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副作用症状のメカニズム
同じ場所にできる発疹
日経DI2014年9月号

2014/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年9月号 No.203

講師
名城大学薬学部
医薬品情報学准教授
大津 史子(おおつ ふみこ)
1983年、神戸女子薬科大学卒業。滋賀医科大学外科学第2講座勤務を経て、名城大学薬学部専攻科に入学。87年に同大学薬学部医薬情報センターに入職、同学部医薬品情報学講師などを経て、2008年から現職。

症例
  19歳の女子大生が、唇や口蓋に発疹と水疱ができたと言って薬局を訪れた。以前にも口唇ヘルペスと診断されたことがあり、再発だと思いOTC薬の抗ヘルペスウイルス薬を購入しようと来局した。
 以前も同じような部位に同様の発疹と水疱ができてOTC薬で対応したが、あまり効かなかった印象だったと語った。

 今回は、薬による発疹、いわゆる「薬疹」について考えてみたい。まずは発疹の形状について紹介しよう。発疹には、斑(周囲の皮膚と同じ高さの発疹)、丘疹(周囲の皮膚から盛り上がった発疹)、水疱(内容物の分かる発疹)、びらん(周囲の皮膚より低くへこんでいる発疹)、痂皮(かひ、皮膚表面に付着している発疹)─などがある。

 前回解説した蕁麻疹は丘疹である。麻疹や風疹、水疱瘡などによる発疹は紅斑である。麻疹は、紅斑が次第に融合していく。水疱瘡は、紅斑ができた後に水疱ができる。びらんは、水疱が破れたような状態を指し、それが乾いてはがれるような状態を痂皮と呼ぶ。

 今回は、主に紅斑と水疱を呈する薬疹について解説する。紅斑や水疱は、麻疹や風疹などで現れる皮膚症状を思い浮かべてもらえばよい。ウイルス性疾患は、発疹が起こる代表的な疾患であり、その発現のメカニズムは次の通りだ。

 麻疹ウイルスは、感染後2~4日の間、気道粘膜上皮の局所で増殖する。ナチュラルキラー細胞が非特異的に認識して感染細胞を破壊し、ウイルスの排除を行う。上記の自然免疫系の反応のみで対処しきれない場合、麻疹ウイルスはリンパ球、マクロファージなどに感染して所属リンパ節に運ばれ、そこで増殖する。麻疹ウイルスはさらに白血球に感染して血流に乗り、第一次ウイルス血症を来す。やがて全身の網内系リンパ節に広がり、第二次ウイルス血症を生じ、皮膚の細胞にも感染する。

 感染した樹状細胞やマクロファージは抗原提示細胞となり、1型ヘルパーT細胞(Th1)と細胞傷害性T細胞(CTL)に抗原提示を行う。Th1がサイトカインを産生し、マクロファージを活性化するとともに、インターロイキン(IL)2を放出しCTLを活性化して増殖させる。CTLはリンパ節内で最大数万倍にまで増殖する。そして、抗原(ウイルス感染細胞)を認識し、アポトーシスに導く。アポトーシスは、このとき放出される細胞傷害物質であるパーフォリンやグランザイム、Fasなどの分子を刺激することによって誘導される1)。この炎症反応が皮膚で起こると発疹として現れる。

 なお、アレルギーや自己免疫疾患はこのTh1と、液性免疫に関与する2型ヘルパーT細胞(Th2)のバランスが崩れることによって起こると考えられている。

 さらに最近では、発疹に抑制系のレギュラトリーT細胞(Treg)が関与していることが分かってきている1)。Tregは、Th1やTh2を抑制するT細胞で、免疫反応が過剰にならないように調整していると考えられている。

 通常は、ウイルスに感染しTh1とCTLによる細胞性免疫によって感染した細胞を排除し終わると次第にTregが増加し活性化して、過剰な免疫反応が抑制され、発疹は治癒していく。

重症薬疹の初期症状と経過

 薬疹は薬剤の使用に伴って生じる発疹のことで、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)、薬剤性過敏症候群(DIHS)といった重篤な皮膚障害が起こるものから、比較的軽度な発疹まで幅が広い。

