DI Onlineのロゴ画像

DIクイズ2(A)
DIクイズ2:(A)妊婦にモーラステープはなぜ禁忌なのか
日経DI2014年8月号

2014/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年8月号 No.202

出題と解答 :笠原 英城
(日本医科大学武蔵小杉病院薬剤部)

A1

(1)胎児動脈管収縮

A2

(2)羊水過少症

 2014年3月、厚生労働省はテープ剤やクリーム剤などケトプロフェンの全ての外皮用剤(商品名エパテック、セクター、ミルタックス、モーラス他)について、妊娠後期の女性への使用を禁忌とし、また妊娠中期では必要最小限の使用にとどめるなど慎重に使用する旨を添付文書に追記するよう指示した。これは、ケトプロフェンのテープ剤を使用した妊娠後期や中期の女性において、胎児に悪影響を及ぼす副作用症例が報告・集積されたことを受けた措置である。ただ、報告された悪影響は、妊娠の時期により異なる。

 妊娠後期における使用では、胎児動脈管収縮に関連した副作用が問題となった。動脈管とは、肺動脈と大動脈をつなぐ血管で、胎児期にのみ開存しており、出生後は12時間程度で閉鎖する。なぜ胎児にだけこのような血管があるかというと、胎児は羊水中で呼吸をしておらず、胎盤を通して血液中の酸素を供給されているため、心臓から肺へ血液が流れる必要がない。そのため、血液の一部は「心臓から肺に行く肺動脈」から肺へ行かずに、動脈管を通って「心臓から全身に行く大動脈」に流れるのである(図)。

図 胎児での正常な循環

画像のタップで拡大表示

 胎児が子宮内にいる時には、血管拡張作用などを持つプロスタグランジンなどにより動脈管の開存が保たれている。しかし、妊娠後期の女性に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を全身性に投与すると、プロスタグランジンの産生が妨げられて胎児の動脈管が収縮し、胎児死亡などを来し得ることが古くから知られており、経口剤や注射剤などの使用は以前から禁忌とされていた。

 一方、経皮的な投与ではNSAIDsの作用は局所にとどまると考えられていて、これまでは禁忌とされていなかった。しかし、ケトプロフェンのテープ剤を使用した妊娠後期の女性で胎児動脈管の狭窄や閉鎖を生じた事例が14年1月までに4例報告され、うち1例は「1日1枚を1週間」という少量・短期間の使用による発生例だったため、妊娠後期の女性に対する使用が禁忌とされたのである。

 また、ケトプロフェンのテープ剤については、妊娠中期の女性への使用で羊水過少症が生じた事例が1例報告されている。そのため今回の改訂指示では、妊娠中期に対して慎重投与とされた。

 なお、インドメタシンなどケトプロフェン以外のNSAIDsについては、妊娠後期の女性に対する外皮用剤の使用は禁忌とはされていない。ただ、添付文書には今回、類薬で胎児動脈管収縮が生じたことへの注意を喚起する文言が記された。今後の症例の集積状況を注視する必要があるだろう。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 おなかの赤ちゃんに影響があるお薬だと言われて、ご心配でしたね。前回の妊娠の時にお使いになったモーラステープは、妊婦さんが使うとごくまれに、おなかの赤ちゃんの「動脈管」という血管を細くすることがあると分かって、今年の4月から妊娠後期では使ってはいけなくなりました。

 動脈管が細くなると、酸素をたっぷり含んだ胎盤からの血液が赤ちゃんに届きにくくなって、赤ちゃんが酸素不足になることがあるのです。

 ただ、動脈管は生まれた後、自然に閉じる血管ですので、1人目のお子さんにこれから悪い影響が出ることはありません。どうぞご安心ください。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