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特集:
ケアチームの一員と自覚し薬剤師から歩み寄る努力を
日経DI2014年8月号

2014/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年8月号 No.202

 今回の調査で、最も多くの薬剤師が経験したことがあったと回答したのは、「退院時共同カンファレンスやサービス担当者会議に呼んでもらえない」というもの(「プロローグ」図1)。

 退院時共同カンファレンスは、入院から在宅に移行する際に、入院元の医療スタッフと受け入れ先の医療・介護スタッフが合同で実施するカンファレンスのこと。サービス担当者会議は、ケアマネジャーが中心となってアセスメントを行い、介護(予防)ケアプランを組み立てていくための会合だ。

 ケアチームの中で薬剤師の“存在感”が薄い原因について、フジケアの白木氏は、「薬剤師の在宅業務に対して、他職種の認知度も低い現状がある」と指摘。「薬剤師による介入の効果を他職種に実感してもらえるよう、薬剤師の側から積極的に働き掛けていく姿勢が必要ではないか」と話す。

誤薬防止も薬剤師の役目

 特に、医師や看護師が常駐していない高齢者施設では、薬剤管理や服薬補助に問題を抱えていることが少なくなく、それらのトラブルを防ぐ上で、薬剤師が関わる意義は大きい。今回の調査でも、経皮吸収型製剤の重複投与や、食前服用の薬を食後に服用させるといった、介護スタッフによる過誤(誤薬)の事例が複数寄せられた。

 薬剤師が配薬ボックスに薬をきちんとセットしているにもかかわらず、介護スタッフによる誤薬が生じる場合は、配置の仕方や、薬袋や分包紙の表示などに何らかの問題がある可能性が考えられる。服用時点ごとに分包紙に異なる色で線を引く、ジッパー付き保存袋などを活用して患者別にセットする、説明する際に専門用語は使わない─といった誤薬を防ぐための工夫や配慮も、薬剤師の“腕の見せ所”だ。

 「施設の介護スタッフは、本来業務である生活介助や身体介助で手一杯なのが現状。薬剤師には、介護スタッフが薬剤管理や服薬補助を適切に行えるようサポートする役割も求められる」とクラフトの藤森氏は強調する。

 さかい薬局グループの坂井氏は、薬剤師が関わったことで大幅な減薬を実現し、寝たきりだった患者が自らトイレで排泄できるまでに日常生活動作(ADL)が改善したケースを経験している。「薬物治療の適正化により患者の状態が改善すれば、介護の負担は減少し、介護スタッフにも喜んでもらえる」と坂井氏は話す。

 また、シップヘルスケアファーマシー東日本の小坂氏は、「高齢者施設の介護スタッフは、シフト制で勤務していることが多く、引き継ぎが不十分だったり、誤った情報が伝達されたりすることがしばしばある」と指摘する。情報の伝達ミスを防ぐためには、処方内容の変更や残薬の状況などを連絡票やノートに記録し、介護スタッフの間で共有してもらおう。

他職種と仲良くなる

 職種を問わず、ケアチームとの間に信頼関係を築くことは、薬物治療の適正化においても、重要な意味を持つ。例えば、ホームヘルパーは患者の性格やその日の機嫌、食事・排泄の状況などを細かく把握していることが多い。服薬状況や薬の副作用などを評価する上で、貴重な“情報源”となるわけだ。また、患者・家族とのトラブルを回避したり、予期せぬ事態に遭遇した場合も、早急な対応につながる(「患者・家族トラブル編」)。

 そのためには、個人レベルでのコミュニケーションの機会を多く持つことが大前提となる。受け持ちが決まったら、居宅介護支援事業所や訪問看護ステーションに出向き、“顔の見える関係”をつくっておこう。日ごろから他職種が参加する研修会などに積極的に足を運び、人脈を広げることも大切だ。

 その際、薬剤師の何気ない態度が他職種の気分を害することもあるので、注意したい(表4)。クラフトの藤森氏は、「看護師や介護スタッフは、薬剤師のことを“雲の上の存在”と見ている向きがある」と指摘。「教えを請う謙虚な姿勢と、笑顔を忘れずに」とアドバイスする。そらちぶと調剤薬局の福地氏も、「他職種と信頼関係を築くためには『傾聴』の姿勢が第一」と話す。

