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特集:オピオイドUp to date
新規のマルチファンクショナル・オピオイドとフェンタニルの速放製剤が登場
日経DI2014年9月号

2014/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年9月号 No.203

【商品名】タペンタ
【一般名】タペンタドール塩酸塩
【規格(薬価)】錠25mg(108.7円)、50mg(206.3円)、100mg(391.7円)
【発売年月】2014年8月
【適応】非オピオイド鎮痛薬で治療困難な、中等度から高度の癌性疼痛
【用法・用量】1回25~200mg、1日2回

 タペンタドールは、弱オピオイドのトラマドールと類似した構造を持つ強オピオイド。オピオイドμ受容体作動というオピオイド鎮痛薬としての作用に加え、ノルアドレナリン再取り込み阻害(NRI)作用も有するマルチファンクショナル・オピオイドだ。

 日本では2014年8月に徐放製剤(タペンタ)が発売された。NRI作用により鎮痛の下行性抑制系が賦活されるため、内臓や骨への転移による侵害受容性痛だけでなく、神経叢浸潤などによる神経障害性痛にも効果が高いと考えられている。

 臨床現場で今後、どのように使われていくかは未知数だが、オピオイド鎮痛薬の使用歴がない患者にも使え、他の強オピオイドから切り替える場合の等鎮痛量も確立されている(表5)。このため、「モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルと同様に、WHO除痛ラダーの第3段階で用いる定時薬として広く使われていくのではないか」と、東京慈恵会医科大学の下山氏は予測する。モルヒネと同様にグルクロン酸抱合により代謝され、肝薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)による代謝を受けないため、「CYP2D6で代謝されるパロキセチン塩酸塩水和物(パキシル他)やCYP3A4で代謝されるイトラコナゾール(イトリゾール他)などと併用可能な点もメリット」と下山氏は言う。

表5 主要な強オピオイドの代謝経路と等鎮痛量の目安
(日本緩和医療学会『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014年版』[金原出版]を改変)

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ガムテープで包んで廃棄

 タペンタは3規格とも、長径17mm、短径7mm、厚さ5mmの錠剤。改変防止製剤(PRF)化が施されており、噛み砕いて飲む、粉末にして吸引する、水に溶かして注射するといった誤用や乱用を防いでいる。非常に硬いため、半割や粉砕ができない点には留意が必要だ。水に溶かすとゲル化するため、糞便中に外殻(ゴーストピル)は出ない。

 製造販売元のヤンセンファーマは廃棄方法として、焼却するか、粘着力の強いガムテープなどで錠剤が見えないようにしっかり包んでから、通常の医薬品と同様に廃棄することを推奨している。

【商品名】トラマール(単味剤)、トラムセット(アセトアミノフェン[AAP]との配合剤)
【一般名】トラマドール塩酸塩
【規格(薬価)】トラマール:カプセル25mg(38.6円)、50mg(67.8円)
トラムセット:配合錠(トラマドール37.5mg/AAP325mg、70.1円)
【発売年月】2010年9月(トラマール)、11年7月(トラムセット)
【適応】トラマール:非オピオイド鎮痛薬で治療困難な癌性疼痛、慢性痛
トラムセット:非オピオイド鎮痛薬で治療困難な非癌性慢性痛、抜歯後疼痛
【用法・用量】トラマール:1回25~75mg、1日4回
トラムセット:非癌性慢性痛は1回1錠、1日4回。抜歯後疼痛は1回2錠(頓用)。

 トラマドールは、WHOの3段階除痛ラダーの2段階目に位置付けられる弱オピオイド。μオピオイド受容体の作動薬ではあるが習慣性はほとんどなく、海外でも乱用例が少ないため、日本では麻薬や向精神薬として指定されていない。普通薬として扱える利便性と、使用への心理的な抵抗感の少なさから、処方数が急増している薬剤だ。

