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DIクイズ1(A)
DIクイズ1:(A)Ca拮抗薬で咳が悪化した理由
日経DI2014年6月号

2014/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年6月号 No.200

出題と解答 :堀淵 浩二
(クオール株式会社[東京都港区]西日本事業本部)

A1

カルシウム拮抗薬は、血管平滑筋弛緩作用に加え、下部食道括約筋(LES)の収縮を抑制する作用も持つ。Uさんは背景に逆流性食道炎があることから、LES圧の低下により胃酸逆流を引き起こし、咳が誘発されたと考えられる。

 胃食道逆流症(GERD)は、胃酸を含む胃内容物の逆流によって、不快な症状や合併症を起こした状態を指す。胸焼けや呑酸といった典型的な食道症状のほか、喉の違和感、嗄声、咳など様々な食道外症状を呈する。GERDの中でも上部消化管内視鏡検査で食道炎所見が認められるものを逆流性食道炎と呼び、食道炎所見が認められない非びらん性胃食道逆流症(NERD)と区別することもある。

 GERDによる咳はしばしば問題になる。欧米では、慢性咳嗽の3大要因は咳喘息、後鼻漏、GERDといわれている。胃酸が下部食道の迷走神経受容体を刺激し、反射性に下気道に刺激が伝わる機序や、逆流した胃内容物が咽喉頭に到達し、下気道を直接刺激する機序によって、咳が誘発されると考えられている。

 GERDにおいて胃酸が逆流する主なメカニズムには、(1)一過性の下部食道括約筋(LES)弛緩、(2)食道穿孔ヘルニアなどによるLES圧の低下、(3)妊娠や肥満、前かがみ姿勢などによる腹圧の上昇─があるが、大半は一過性LES弛緩に起因するとされる。一過性LES弛緩は、胃底部の伸展刺激などによって、嚥下の有無にかかわらず一時的にLESが弛緩する病態であり、過食や早食い、高脂肪食摂取によって生じやすい。

 胃酸逆流は、薬剤によって引き起こされることもある(表)。カルシウム(Ca)拮抗薬や亜硝酸薬は、平滑筋の収縮抑制を介してLES圧の低下を来すのに対し、抗コリン薬や麻薬などは消化管運動を抑制して腹圧を上昇させる。Ca拮抗薬のニフェジピン(商品名アダラート、セパミット-R他)に関しては、重症の逆流性食道炎患者において、食道内の胃酸曝露時間を有意に増加させるとの報告もある。

表 胃酸逆流を招くリスクがある薬剤3)

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 Uさんは背景に逆流性食道炎があるほか、ニフェジピンの服用により咳が出やすくなったと訴えている。このため、医師はニフェジピンによるLES圧の低下と逆流性食道炎の悪化を疑い、降圧薬をアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)のカンデサルタン シレキセチル(ブロプレス)に変更するとともに、プロトンポンプ阻害薬(PPI)のラベプラゾールナトリウム(パリエット他)を処方したと考えられる。

 通常、PPIの服用により、胸焼けなどの食道症状は数日で改善するが、咳の消失には2~3カ月を要する場合もある。前かがみの姿勢や過食を避けるといった注意点も、併せて指導するといいだろう。

 なお、咳を誘発する降圧薬としては、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬がよく知られている。これは、ACE阻害薬によってブラジキニンの不活性化が阻害され、ブラジキニンが神経線維のC線維を刺激し、サブスタンスPなどの咳を誘発する物質が遊離するためと考えられている。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 逆流性食道炎は、胃酸が食道の方まで逆流してしまう病気です。胃酸が食道の粘膜や喉を刺激して、咳を起こすことはよくあります。

 通常、食道と胃のつなぎ目の筋肉はきゅっと締まっていて、胃酸の逆流を防いでいるのですが、つなぎ目の筋肉が弱まったり、食べ過ぎで胃が張ったりすると、胃酸が逆流しやすくなります。Uさんがこれまで服用されてきたお薬は、血管を緩めることで血圧を下げますが、食道の筋肉も緩めてしまうことがあります。先生はUさんのお話から、咳の原因が胃酸逆流にあるとお考えになって、血圧のお薬を食道に影響しないタイプに変えた上で、胃酸の量を抑えるお薬を出されたのでしょう。前かがみになったり、食べてすぐに横になったりすると、胃酸逆流が起きやすくなりますので注意してください。

参考文献
1)日本消化器病学会編『患者さんと家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイドブック』(南江堂、2010年)
2)臨床消化器内科2009;24:549-56.
3)成人病と生活習慣病2013;43:299-303.

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