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医薬品リスク管理計画 (RMP:Risk Management Plan)
日経DI2014年7月号

2014/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年7月号 No.201

 RMPは、2013年3月に厚生労働省が発出した「医薬品・医療機器等安全性情報 No.300」(以下、安全性情報No.300)に紹介されており、冒頭部分にはこう書かれている。

 医薬品リスク管理計画(RMP : Risk Management Plan)は、個々の医薬品について安全性の検討課題を特定し、使用成績調査、市販後調査等による調査・情報収集や、医療関係者への追加情報提供などの医薬品のリスクを低減するための取組を、医薬品ごとに文書化したものです。

 RMPの公開は13年8月から始まり、14年6月1日現在、RMPが公開されている医薬品は17成分18品目に上る(表1)。対象となる医薬品は、原則として13年4月1日以降に製造販売承認申請された新規医薬品とバイオ後続品である。また、追加のリスク最小化活動が実施されている先発医薬品の後発医薬品、さらに、イエローレターやブルーレター発出など発売後において新たな安全性の心配が生じたときもRMPの適用となる。つまり、RMPは、承認時だけでなく、継続して策定・実施される可能性がある。

表1 医薬品リスク管理計画(RMP)が公開されている医薬品一覧(2014年6月1日現在)

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RMPは、2005年から始まっていた

 筆者は医薬品開発目的の臨床試験(治験)マネジメントの仕事に関与していたため、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)関係の情報に接する機会は多く、ICH合意に基づいて作成された「ICH E2Eガイドライン」の存在は知っていた。同ガイドラインは「医薬品安全性監視の計画」として和訳され、05年9月に厚労省から通知された(厚労省通知「医薬品安全性監視の計画について」[平成17年9月16日付薬食審査発第0916001号、同薬食安発第0916001号])。これが現在のRMPのベースとなっている。

 その緒言には、「特に新医薬品の市販後早期における医薬品安全性監視活動の計画立案を支援することを意図して、承認申請時に提出される安全性検討事項と医薬品安全性監視計画に主たる焦点を当てる」という旨が記されている。ICH合意に基づくものであるため、新薬開発能力のある米国、EU、そして日本の3極が一緒に取り組むものと位置付けられている。

RMPで求められること

 RMPは、基本的に、(1)安全性検討事項、(2)医薬品安全性監視計画、(3)リスク最小化計画─という3つの要素で構成される(図1)。(1)の安全性検討事項は、さらに3つの項目、すなわち「重要な特定されたリスク」「重要な潜在的リスク」「重要な不足情報(情報不足による重要なリスク)」に細分化される(図2)。

図1 RMPの全体像

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図2 安全性検討事項の3項目

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ベネフィット・リスク・バランスに影響を与える、あるいは保健衛生上の危害の発生・拡大の恐れがある重要なリスクを特定して、3項目に分類して示している。

 (2)の医薬品安全性監視計画とは、特定された安全性検討事項を踏まえて、市販後に情報を収集する目的で実施される調査・試験の計画のことである。具体的に行われる医薬品安全性監視活動は、「重要な特定されたリスク」であれば日常診療における特定リスクの発生頻度に関する調査、「重要な潜在的リスク」であれば潜在的リスクと投与医薬品との因果関係を評価するための調査が、「使用成績調査」として行われる。また、「重要な不足情報」については、長期使用時の安全性情報や、特定の患者集団(小児、高齢者、妊婦、腎機能障害患者、肝機能障害患者)での安全性情報の収集が、「特定使用成績調査」として行われる。さらに、必要があれば、日常診療下での臨床試験(製造販売後臨床試験)も実施される。

 (3)のリスク最小化計画とは、開発段階で得られた情報や市販後の副作用報告などから明らかとなったリスクを、最小に抑えるための安全対策の計画のことである。具体的には、以下のことが行われる。

(1)専門知識・経験のある医師による使用の確保
◯処方医の要件の規定(高度な専門的知識・経験、講習会受講)
◯医師の登録など
(2)医薬品の使用管理体制の確保
◯入院管理下での投与などの使用管理
◯医師・薬剤師の登録
(3)投与対象患者の慎重な選定
◯患者の事前確認
◯モニタリングの実施
◯投与患者の登録
(4)投与に際しての患者への説明と理解の実施
◯患者向けの資材、教育プログラムなどの提供
(5)特定の検査などの実施
◯投与対象患者の適切な選択
◯副作用回避のための条件設定

 ここまで読み進んだ方は、リスク最小化計画の具体的内容として示したことが、既に実施されていることに気付くと思う。つまり、知らない間に、数年前からRMPは実施されていたことになる。

RMP実施上の問題点と解決のための提案

 現時点でのRMP実施上の問題点として、以下の3点が挙げられる。

問題点(1)
 製薬企業の医薬情報担当者(MR)がRMPを理解していない。

問題点(2)
 RMPが医療機関に対して求めていることが明確でない。

問題点(3)
 現行の「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令」(GPSP)にそぐわない「製造販売後調査」が増えている。

 これらの問題点の詳細と、解決のための提案を以下に記述する。

問題点(1)

