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DIクイズ5(A)
DIクイズ5:(A)乳汁分泌を促す薬とは
日経DI2014年7月号

2014/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年7月号 No.201

出題と解答 :堀淵 浩二
(クオール株式会社[東京都港区]西日本薬局事業本部)

A1

ドパミン受容体を阻害することで、乳汁分泌ホルモンであるプロラクチンの分泌を促すため。

 近年、母乳に含まれる成分の重要性や母子のスキンシップによる愛着形成などの観点から、母乳育児を重視する傾向が強まっている。しかし、過去20年間の調査では、母乳のみを与えている割合はわずかながら減少し、人工乳と母乳との混合栄養の割合が増えている。

 混合栄養を選択する理由として、「母乳の出が悪い」「子どもの成長が芳しくない」などがある。一方で、前述のようにわが子は母乳で育てたいという母親の強い希望から、乳房マッサージや薬物療法など、乳汁分泌を促進させる方法も多く実践されている。

 乳汁分泌は脳下垂体から分泌されるプロラクチンの作用が鍵を握っている。分娩までは卵胞ホルモンのエストロゲンと黄体ホルモンのプロゲステロンの作用によってプロラクチンの機能が抑制され、本格的な分泌に至らない。胎盤の娩出を機にエストロゲンとプロゲステロンが急激に減少するため、それまで抑えられていたプロラクチンの作用が発揮されるようになり、乳汁分泌が始まる。

 プロラクチンの血中濃度は一般に分娩直後から徐々に減少していくが、新生児・乳児の吸啜刺激により一過性に上昇する。このため通常は頻繁に授乳を続けると母乳の分泌は促進される。

 一方でプロラクチンの分泌は、視床下部から分泌されるドパミンにより抑制されることが分かっている。そこで、ドパミンの作用を抑制し、プロラクチンの分泌を促す薬物療法として、ドパミン受容体阻害薬のスルピリド(商品名アビリット、ドグマチール、ミラドール他)が用いられる。

 スルピリドは胃・十二指腸潰瘍、統合失調症、うつ病・うつ状態に適応を持つ。一方、乳汁漏出などの副作用が認められており、Tさんへの処方はこの副作用を逆手に取ったものと言える。

 産褥初期(産後2週間まで)の場合、スルピリド1日100mgを7日間、産褥2週間以降は1日当たり150mgを28日間投与することで、乳汁分泌量が20~50%増加する。ただし、スルピリドは少量だが乳汁中にも移行することが判明しており、副作用の問題から使用は4週間以内にとどめるべきとの見方がある。

 なお、海外の臨床試験では乳汁に移行するものの、授乳婦のスルピリド服用は「比較的安全」と位置付けられている。もっとも、乳汁移行の観点から授乳中に薬を服用することに抵抗を示す母親も少なくないため、服薬指導ではスルピリドは乳汁分泌不全によく処方される薬であり、新生児や乳児への影響は極めて少ない点を丁寧に説明する。

 ちなみに、スルピリドと同様にドパミン受容体阻害作用を持つメトクロプラミド(プリンペラン他)やドンペリドン(ナウゼリン他)も乳汁分泌不全の治療に用いられている。メトクロプラミドの場合は1日当たり10~15mg、ドンペリドンでは1日当たり30mg投与する。ドンペリドンは乳汁分泌量を60~100%増加させる効果があると報告されている。

こんな服薬指導を

イラスト:YAB

 母乳が十分出なくてお困りとのことですね。母乳が出ない原因は様々ですが、その一つに、プロラクチンという母乳の分泌に関わるホルモンの不足が考えられます。今回からお飲みになるドグマチールというお薬にはこのホルモンの分泌を促す作用があります。

 このお薬を飲んでいる間、母乳にお薬の成分が出てくることがあります。ただし、量はごくわずかですし、長期間お薬を飲むわけではないので問題はないとされています。お薬を飲まれているお母さんの母乳を飲んだ赤ちゃんに副作用が出たという報告もありません。もし、気掛かりなことや心配なことがありましたら、医師や薬剤師にお尋ねください。

参考文献
1)厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」(2007)
2)日本産婦人科学会雑誌2002;54:N205-7.
3)産婦人科治療2009;99:337-45.

※本クイズは、書籍『日経DIクイズ15』からの再掲載です。

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