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徹底マスター 薬の相互作用としくみ
協力作用が心血管系に影響、SNS刺激作用を持つ食品も
日経DI2014年6月号

2014/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年6月号 No.200

嶋本豊、杉山正康 杉山薬局(山口県萩市)

 自律神経は、交感神経系(SNS)と副交感神経系に分けられる。両者は標的臓器で互いに拮抗する作用を示しながら、循環、呼吸、消化、分泌、体温調節など、生命維持に不可欠な自律機能の調節を担っている。

 交感神経終末では神経伝達物質のノルアドレナリン(NAd)が遊離し、興奮を伝える。SNS受容体であるα受容体やβ受容体にNAdが結合することで、多彩な作用が表れる(表1)。

表1 交感神経受容体の分類と主な作用

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刺激薬と遮断薬に大別

 SNSに作用する薬剤(SNS用薬)は、刺激薬と遮断薬に分けられる(表2)。

表2 SNSに作用する主な薬剤・食品・嗜好品

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 α1刺激薬は血管収縮作用を示し、片頭痛、鼻閉、結膜充血、膀胱括約筋収縮不全の治療や、昇圧薬、散瞳薬として用いられる。α2刺激薬はNAd遊離抑制に働くため、中枢性降圧薬として使用される。β1刺激薬は心不全や徐脈に対する強心薬、β2刺激薬は気管支拡張薬、β3刺激薬は過活動膀胱治療薬として用いられる。

 一方、α1遮断薬は高血圧や末梢循環不全、前立腺肥大、β1遮断薬とα1β遮断薬は高血圧や狭心症、不整脈の治療に用いられる。このうち、内因性交感神経刺激作用(ISA、β遮断薬がβ受容体を刺激する作用)のない薬剤は慢性心不全にも使用される。

 同じ分類のSNS用薬同士を併用すると、これらの薬理作用が増強する。特に心血管系への影響は、極めて重要な問題となる(表3)。

表3 SNS用薬が関与する薬力学的相互作用

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SNS用薬の協力作用

(1)SNS刺激または遮断の協力
 SNS刺激薬同士を併用すると高血圧や頻脈などが(ケース1)、SNS遮断薬同士を併用すると低血圧や徐脈などが表れやすくなる。特にカテコールアミン(CA)やエフェドリンの重複投与は、相乗的なSNS刺激による重篤な副作用の恐れがある(併用禁忌)。

 また抗うつ薬、レボドパ(商品名ドパストン、ドパゾール)、漢方薬に含まれるマオウなどのSNS刺激作用や、抗精神病薬、麦角系薬、チザニジン塩酸塩(テルネリン他)などのSNS遮断作用にも留意する(ケース2、ケース3)。

(2)CA感受性の増大
 NAd再取り込み阻害作用のある抗うつ薬を服用中は、α2、β受容体が減少し、α1受容体の感受性が増大する。そのため、これらの抗うつ薬を服用中の患者にα1刺激薬や遮断薬を投与すると、薬効が増強する可能性がある。三環系や四環系抗うつ薬はシナプス間隙のNAd増大を介してSNSを刺激する作用も持つため、投与時は血圧や心機能の変動に注意する。

 吸入麻酔薬(ハロタン[フローセン])と甲状腺ホルモン製剤は、それぞれ心筋cAMP生成系の賦活作用とβ受容体増加作用を有し、心筋のCAの感受性を著しく上昇させる。従って、これらを服用中の患者にSNS刺激薬を投与すると、心機能が著しく亢進することがある。特に、CAやエフェドリンでは、頻脈や心室細動などの恐れがある。

 レセルピンも、CAの感受性を増大させる。レセルピン服用患者がISAを有するβ遮断薬を併用すると、ISAによる交感神経刺激作用が強く表れ、β遮断による徐脈作用が消失して心拍数が著しく増加することがある。レセルピン服用患者にはISAのないβ遮断薬を投与すれば問題ないと考えられる。

 また、メチルフェニデート(コンサータ、リタリン)は中枢神経系(CNS)に作用し、NAdやドパミンの遊離を促進してシナプス内のCA量を増加させるとともに、CA感受性を増大させてSNSを刺激する。このため、SNS刺激薬やNAd再取り込み阻害作用を持つ薬剤などと併用すると、血圧や心拍数が著しく増加する可能性がある。特にB型モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害薬との併用は禁忌である。

SNS用薬の拮抗作用

(1)SNS刺激と遮断の拮抗
 SNS刺激薬と遮断薬の併用は、相互に作用を減弱させるため、基本的に避ける。チラミン含有食品の過剰摂取や長期大量飲酒、喫煙、高温入浴などにもSNS刺激作用がある。そのため、特に降圧薬や狭心症治療薬を服用中の患者には、これらの嗜好品や生活習慣が血圧上昇や頻脈などを招く恐れがあることを説明しておく(ケース3)。

