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「口が乾く」は 薬局で解決!
日経DI2014年6月号

2014/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年6月号 No.200

 2014年4月の調剤報酬改定では、服薬状況や残薬の有無などについて、調剤に取り掛かる前に患者に確認するよう規定された。これまで以上に、薬歴管理や患者への聞き取りの重要性が増したわけだ。

 確認すべき項目には、「副作用症状のチェック」も含まれる。そして多くの薬剤に共通する副作用の一つに、「口の乾き」「口腔乾燥」がある。

実は加齢のせいではない

 九州歯科大学附属病院病院長の柿木保明氏によると、口腔乾燥を自覚している65歳以上の高齢者は55~60%に上る。「“年だから仕方ない”とあきらめてしまいがちだが、それは大きな誤解」と柿木氏は指摘する。

九州歯科大学の柿木保明氏は、「薬による口腔乾燥が疑われたら、薬局で服用薬を整理し、主治医に情報提供をしてほしい」と話す。

 通常、唾液は1日1.0~1.5L分泌される。唾液分泌を担うのは、耳下腺、舌下腺、顎下腺からなる大唾液腺(図A)と、口唇や口蓋にある小唾液腺だ。一般に、小唾液腺の機能は加齢に伴い低下するが、大唾液腺の機能は保持されるといわれている。「唾液の9割は大唾液腺で分泌されることから、加齢が口腔乾燥の直接的な要因とは考えにくい」(柿木氏)。

 では一体、口腔乾燥の原因は何か。よく知られているのは、シェーグレン症候群やストレスなどの疾患。だが、「最も頻度が高いのは、薬剤による唾液分泌障害ではないか」と柿木氏は推測する(図1)。

図1 口腔乾燥の原因(取材を基に編集部まとめ)

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 実際、口渇や口腔乾燥を引き起こす可能性のある薬剤は非常に多い(表1)。代表的なのは、抗コリン作用を持つ向精神薬や排尿障害治療薬、抗アレルギー薬など。抗コリン薬は、腺分泌促進作用を持つムスカリンM3受容体を阻害するため、高頻度で唾液分泌を低下させると考えられている。

表1 添付文書に口腔乾燥に関連する副作用が挙げられている薬剤の例

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 また、降圧薬の服用などで浮腫を来している患者では、舌がむくんで動かしにくくなるために、唾液を十分に口腔粘膜へ行き渡らせることができない。あるいは、抗精神病薬や抗パーキンソン病薬は、口唇ジスキネジア(口をもぐもぐさせたり歯を食いしばったりするなどの不随意運動)の副作用が生じることがある。これらが唾液の粘性を高め、口腔内の不快感や乾燥感につながっていることもあるという。「唾液を飲み込む回数が減ると、物理的刺激による唾液分泌も抑制され、悪循環に陥ってしまう」と、柿木氏は説明する。

全身合併症を招く恐れも

 口腔乾燥は、重症化すると、話しにくくなったり食べ物が飲み込みにくくなったりするなど、患者のQOLを著しく低下させる。また、舌痛や虫歯、歯周病、カンジダ症などの二次的な口腔内トラブルを引き起こすこともある。

 ウエルシア関東調剤介護本部広報担当部長で歯科医師の大西孝宣氏は、「乾燥した痰や食物残渣が気管に付着して、誤嚥性肺炎を引き起こす恐れもある」と指摘する。  それゆえ薬局では、口腔乾燥の患者を早期に見つけ出し、対処していくことが求められる。

 「特別な検査を行わなくても、薬局窓口での積極的な聞き取りによって、口腔乾燥を発見できる」と話すのは、北里大学薬学部臨床薬学教授の吉山友二氏。口腔乾燥の患者が訴える自覚症状は、「口が乾く」「水をよく飲む」「味が分かりにくい」「口臭が気になる」など多岐にわたる(表2)。吉山氏らは、保険薬局に来局した高齢者を対象に、これらの自覚症状について聞き取り調査を行うと同時に、口腔乾燥の客観的な評価方法である唾液湿潤度試験を行った。その結果、自覚症状が「時々・少しある」「いつもある」と答えた患者は、「ない」と答えた患者に比べて、口腔内湿潤度が有意に低いことが示された。