 製薬企業間で差があると思うが、製造販売後の安全性監視計画を、臨床開発部門と製造販売後担当部門が共同で作成していない印象がある。その結果、RMPが公開されている医薬品であっても、医療機関に対して情報提供を行う学術担当者やMRは、その存在を知らないまま新製品の説明をすることが現時点では少なくない。実際、製薬企業から新発売の医薬品の説明を受けるとき、その製品のRMPの内容について説明者に質問すると「RMPって何ですか?」と逆に質問されるケースがほとんどである。

【解決案】
 RMPの担当者をMRとするのであれば、製薬企業はRMPの目的と仕組み、個々の医薬品のRMPの内容を十分に教育する。RMP担当者を学術担当者などMR以外の専任者にするのであれば、その体制を早急に作り上げ、医療機関に周知する。

問題点(2)
 安全性情報No.300では、医療関係者に対し、RMPの適正使用への活用と市販後の調査・試験への積極的な参画を求めている。しかしRMPの基となるICH E2Eガイドラインでは医療機関の役割は検討対象外である。医師や薬剤師のRMPに対する理解も遅れている。

 さらに、個々の医薬品のRMPは、20ページを超える文字ばかりの文書であり、読む気になりにくい。医療機関の協力が必要であれば、「してほしいこと」が簡単に理解できるような記述様式の工夫が必要である。

【解決案】
 以下の2点を提案する。

(1)薬剤師の活用

(2)「すべきことが簡単に分かる」

要約の作成・提供

 現在の医療環境における医師の状況を考慮すると、RMPに対応するには、薬剤師の活用が効果的である。保険薬局の薬剤師も含めての病診薬連携を強化し、薬剤師を窓口にすることで、RMPが効果的に実行されるだけでなく、MRの負担も軽減できる。

 また、医師、薬剤師、MRにとって20数ページのRMPの内容を把握することは大変な労力を要する。この対策として、RMPの要約作成を提案する(表2)。該当ページ付きで全体を一覧できる要約を作成し、将来的には電子化して該当部分をクリックすると詳細な情報に展開する仕組みが望ましい。

表2 スチバーガのRMPの「要約」(山口大学医学部附属病院薬剤部からの提案)

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RMPの全体が理解できるように、全項目(本図では一部を省略している)の情報をA4判1ページに該当ページ付きでまとめ、RMP本文のどこに詳しい情報が書かれているかが参照できるようにする。将来的には、RMP本文と紐付けした電子データとして作成し、タブレット端末で使用できるようにする。

問題点(3)
 わが国における使用成績調査・特定使用成績調査は、日常診療下で実施されることを前提にしており、GPSPでは患者のインフォームド・コンセント取得や倫理審査が義務付けられていない。しかし、最近の使用成績調査・特定使用成績調査では、患者の同意取得、来院スケジュール管理、患者日誌の記入、日常診療では実施しない臨床検査の実施が求められるものが少なくない。結果として、調査に協力する医療機関の負担が増大している。

 また、製造販売後調査の経費は一般に、調査内容や作業量とは無関係に算定されている。作業量に対する正当な経済的評価と、院内の支援体制の整備にかかる費用の提供がないと、日常診療で多忙な医師の協力を得ることは容易ではない。

【解決案】
 RMPで求められる「医薬品安全性監視活動」は、日常診療を超えたものが少なくなく、現行GPSPの規制範囲を超えている。企業は、製造販売後調査と特定使用成績調査についても、治験や製造販売後臨床試験と同様に、調査内容と作業量を反映した経費算定を行う。医療機関側も、正確で信頼できる調査データを製薬企業に提供できるRMP実施体制の整備を行う。

リスク管理のために、薬剤師は何をすればよいか

 RMPでは「特定されたリスク」と「重要な潜在的リスク」が分離されたことで、副作用監視にメリハリが付けられる。薬剤師は、特定されたリスクとされた事象について、患者観察を通して該当事象の発現状況を継続的に観察し、異常を認めたときはすぐに処方医に連絡する。一方、潜在的リスク事象については、発現する可能性があるという認識で患者を観察する。重要な不足情報については、収集対象の不足情報をどのような方法で収集するのかを知り、製造販売後調査を支援する。

 また、リスク最小化計画の一環として、企業が医療者や患者向けの情報提供資材を作成するので、それを入手して患者指導に利用する。


14年4月、日本病院薬剤師会は学術委員会に第7小委員会を設置し、RMPに薬剤師がどう関与するかを検討する課題研究「病院薬剤師の製造販売後医薬品リスク管理計画に向けた取り組み」を開始した。また、14年12月開催の第35回日本臨床薬理学会(愛媛県)においても、シンポジウム「医薬品リスク管理計画(RMP)における製薬会社と医療施設の連携に必要なことは?」が予定されている。

 制度ができ、行政から通知されても、それだけでは現場は動けないし、動かない。また、収集されたデータの正確性と信頼性の保証も重要である。RMPの必要性を十分に認識し、規制当局、製薬企業、そして医療機関が協力して、効果的に実施できる体制構築に取り組むことを望む。

(山口大学医学部附属病院薬剤部、\臨床研究センター・古川 裕之氏)

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