できる場を目指している。個人の家と病院の中間の立場でケアをする施設と言える」と、ラシュールメゾンやすらぎの1階に入居する恵正会にのみや往診クリニック院長の山崎総一郎氏は説明する。実際に開設からの1年半ほどで、この高齢者住宅で看取られた患者の数は100人を超えた。

 同施設は3階建てで2、3階に居室があり、入居者の定員は42人。1階に往診クリニックや訪問看護ステーションが入居し、24時間、365日のケアを提供する。のぞみ薬局は同施設の近隣の薬局として、入居者の訪問薬剤管理指導を行っている。

終末期特有のニーズに対応

 ラシュールメゾンやすらぎの入居者は、主に地域の基幹病院である広島市立安佐市民病院(広島県)を退院した患者だ。同病院では、患者が退院する1週間ほど前に、退院時カンファレンスを必要に応じて実施している。入居予定者の退院時カンファレンスには、のぞみ薬局の薬剤師も参加する。「このカンファレンスで、入居予定の患者が使用している薬剤を把握し、前もって薬局の備蓄を確認しておく」とのぞみ薬局管理課主任で薬剤師の日高良昌氏は話す。

 患者が入居したら、その時点で服用している薬を確認する。「特に終末期の患者は、処方の変更が頻繁で、細かい調整が必要になることが多い」と日高氏は語る。退院1週間前と入居時で処方が変更されることは珍しくない。また、入居時に医師が診察した結果、新たに処方された薬は、すぐに調剤して届けているという。

 山崎氏は、「のぞみ薬局が迅速に対応してくれるので、昼の往診の結果を夕方からの投薬に反映できる。多くの施設では通常、処方変更が反映できるのは翌日の朝からだが、患者の状態が悪化するのは夜が多いので、非常に助かっている」と薬剤師の貢献を高く評価している。

細かい変更は処方提案書で

 迅速な対応に加え、のぞみ薬局が力を入れているのが、処方提案書の作成だ。きっかけは、患者が服用している薬を入居時に確認し、診察前に報告書として医師に提出したこと。「この報告書と同じものが次回もあれば医師の助けになると考え、処方提案書を作成するようになった」と、日高氏は説明する。

 処方提案書の内容はこうだ。まず、その時点で服用している薬剤名と用法・用量を「処方薬の服用状況」の欄にリストアップする。その横に、今回必要とする処方数を書く。「残薬日数予定・服薬状況」の項には処方の変更提案や、剤形、投薬時の工夫などの医師に伝えたい情報を記入する。さらに、前回処方の服薬日と、今回の服薬日を記載し、調剤方法についても記載する(表1)。 

表1 のぞみ薬局が作成している処方提案書

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 処方変更の提案は、薬剤師の薬学的判断に基づいて行う場合もあれば、患者の状況を看護師やヘルパーと相談して行う場合もあり、内容は様々。服用しやすさを考慮して剤形を変更する、残薬が大量にある場合には処方せずに残薬を使用するようにする、などだ(表2)。終末期の患者は処方の変更が多いため、混乱を防ぐためにも服薬日として処方期間を明記することが重要になる。

表2 処方提案書の内容

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 日高氏らは、これらの情報を記載した提案書を作成し、往診の前に提出している。「医師に疑義照会しようとしても、すぐには連絡が取れないこともある。事前に処方提案書を渡すことで、最適でスムーズな調剤が可能になる」と日高氏は言う。処方提案書を作成する仕事が増えるものの、疑義照会後の調整や処方変更への対応に比べれば効率は良いと日高氏は感じている。

 にのみや往診クリニックの医師で、日高氏とチームを組んでいる医師の竹本博明氏は「電話でも連絡を取ることはできるが、紙に書いてある方が混乱を防ぐことができる」と処方提案書を評価している。

のぞみ薬局の日高良昌氏(右)は、にのみや往診クリニック医師の竹本博明氏の往診日に合わせて、事前に処方提案書を作成している。のぞみ薬局では、2人の薬剤師が往診クリニックの2人の医師それぞれに担当として付くことで、医師との密度の高いコミュニケーションを実現している。

在宅で地域貢献を目指す

 のぞみ薬局がある安佐北区は、広島市内でも最も高齢化率が高く、14年の調査では27.6%と全国平均を超えている。ラシュールメゾンやすらぎで実施しているような終末期医療を必要とする人は、地域の中で増加していくと見られる。のぞみ薬局は、地域の在宅医療の需要に対応するため、無菌調剤室を含めた薬局の拡張工事を実施中で、14年秋には完成予定だ。

 岡氏は、「在宅医療チームに参加することで、地域の中での薬局の存在意義をアピールできる」と、地域の薬局としてより貢献していきたい考えだ。同時に「かかりつけ薬局として患者に選ばれるためにも、在宅に取り組んでいるのはプラスになると思う。将来、在宅で治療を受けることになっても、同じ薬局に頼むことができるという安心感につながるためだ」と、在宅医療への意気込みを語っている。(増田智子)

写真2 高齢者住宅での薬剤管理

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