表4 ケアチームに疎まれる!薬剤師のNGな振る舞い(取材を基にまとめ)

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「在宅ケアチームでは、教えを請う謙虚な姿勢と、笑顔を忘れずに」と話すクラフトの藤森真紀子氏。

「他職種と信頼関係を築くには『傾聴』の姿勢が必要」と話す、そらちぶと調剤薬局の福地隆康氏。

「読まれる報告書」の秘訣

 一方、ケアチームの連携において、多くの薬剤師が頭を悩ませているのは、医師とのコミュニケーション。薬剤師は訪問結果について医師に文書で報告する必要がある(介護報酬の居宅療養管理指導費の算定要件にはケアマネジャーへの情報提供も含まれる)。だが調査では、「報告書に記載した内容が次の処方に反映されていないことが非常に多い」(40代男性、京都府)、「報告書の具体的な提案に対して回答がない」(30代男性、千葉県)といった意見は多く、薬剤師の情報が生かされていないことへの不満がうかがえた。

 ただ、医師にとって、多忙な診療の合間に全ての患者の報告書に目を通すのは容易ではない。文字をぎっしり書き込んだ報告書では、重要なポイントが埋もれてしまい見逃される恐れもある。「報告書はだらだらと書くのではなく、医師がどんな情報を必要としているかを考えて、コンパクトにまとめることが大切」と藤森氏は話す。

 さらに、薬剤師からの情報を医師の診療に反映してもらう秘訣は、情報を提供するタイミングにもある。薬剤師が訪問した直後ではなく、次回、医師が訪問診療を行う前に情報を提供するのが効果的だ。

 さかい薬局グループでは、介護報酬の算定要件となる患者ごとの報告書とは別に、A4用紙1枚に数人分の施設入居者の「近況報告」「残薬状況」「処方希望」を記載し、医師の訪問診療日の前日にファクスで送るようにしている。近況報告には、処方変更の経緯や薬剤師の訪問時に実施したバイタルチェックやアセスメントの結果、患者の訴えなど、医師に留意してもらいたいポイントをコンパクトにまとめる。提案事項は、「薬剤Aが7月20日(夕)で終わります。継続であれば10日分処方をお願いします。定期のお薬は7月30日(夕)まであります」などと具体的に記すことで、医師がスムーズに判断できるようにしている。

 在宅ケアの現場には様々なトラブルのリスクがあるが、だからといって躊躇していては始まらない。薬局を挙げて対策を講じ、初めの一歩を踏み出そう。

表5 多職種連携のポイント(取材を基にまとめ)

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多職種連携、私はこうしています!(調査の自由意見より)

クリニックの事務スタッフと顔なじみになり、仕事をスムーズにできるようにした。(30代女性、埼玉県)

医師に直接会って報告する場合は、写真や図、見出しを付けたり、箇条書きなどで1ページにまとめて、極力分かりやすい報告書にするよう心掛けている。(50代男性、島根県)

薬剤師の在宅業務はまだあまり認知されていないためか、こちらから提案しないと会議には呼ばれない。私は一度参加し、ケアマネジャーさんと顔なじみになったことで、サービス担当者会議やその他の色々な情報をきちんと教えてもらえるようになった。(30代男性、福島県)

仲良くなる。相手の立場や仕事内容を理解して、お互いのできること(得意分野)、できないこと(不得意分野)を補い合うイメージで関わるようにしている。(30代男性、北海道)

医師と薬剤師の1対1関係に限定しないよう、他職種との合同ディスカッションを事前と初回に行うようにしている。(40代女性、愛媛県)

顔を合わせて話す、電話で話す、会合には極力参加するなどして連携を深めている。(30代男性、愛知県)

ケアマネジャーは薬剤師に遠慮しているのが現状。「どんなことでも質問してください」と携帯電話番号を伝え、24時間対応している。在宅が決まったら担当する各スタッフと顔合わせをするのは鉄則。(30代女性、埼玉県)

施設などに薬局連絡ノートを置いている。曜日や時間帯によって看護師やヘルパーなどが交代し、口頭だけでは情報が行き届かない恐れがあるため、ノートで情報を共有してもらっている。(30代女性、神奈川県)

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