 SJSは、皮膚粘膜眼症候群やMCOS(Muco-Cutaneous Ocular Syndrome)型薬疹とも呼ばれる。多形紅斑が重症化し、一部水疱を形成する。皮膚だけでなく、眼や口腔、陰部などの粘膜も障害する。初期には小指大から親指大の少し膨れた紅斑で、中央の色が薄い的のような「ターゲット状紅斑」が見られる。粘膜も障害されるため、咽頭痛や咽頭違和感などの咽頭異常が先行して表れることが多い。SJSでは、びらんや水疱が体表面積の10%以下とされている。

 一方、TENはライエル氏が報告したことから「ライエル症候群」とも呼ばれる。急性の経過をたどり、ほぼ全身の表皮剥離と水疱を形成するのが特徴だ。SJSを発症し、その後急速にTENに進展することから、近年ではSJSとTENは同一範疇の疾患で、皮膚障害の重症度の違いだと考えられている。

 TENでは、広範な紅斑と全身の10%以上の水疱、表皮剥離、びらんなどの壊死性傷害を認める5)。高熱と全身の皮膚、咽頭粘膜などに突然の痛みや灼熱感を伴った紅斑が出現して急速に広がる。発症数時間から24時間以内に水疱が多発し剥離が起こり、口腔粘膜、気道粘膜、眼瞼粘膜などにも障害が現れ、唇や舌、瞼や結膜、角膜などがただれ、血の付いたかさぶたに覆われ、目を開けることが困難になることもある。

 陰部や肛門周囲もびらんし、気道や消化管粘膜などにも障害が及ぶ。熱傷の皮膚に似たようになり、皮膚のバリア機能が損なわれ、体液の喪失、壊死組織と滲出液が認められ、好中球やリンパ球、免疫グロブリンなど感染防御機能が全般的に破壊される。体液の喪失量は、重症の広範囲熱傷と同様で1日当たり3~4Lに及ぶこともある。多くの場合は消化管も傷害され、下痢や下血が生じて体液の喪失はさらに大きくなる。

 死亡することもあり、死亡率は日本では19%6)、ヨーロッパでは39%7)と報告されている。

 DIHSは、高熱と肝機能障害などの臓器障害を伴う薬疹で、原因薬剤中止後も長引くことが多い。DIHSの症状は、TENやSJSと同様に発熱や皮疹で始まり、肝臓や腎臓、血液障害などを併発する。しかし、皮膚障害の重症化はほとんど見られない。

 固定薬疹は、原因薬剤を服用すると口の周囲や陰部など皮膚の同じ部位に円形の紅斑ができるもの。重症化するとSJSなどのような皮膚障害が起こることもあるが、部位が限局的である。固定薬疹は、原因薬剤を投与されたときだけでなく、かいたり紫外線に当たったりしたときにも誘発される。

薬疹のメカニズム

 これらの薬疹の機序として、古くから「ハプテン説」が示されてきた。薬剤がハプテンとして抗原提示細胞に結合し、それをT細胞が認識して活性化されるというものである。しかし最近では、このハプテン説ではうまく説明できない現象があることから、薬疹とウイルス感染との関係がいわれている3)

 例えば、「アンピシリン疹」と伝染性単核球症との関係である2)。伝染性単核球症の症状である扁桃腺炎に対してアンピシリン水和物(商品名ビクシリン)を投与したときに薬疹が起こることがある。しかし急性期を過ぎると、再度アンピシリンを投与しても薬疹が再現されないことが多い。

 この現象を解明する説として「p-i仮説」がある4)。ウイルス感染が起こるとウイルス抗原を認識するTh1が増殖し、Th1の受容体に非特異的に結合しやすい薬剤がTh1と抗原提示細胞を結び付け、強く活性化されたCTLの一群が出現する。その結果、皮膚に親和性のあるCTLが増殖して皮疹が起こるというものである。つまり、ウイルス感染のみでは起こらず、薬によってより強く炎症を生じたことで皮疹が起こるという考え方である。

