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OTCトレンドウォッチ
催眠鎮静薬
日経DI2014年9月号

2014/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年9月号 No.203

 OTC薬における催眠鎮静薬市場は年間50億円ほどで、マーケットはここ数年、横ばいで推移している(図1)。市場縮小傾向のカテゴリーが多いOTC薬市場だが、その中で、一定の需要をキープしている数少ない薬効だ。

図1 催眠鎮静薬販売額の年次推移(SDIによる)

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 2013年の月別販売動向を指数化すると、5月、8月、10月に販売のピークがある(図2)。通常、5月は「5月病」に代表されるように、環境の変化を経験する人が多い時期。8月は、近年増加している熱帯夜で不眠に悩まされる人が多い。また、10月は冬に向けて季節が大きく変化し、人々の心身に負担が掛かりやすい時期である。なお、14年3月の急増は、消費税の増税前の特需によるものである。

図2 2013年4月~14年3月の催眠鎮静薬の月別販売額(SDIによる)

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 2116人を対象とした当社の生活者調査によると、最近1年間で「寝付けない」症状を経験している人の割合は、16~69歳で14%を占めていた。一方で、「寝付けない」ことを何らかの方法で改善しようとしている人は、症状経験者の3割にとどまっていた。「寝付けない」と感じる大多数の人は、医療機関の受診や服薬などの対処はせず、そのまま我慢しているのが現状だ。季節的な要因やストレス増加などを背景に、催眠鎮静薬を潜在的に必要とする人は、まだまだ多いと考えられる。(林)

林 芳行
Yoshiyuki Hayashi
株式会社インテージヘルスケア事業本部 SDIインデックスマネージャー
同社のSDI(全国一般用医薬品パネル調査)をはじめとした、OTC薬の市場動向について分析している。市場調査・マーケティングリサーチのパイオニアであるインテージで、OTC薬を含むヘルスケアを担当。

SDI(全国一般用医薬品パネル調査):全国3211店の薬局・店舗販売業、ドラッグストア、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンターを対象に、OTC薬をはじめとしたヘルスケア関連のPOSデータを収集し、情報提供するインテージのサービス。


注目の催眠鎮静薬

 眠れない、寝付きが悪い、夜中に目が覚めてしまうなどの不眠の症状は、ストレスや飲酒、不規則な生活だけでなく、うつ病や神経症、パーキンソン病、前立腺肥大による頻尿やアトピー性皮膚炎による痒みなど、疾患に起因する場合も少なくない。OTC薬で対応可能なのは、ストレスで神経がたかぶって眠れない、時差ボケで寝付けないというような一時的な不眠症状の緩和である。

抗ヒス成分による眠気誘発

 ドリエル(エスエス製薬)は、抗ヒスタミン成分のジフェンヒドラミン塩酸塩の単味製剤である。

ドリエル

エスエス製薬 指定第2類医薬品

 ジフェンヒドラミンは、皮膚の痒みを鎮めたり、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状を抑える目的で広く使われているが、眠気を催す作用もあることから、催眠鎮静薬としても使われている。抗コリン作用を持つことから、前立腺肥大症や一部の緑内障患者には禁忌である。また、妊婦または妊娠していると思われる人には自己判断で服用しないよう注意を促す。授乳中の人は服用しないか、服用する場合は授乳を避ける。

 白い裸錠で、15歳以上は1日1回2錠を就寝前に服用する。同シリーズのドリエルEXは、リラックス効果のあるラベンダーの香りがする軟カプセルで、用量は1日1回1カプセルである。

いらいら、興奮を鎮めて入眠

 心身が疲れて寝付けない、不安で眠れないといった入眠障害を訴える人にお薦めなのが奥田脳神経薬(奥田製薬)である。生薬成分として、催眠鎮静作用を持つチョウトウやサンソウニン、テンナンショウ、サイシンのほか、頭痛や頭重にも効果があるシンイ、滋養強壮作用で疲労回復を早めるニンジンやインヨウカクが配合されている。加えて、西洋薬の成分で大脳の興奮を抑えて鎮静・催眠作用と抗痙攣作用を示すブロモバレリル尿素も配合されている。グリセロリン酸カルシウムは、カルシウム不足による神経や筋肉の興奮を抑え、鎮静や鎮痙作用をもたらす。

奥田脳神経薬

奥田製薬 指定第2類医薬品

 効能効果は、いらいら、不安感、頭痛、頭重、のぼせ、めまい、耳鳴り、首肩の凝り。不眠とは書かれていないが、いらいらしたり、興奮して眠れないという患者に向いている。15歳以上から使用でき、1日2回朝夕食後、1回5錠服用する。1回分の5錠ずつ分包されているので、携帯に便利である。生薬の香りがするが、微香なので飲みやすい。20~30分と比較的短い時間で作用し、3~4時間程度、効果が持続する。

 ジフェンヒドラミン塩酸塩、ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素を配合しているのがウット(伊丹製薬)である。効能効果は、頭痛、精神興奮、神経衰弱、そのほか鎮静を必要とする諸症で、食後に1回1錠、1日3回まで服用できる。

ウット

伊丹製薬 指定第2類医薬品

 ブロモバレリル尿素は、依存性や耐性がみられることがあり、急性のブロム中毒では意識障害や呼吸抑制などが起こる。慢性のブロム中毒では、精神・神経症状、脳萎縮などが起こる恐れがあるので、2週間を超えた服用や過量服用はしないように販売時に伝える。

 催眠鎮静薬は、各メーカーから錠剤や糖衣、カプセルなどの様々な剤形の製品が発売されており、用法用量も異なるので、飲みやすさや患者の生活スタイルなどを聞いて選ぶようにする。また、不眠の原因の把握に努め、適切な受診勧奨や生活習慣改善などのアドバイスも同時に行うようにしたい。

三上 彰貴子
Akiko Mikami
株式会社A.M.C 代表取締役社長、薬剤師
製薬会社勤務後、コンサルティング会社勤務を経て2005年から現職。医療分野のコンサルティングを行う傍ら、一般用医薬品に関する寄稿や講師の活動も行う。

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