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特集:OTC薬
Case02/前立腺肥大症の患者
日経DI2014年7月号

2014/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年7月号 No.201

 前立腺肥大症では、肥大した前立腺が尿道を圧迫し、排尿困難を来す。また、前立腺や膀胱頸部の平滑筋に存在している、筋の収縮に関与するα1アドレナリン受容体の働きが亢進し、前立腺や膀胱頸部の平滑筋が過剰に収縮し尿道内圧が上昇することで、下部尿路閉塞症状を来す。

 そのため、前立腺肥大症の患者には、尿道を緩めて尿の出をスムーズにすることを目的に、前立腺や尿道平滑筋にあるα1受容体を遮断する薬が処方される。

 「こうした前立腺肥大症をはじめ尿路に閉塞性疾患がある患者で特に注意したいのは、尿閉を来す恐れがある、抗ヒスタミン薬など抗コリン作用を有する薬」と、泌尿器科医院の門前に位置する、ららくま薬局(長野県諏訪市)管理薬剤師の熊谷信氏は話す。

 抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンの受容体への結合を阻害するほかに、アセチルコリンの作用も阻害する。アセチルコリンは神経と神経、自律神経系の神経と筋肉の刺激伝達に働いており、その作用が遮断されることによって様々な副作用が起こる。

 唾液腺の抑制による口の渇き、消化管平滑筋の収縮障害による便秘のほかに、膀胱においては尿道括約筋の収縮による抵抗増加と、膀胱の収縮筋の抑制による排出力低下を来す。そのため、前立腺肥大の患者の排尿困難を悪化させ、尿閉を起こすこともある。

 抗ヒスタミン薬は、OTCの総合感冒薬や鼻炎用薬、解熱鎮痛薬に多く含まれている。また、睡眠薬や乗り物酔いの薬にも、抗ヒスタミン薬が入っているので、「眠れない」「旅行に行く」といった患者にも注意を促す必要があるだろう。

 「つい先日も、かぜ薬を飲んで尿閉を起こし救急搬送されたという患者が来局した」と熊谷氏。患者の多くは、ドラッグストアなどで気軽に買えて、身近にあるかぜ薬などが、こうした重篤な結果を招く場合があると認識していない。そのため同薬局では、前立腺肥大症による排尿障害治療のために、タムスロシン塩酸塩(ハルナール他)、シロドシン(ユリーフ)、ナフトピジル(フリバス)といったα1受容体阻害薬が処方されている患者を中心に、OTCのかぜ薬などを飲むときには注意するように伝えるとともに、「飲む前にお電話で相談してください」と話すという。

 ほかに、ロートエキスやブチルスコポラミンなどの鎮痙成分も抗コリン作用を有する。これらの成分が含まれている胃腸薬にも、注意が必要だ。

 なお、抗ヒスタミン薬など抗コリン作用を有する成分については、緑内障の患者にも注意が必要だ。房水の出口を塞ぎ、その排出を阻害するため眼圧の上昇を来す。

 緑内障には「閉塞隅角緑内障」と「開放隅角緑内障」の2つの病態がある。うち、抗コリン薬の影響を強く受けるのは、閉塞隅角緑内障だ。眼科を受診している患者にも注意が必要だ。

患者に伝えたい一言

前立腺肥大症の患者さんは、かぜ薬や花粉症の薬などに含まれる抗ヒスタミンという成分によって、尿閉といって、おしっこが全く出ない状態になってしまうことがあります。抗ヒスタミン成分は、他にも乗り物酔いの薬や睡眠薬など、多くのOTC薬に含まれています。OTC薬を飲む前に、必ず医師か薬剤師に相談してください。

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