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薬局なんでも相談室1
相談室1:胃癌の内視鏡手術のエビデンスは?
日経DI2014年8月号

2014/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年8月号 No.202

 胃癌は日本人に多い癌で、胃癌に対する外科手術療法は日本の“お家芸”でもあります。しかしながら、外科手術では胃を部分的に切除したり、場合によっては胃を全て摘出するために、術後に従来のように食事を取ることが難しくなり、生活の質(QOL)に多大な影響を与えてしまいます。

 一方、胃を切除せずに癌の部分のみを剥がし取る内視鏡手術は、消化機能温存には圧倒的に有利です。また、全身麻酔下で腹壁を傷付けて行う外科手術と異なり、口から挿入した消化管内視鏡で管腔内の癌を剥がし取るので、身体的侵襲が小さいこともメリットです。

 内視鏡手術には、スネアと呼ばれる、金属製のループで癌をつかみ取って通電切除する内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)と、様々な電気メスで癌周囲を切開し、大きく全体を剥離する内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)の2種類があります。最近では、大きな病変でもひとまとめに切除できるESDが注目されています。

 内視鏡手術の適応について、「胃癌治療ガイドライン 第3版」(日本胃癌学会編)には様々な病変が記されていますが、基本的には「リンパ節転移リスクのない早期胃癌」が対象です。原理的には、リンパ節転移がなければ、内視鏡で胃癌の部分を確実に切除すれば癌は治癒するはずです。早期胃癌外科手術例の他病死を除いた5年生存率は、粘膜内癌で99.3%、粘膜下層までの癌で96.7%と報告されているので、内視鏡手術が許容されるためにはこの成績と遜色ない治療成績が見込まれるデータが必要です。

 外科的に切除された胃癌のリンパ節転移データの解析から、内視鏡手術で十分根治的に切除できる胃癌の条件が検討されました。具体的には、癌巣内の潰瘍(UL)を伴わず、2cm以下の肉眼的粘膜内癌と診断される分化型癌が、いわゆる「絶対適応」と呼ばれる内視鏡手術対象病変です。

 しかし最近では、(1)2cmを超えるUL(-)分化型粘膜内癌、(2)3cm以下のUL(+)の分化型粘膜内癌、(3)2cm以下のUL(-)の未分化型粘膜内癌─についても、リンパ節転移リスクが非常に低いことが報告されており、「適応拡大病変」として臨床研究レベルでの内視鏡手術が許容されています。

 適応拡大病変に対しても外科手術後・内視鏡手術後の5年生存率が同等であれば、術後のQOLを考慮して内視鏡手術が推奨されることになります。幾つかの後ろ向き研究においては、適応拡大病変に対する内視鏡手術の長期予後が絶対適応病変と同等、すなわち外科手術と遜色ない、という結果が報告されています。

 ただし、適応拡大病変に対する標準治療が外科手術ではなく内視鏡手術であるとするには、確実なエビデンスがまだ足りない状況です。現在進行中の前向き試験(JCOG0607)の結果が待たれます。

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