 経口薬には2010年9月に発売された単味のカプセル剤(トラマール)と、11年7月に発売されたアセトアミノフェン(AAP)との配合錠(トラムセット)がある。トラマールは癌性疼痛と慢性痛の両方に適応を持ち、トラムセットは非癌性の慢性痛と抜歯後疼痛に使える。両薬の慢性痛の薬物療法における位置付けについて、仙台ペインクリニックの伊達氏は「侵害受容性の要因を持つ慢性痛で、アセトアミノフェン単剤では十分に痛みを緩和できない場合に最初に試す薬剤」と話す。癌性疼痛に関しては、トラマールの最大血中濃度到達時間(Tmax)は1.3~1.8時間と短いため、定時薬としての使用に加え、定時投与時の1日量の4分の1から8分の1の用量でレスキューとしても使える。

抗うつ薬との併用に注意

 トラマドールもタペンタドールと同様のマルチファンクショナル・オピオイドで、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害(SNRI)作用を介した神経障害性痛の緩和作用を併せ持つ。ただし、三環系抗うつ薬や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などと併用すると、相加的に作用が増強され、セロトニン症候群を引き起こすリスクが高まる。「三環系抗うつ薬は鎮痛補助薬としても頻用されるが、トラマドールとの併用はしにくい」と伊達氏は言う。

 また、オピオイド鎮痛薬としての効果は経口投与でモルヒネの5分の1程度と弱いが、「オピオイド特有の副作用はしっかり出る。特に悪心・嘔吐が出現しやすいので、投与初期にはメトクロプラミド(プリンペラン他)などの制吐薬の併用が望ましい」と伊達氏は注意を促す。

導入時は1日1~2回から

 なお、トラマールとトラムセットのいずれも、添付文書には用法として1日4回の定時投与(トラムセットの抜歯後疼痛への使用は頓用)を行うよう記載されているが、「初回から1日4回で投与すると、吐き気や眠気が強すぎて、多くの患者で忍容できない。導入時は1日1~2回からスタートするのが基本」と伊達氏。トラマドールが1日4回で処方されている初回患者が訪れたら、過去の使用経験を確認し、必要に応じて用法の変更を打診したい。

表6 トラマドールの利点と注意点(伊達氏による)

【商品名】アブストラル(舌下錠)、イーフェン(バッカル錠)
【一般名】フェンタニルクエン酸塩 【規格(薬価)】アブストラル:舌下錠100μg(581.8円)、200μg(811.9円)、400μg(1132.8円)
イーフェン:バッカル錠50μg(514.8円)、100μg(718.2円)、200μg(1002.1円)、
400μg(1398.3円)、600μg(1699.2円)、800μg(1951.1円)
【発売年月】2013年12月(アブストラル)、13年10月(イーフェン)
【適応】強オピオイド鎮痛薬を定時投与中の癌患者における突出痛
【用法・用量】アブストラル:100μgを開始用量として舌下投与し、タイトレーションを行って至適用量を決定する。
投与間隔2時間以上、1回用量上限800μg、1日4回まで。
イーフェン:50μgまたは100μgを開始用量としてバッカル部位(上顎臼歯の歯茎と頬の間)に投与し、タイトレーションを行って至適用量を決定する。投与間隔4時間以上、1回用量上限800μg、1日4回まで。

 フェンタニルの舌下錠(アブストラル)とバッカル錠(イーフェン)は、分子量が小さく脂溶性が高いというフェンタニルの特徴を生かして開発された粘膜吸収製剤。舌下やバッカル部位に留置して使用する(図3)。血中濃度の立ち上がりが早く、口に含んで5~10分で鎮痛効果が表れ始め、効果は1~2時間持続する。癌の突出痛(一過性の痛みの増強)は痛みの発生から3~5分でピークに達し、9割は1時間以内に治まるとされるため、そのコントロールに有用とされる。

図3 フェンタニル速放錠の使い方

 横浜市立大学附属病院へのフェンタニル速放製剤の導入を担当した薬剤部の小宮幸子氏は「フェンタニルは他の強オピオイドより便秘を起こしにくいので、重度の便秘症例で選択肢の一つになり得る。速放製剤では唯一の口腔粘膜吸収製剤なので、嚥下障害がある患者も良い適応になる」と言う。

