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DIクイズ1(A)
DIクイズ1:(A)SGLT2阻害薬追加時の重篤な副作用
日経DI2014年9月号

2014/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年9月号 No.203

出題と解答 :渋谷 泰史
(アイ調剤薬局[東京都中央区])

A1

(3)メトホルミン塩酸塩(メトグルコ、グリコラン他)

 今回Sさんに追加処方されたイプラグリフロジンLプロリン(商品名スーグラ)は、ナトリウム依存性グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬に分類される糖尿病治療薬である。腎臓の近位尿細管に存在するSGLT2は、原尿中に排出した糖分を体内に再吸収する輸送体であり、これを阻害すると、尿から排泄される糖分が増え、血糖値を下げることができる。HbA1c値の低下、体重減少などの効果が臨床試験において認められている。

 SGLT2阻害薬の特徴的な副作用としては、尿路感染と脱水がある。それぞれ、糖が尿中に排泄されるために細菌が繁殖しやすくなること、浸透圧により利尿が促進されることが原因と考えられている。

 さて、SGLT2阻害薬は他の糖尿病治療薬と併せて処方されるケースが少なくない。その場合にまず注意が必要なのは、低血糖である。添付文書でも他の血糖降下薬と併用する場合は注意すべきとの旨が記載されている。

 糖尿病の専門医で構成される「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」が2014年6月に発表した声明「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」によると、イプラグリフロジンの発売開始から1カ月間に、24例の低血糖が報告され、うち4例は重症低血糖であった。特に、インスリン、SU薬、即効型インスリン分泌促進薬などとの併用は注意が必要であるとされた。

 さらに、SGLT2阻害薬と併用する場合、低血糖以外の重篤な副作用に注意しなければならない薬剤がある。それはメトホルミン塩酸塩(メトグリコ、グリコラン他)などのビグアナイド系薬である。

 ビグアナイド系薬には乳酸アシドーシスの副作用があることが知られている。そのリスク因子として、高齢、心疾患、肝障害、腎障害、過剰なアルコール摂取などとともに、脱水も挙げられている。SGLT2阻害薬を服用すると脱水が生じやすいことから、メトホルミンとSGLT2阻害薬との併用で乳酸アシドーシスの発現リスクが高まる可能性が考えられる。

 前述の声明の中でも、「脱水がビグアナイド薬による乳酸アシドーシスの重大な危険因子であることに鑑み、ビグアナイド薬使用患者にSGLT2阻害薬を併用する場合には、脱水と乳酸アシドーシスに対する十分な注意を払う必要がある」という記載がある。なお、同声明は日本糖尿病学会のウェブサイトなどで確認できる。

 2014年8月末時点では、SGLT2阻害薬とメトホルミンの併用による乳酸アシドーシスの発症は報告されていないようである。しかし、乳酸アシドーシスは発症すると急速に進行し、放置すれば数時間で昏睡状態になる。死亡率も約50%と高く、予後が悪いことで知られる。

 特にSさんのような、高温多湿下で作業をする人や高齢者は、自覚症状がないまま脱水状態になるケースも多いため、こまめに水分補給するよう、服薬指導時に十分伝えるべきだろう。

 また、脱水に伴う体液量減少でリスクが高まる疾患として、脳梗塞にも注意が必要である。上記の声明にも3例の発症が記載されている。SGLT2阻害薬と利尿薬の併用は推奨されないことも、併せて知っておく必要がある。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 今回Sさんに追加されたスーグラという薬は、血液中の糖分を尿と一緒に排出することによって糖尿病を改善する薬です。これまで服用してきたメトグルコやジャヌビアと一緒に飲んでも構いませんが、スーグラを飲むとおしっこが出やすくなるため、脱水症状を起こすことがあります。

 脱水状態になると、メトグルコの副作用である乳酸アシドーシスという症状が起こりやすくなります。この症状は、放置すれば意識を失うこともある危険なものです。日常生活はもちろん、汗をかくような作業の時は常に水やお茶を持っていき、普段からしっかりと水分補給するように心掛けてください。

参考文献
1)臨床病理1998;46:804-12.

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