(2)逆転作用
 α1遮断作用を有する薬剤による低血圧に対して、αよりもβ受容体に強く作用するアドレナリン(Ad:ボスミン他)を用いると、血管拡張などのβ刺激作用が優位となり、血圧が低下することがある(併用禁忌)。このような場合には、Adの代わりにβ作用の弱いNAdやフェニレフリン(α1刺激薬)を使用する。Adは歯科用の局所麻酔薬に配合されているため、キナゾリン系薬、フェノチアジン系薬、ブチロフェノン系薬、非定型抗精神病薬を服用中の患者には、歯科受診時はお薬手帳を見せるよう説明しておく(ケース2)。

 一方、β1/β2遮断薬のプロプラノロール塩酸塩(インデラル他)を服用中の患者に、外科手術や蕁麻疹のためにAdを投与すると、Adがα受容体に強く作用し、血圧が著しく上昇したり、反射性の徐脈を来したりする場合がある。

(3)リバウンド現象
 β遮断薬とα2刺激薬のクロニジン塩酸塩(カタプレス)の併用時に、クロニジンを中止したり飲み忘れたりすると、α2刺激により遊離が抑制されていたNAdが、反動(リバウンド)によって急激に遊離し、α1作用が著しく増強することがある。この場合、先にβ遮断薬を中止し、数日間経過を観察した後にクロニジンを中止する必要がある。

 以下に、当薬局における服薬指導の実践例を示す。

 Aさんに、α/β刺激薬のメチルエフェドリンを含有するフスコデ(一般名ジヒドロコデインリン酸塩・dl-メチルエフェドリン塩酸塩・クロルフェニラミンマレイン酸塩)と、β2刺激薬のベラチン(ツロブテロール塩酸塩)を含む混合液剤が処方された。SNS刺激薬の相互の併用により、不整脈、動悸、振戦などが表れる恐れがある。処方医は、副作用を回避するために小児用ベラチンを使用したと考えられるが、念のため疑義照会を行った。

 その結果、Aさんの咳は極めてひどいため、処方通りの薬を交付するよう指示があった。そこで薬剤師はAさんに、液剤には、神経に働いて気管支を広げて咳を鎮める成分が2種類含まれていること、それらによって心拍数が増加したり手が震えたりする可能性もあることを説明し、そのような症状が見られたら、直ちに服用を中止して受診するよう伝えた。さらに、用法・用量を厳守し、決して他人には飲ませないように指導した。数カ月後、来局したAさんに確認したところ、副作用は表れなかったとのことだった。

 Bさんは前立腺肥大症と高血圧のため、4~5年前からα1遮断薬のハルナール(タムスロシン塩酸塩)とカルシウム拮抗薬のアムロジピンベシル酸塩を服用していたが、妄想や幻覚などの症状が出現したためセロクエル(クエチアピンフマル酸塩)が処方された。

 セロクエルはα1遮断作用を持つため、ハルナールとの協力作用により、アムロジピンの降圧効果を更に増強させる可能性がある。

 薬剤師はBさんに、気分を落ち着かせる薬が追加されたと説明し、併用により降圧薬の作用が強まる可能性があることを伝えた。Bさんは家庭血圧を測定していなかったため、起床時にはゆっくり起き上がること、座った状態から急に立ち上がらないことを指導するとともに、立ちくらみやふらつき、めまいなど、普段と異なる症状が表れた場合は直ちに受診するように伝えた。

 2週間後の再診時までにこれらの症状は認められず、血圧も正常だったため、以降セロクエルは徐々に増量され、現在は1日2錠(朝夕食後)を服用中である。精神症状は安定しており、低血圧や立ちくらみなどの異常も認められていない。Bさんには、抜歯時に使用する局所麻酔薬はセロクエルと併用できない場合があることを説明し、歯科受診時にはお薬手帳を必ず見せるように伝えている。

 Cさんは狭心症と高血圧のため、数年前からβ遮断薬のテノーミン(アテノロール)とノルバスク(アムロジピンベシル酸塩)を服用中であり、良好な血圧コントロールが得られていた。

 担当薬剤師は、SNSを刺激すると血管が縮まったり心拍数が増えたりして血圧が上昇することを説明し、SNS刺激作用を持つマオウ含有漢方薬(葛根湯、麻黄湯、小青竜湯など)の使用時には相談するよう伝えていた。また、チラミン含有食品の過剰摂取や長期大量飲酒、喫煙、過食を避けること、ストレスをためないこと、入浴の際は37~40℃のぬるめのお湯に浸かること、冬には防寒対策を取ることなど、生活習慣指導も日ごろから行っていた。

 今回、Cさんには強い肩凝りと頭痛のため、テルネリン(チザニジン塩酸塩)が処方された。テルネリンにはα2刺激を介したNAd遊離抑制作用があるため、降圧薬の作用が増強すると考えられる。そのためCさんには、低血圧や徐脈、ふらつき、動悸、火照りなどが表れる可能性があることを説明し、家庭血圧の測定を続けるように指導した。

 1週間後に来局したCさんは、少し眠気はあるものの血圧や脈拍数は正常範囲にあり、肩凝りが改善したと喜んでいた。その後も肩凝りがある際にはテルネリンが頓用で処方されているが、異常は認められていない

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