使用は1日4回まで

 ただし、フェンタニルは、他のオピオイド鎮痛薬の使用経験があり、有効性と忍容性が確認された患者でなければ使えない。また、粘膜からの吸収性などには個人差があるため、他のオピオイド速放製剤では広く行われていなかったタイトレーションを導入時に行って至適用量を決定しなければならない。1日4回までという使用回数制限もあるため、「1日に何回もレスキューを使っている人では切り替えにくく、当初想定していたより適応となる患者は少ないという感触がある」と小宮氏は話す。

横浜市立大学附属病院の小宮幸子氏は「他の速放製剤とは使い方が異なるので入念な説明を」と話す。

 投与間隔は舌下錠のアブストラルで2時間以上、バッカル錠のイーフェンで4時間以上開けるが、タイトレーション期間は例外的に、通常使用後に痛みが残存していれば30分後に追加使用ができる(図4)。「導入時は、この点を正しく理解してもらうことが重要。図を示しながら『通常使用と追加使用は合わせて1セットと考えて、1日4セットまで使えます』と説明するとよい」と小宮氏はアドバイスしている。

図4 タイトレーション期間におけるフェンタニル速放錠の使い方説明(小宮氏による)

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【商品名】メサペイン
【一般名】メサドン塩酸塩
【規格(薬価)】錠5mg(183.4円)、10mg(348.2円)
【発売年月】2013年3月
【適応】他の強オピオイド鎮痛薬で治療困難な、中等度から高度の癌性疼痛
【用法・用量】他の強オピオイド鎮痛薬から切り替えて使用。初回投与量は1回5~15mg、1日3回。

 メサドンは、1937年にドイツで開発された合成オピオイド。欧米では70年代から癌性疼痛の治療に使われており、2005年以降はWHOの必須医薬品(エッセンシャル・メディシン)リストに掲載されるなど歴史と実績を備えた薬だ。

 だが、日本での発売は、開発から約80年を経た13年3月。国内治験を主導した一人である東京慈恵会医科大学の下山氏は、「がん対策基本法の成立に尽力した参議院議員の山本孝史氏(民主党、07年12月に胸腺癌で死去)が、07年6月に早期導入を求める国会質問を行ったことが契機となり、臨床開発が始まった」と振り返る。

 日本では治験開始から5年という異例のスピードで承認されたものの、承認条件として市販後の全例調査が義務付けられたことなどから、現時点での使用患者数は限られている。

耐性例にも使用可能

 メサドンの特徴の一つは、モルヒネなど他のμオピオイド受容体作動薬との交差耐性が不完全であること。このため、他のオピオイド鎮痛薬に対して耐性を発現した患者や、他のオピオイド鎮痛薬を増量しても十分な鎮痛効果が得られなくなった患者でも、痛みを緩和できる可能性がある。

 また、メサドンには、μオピオイド受容体の作動に加え、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体への拮抗作用がある。SNRI作用もあることが分かり、「強オピオイドとしての作用に加え、鎮痛補助薬としても強力で、癌の神経叢浸潤による難治性の神経障害性痛なども良い適応になる」と下山氏は話す。

 ただし、メサドンには特殊な副作用がある。トルサード・ド・ポアント(torsades de points)と呼ばれる致死的な心室頻拍だ。先行して心電図上のQT間隔の延長(QT延長症候群)が認められるため、QTを延長させる薬剤との併用は避け、QT延長の病歴がある患者では事前に心電図を確認しなければならない。

専門医のみ使える特殊薬

 メサドンは通常、他のオピオイド治療薬から切り替えて使用する。その際に注意を要するのが「等鎮痛比が確立されておらず、用量に応じて換算比が変わる」(下山氏)といった点。定常状態に達するまで6~9日間掛かるため、タイトレーション時も7日間は増量をしてはならない。

 副作用に加え使用方法も特殊なことから、「WHOの除痛ラダーの“4段目”に位置する、癌の痛みの治療に精通した医師のみが処方できる特殊な鎮痛薬であることを認識してほしい」と下山氏は強調する。

 なお、メサドンは、適正使用を推進するため、適正使用講習の受講だけでなく試験への合格を処方医に課している唯一のオピオイド鎮痛薬だ。処方箋を応需した薬局では、調剤前に医師の資格確認が必要で、調剤するには薬局ごとに調剤責任薬剤師の登録が必要となる(表4)。

表7 メサドンの利点と注意点(下山氏による)

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