 一方、塩原ら3)は、ウイルス感染の後にはメモリーT細胞としてCTLが残存しており、薬剤が投与されるとCTLが薬剤と交差反応して活性化され、それが薬疹という形で発症するのではないかと推測している。この説は、薬疹では同じ部位に同じような皮疹を繰り返す固定薬疹の病態が見られることから考えられるようになった。

 DIHSにおいても、ヒトヘルペスウイルス(HHV)6の再活性化が起こることが知られている。また、SJSやTENも、ウイルス感染症に続発して起こることが多い。DIHSでは、皮膚障害の重症化はほとんど見られないが、これはTregが増殖し、過度の免疫機能を抑えているためと考えられている。その一方で、Tregの増加は、潜伏しているウイルスの再活性化を生じることになり、増殖したウイルスにより他の臓器障害を起こしやすくなると考えられている3)

 SJSやTENは、CTLが過度に活性化しており、これが広範な表皮障害の原因と考えられているが、明確には解明されていない。最近では、前述のTregが重症化に関与しているとも考えられている8)

 p-i説や塩原説が示すように、薬剤によってTh1が感作され、薬剤に特異的なCTLができる。その状態で同じ薬剤が再投与されると、薬剤特異的なCTLが活性化され、薬疹が発現する。

 通常はしばらくするとTregが増加し活性化するため、過剰な免疫反応は抑制されて薬疹は治癒する。しかし、何らかのウイルス感染を併発しているとTregが抑制され続け、免疫活性状態が続きCTLがさらに増加し活性化する。薬剤を中止してもTregは抑制され続けるため重症化すると考えられている。

 では、薬や個体によって薬疹の起こりやすさはあるのだろうか。最近では、抗原提示細胞が抗原を提示するMHC分子(ヒトの場合はHLAと呼ばれる)の遺伝子型と重症皮膚障害発症との関連が詳しく調べられている9)

 HLAには、異なるタイプ(アリル)があり、薬疹を起こすかどうかを決める最も重要な因子である。しかし、特定のHLAアリルを持つ人の全てが薬疹を起こすわけではない。これは、前述のTregによる制御が大きく関わっているためだと考えられている。

 日本人では、アロプリノール(ザイロリック他)とHLA-B*5801、メタゾラミド(ネプタザン:販売中止)とHLA-BB59で、いずれもSJS/TENとの関連が分かっている。また、HLA-A*3101は、カルバマゼピン(テグレトール他)誘発のDIHSなどでその関連が分かっている9)

 重症薬疹を起こす薬剤としては、抗てんかん薬、解熱消炎鎮痛薬、セフェム系やキノロン系抗菌薬、アロプリノール、総合感冒薬などの報告が多い。中でも解熱消炎鎮痛薬や抗菌薬、総合感冒薬は、ウイルス感染との合併が容易に想定されることから、これらの薬物の投与時は、患者の様子を十分に把握できるようにコミュニケーションを図ることが非常に重要である。


 最初の症例を見てみよう。一見、口唇ヘルペスのようであった。しかし、詳細に話を聞いたところ、以前に同じような症状が出たのは生理痛のため、あるOTC薬の鎮痛薬を服用したときだと分かった。固定薬疹を疑った薬剤師は、OTC薬の成分とその成分による固定薬疹の文献を患者に渡して皮膚科を受診するよう勧めた。皮膚科でパッチテストをしたところ、イソプロピルアンチピリンによる固定薬疹の再発が認められた。

図 薬疹の症状と特徴

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参考文献
1)『病気がみえる、VOL.6免疫膠原病感染症』(メディックメディア、2012年)
2)藤山幹子、医学のあゆみ2011;238:779-82.
3)塩原哲夫、医学のあゆみ2011;238:755-60.
4)Pichler,W.J.Curr.Opin.Allergy Clin.Immunol2002;2:30-305.
5)泉高成編、『ガイドライン外来診療2013』(日経メディカル開発、2013年)
6)重症薬疹研究班、日皮会誌、2011;121:2467-82.
7)Schneck J,et al.,J Am Acad ermatol2008;58:33-40.
8)塩原哲夫,MB Derma2010;162:70-6.
9)池澤善郎、医学のあゆみ2011;238,761-8.

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