表2 口腔乾燥の自覚症状(取材を基にまとめ)

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服薬開始から数年後に発症

 口腔乾燥症状があることが分かったら、次は、口渇や口腔乾燥を引き起こす可能性のある薬剤を服用しているかどうかを確認。薬剤の関与が疑われれば、処方変更の提案を検討する。

 柿木氏によると、特に口腔乾燥のリスクを高めるのは、長期間の服薬と多剤併用。「数年間問題なく服用していても、加齢による薬の効き目や生理機能の変化がきっかけとなって、口腔乾燥を発症するケースもある」(柿木氏)。

 しかし、この部分は医師の理解を得にくい点でもあるという。

 「特に長期にわたって処方されている降圧薬などは、患者に合ったものが選択されており、変更されにくい。まずは、口腔乾燥のリスクが高く、比較的中止しやすいと思われる頓用の睡眠薬や抗不安薬を整理してみてほしい」と柿木氏はアドバイスする。

 なお、高血糖や電解質異常などの副作用によって、二次的に口渇が表れている可能性も念頭に置かなければならない。一般用医薬品の服用歴も忘れずに確認したい。大西氏は、「特に関節リウマチの患者で、口渇だけでなく、『目が乾いて目薬が手放せない』という訴えがある場合は、シェーグレン症候群の可能性があるので医師に相談するよう促すべき」と指摘する。

マッサージやケア用品も有効

 薬剤による口腔乾燥には、患者自身によるセルフケアも有効だ(図2)。

図2 口腔乾燥のセルフケアの指導のポイントと注意点(取材を基に編集部まとめ)

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 まず勧めたいのは、唾液分泌を促す唾液腺のマッサージ。大唾液腺を人差し指と中指の腹で5~10回優しく押す。「舌下腺は、親指を使ってやや強めに押すのがポイント」と大西氏。

 口腔ケア用品をそろえておくのも一手だ(写真1)。口腔乾燥の患者向けに、湿潤成分を配合した洗口液やスプレー、ジェルなど、様々な形態の製品がある。選ぶポイントとして大西氏は、「刺激成分が唾液分泌を抑制する可能性があるので、洗口液はノンアルコールタイプのものを薦めたい」と話す。また柿木氏によると、液状の湿潤剤で口腔粘膜を潤した後、蒸発を防ぐためにジェルを塗布すると効果的だそうだ。

写真1 口腔乾燥に用いられる口腔ケア用品の例

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 薬剤だけでなく、いびきや室内の乾燥などが関与している可能性もあるので、生活習慣や居住環境を確認し、改善策を提案することも欠かせない。

 ちなみに、水分の摂取やうがい、ガムやあめ、レモン水や梅干しなどの酸っぱい食品にも、一時的に唾液分泌を促す効果があるとされているが、「慢性化していたり唾液分泌が完全に抑制されている場合、効果は限定的」(柿木氏)だという。改善しないからといって、過剰に行うことは禁物だ。

歯科との連携も忘れずに

 セルフケアや口腔ケア用品で改善しない場合は、歯科の受診を勧めよう。近年、歯科医師の間でも口腔乾燥への認知度は高まっており、「口のかわき外来」「ドライマウス外来」といった専門外来を設ける病院も増えている。口腔乾燥の治療には、漢方薬がよく用いられる(表3)。

表3 口腔乾燥に使用される主な漢方薬(柿木氏への取材を基に編集部まとめ)

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 また、歯科医師と歯科衛生士を中心に約4200人の会員を持つドライマウス研究会(代表:鶴見大学歯学部教授の斎藤一郎氏)は、講習を受けた医療従事者のリストをウェブサイトで公開しているので、患者に歯科受診を勧める際の参考にしたい。

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