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Dr.名郷が選ぶ 知っていてほしい注目論文
半年間の集中的な食事・運動指導は、緩徐な指導に比べて糖尿病の合併症予防に有効か?ほか
日経DI2014年6月号

2014/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年6月号 No.200

名郷直樹
武蔵国分寺公園クリニック(東京都国分寺市)院長

1986年自治医科大学医学部卒業。東京北社会保険病院(東京都北区)臨床研修センター長などを経て2011年に開業。エビデンスに基づく医療(EBM)の考え方を日本でいち早く取り入れ、普及に努めてきた。著書も多数。CMEC-TVでもEBM情報を配信中。

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 糖尿病において、薬剤による血糖の集中的なコントロールは患者の死亡率や低血糖発現率を高めることが知られている。以前本コラムでも、糖尿病の厳格治療が死亡率を高めた研究結果(ACCORD研究、2013年8月号)を紹介した。では、食事制限や運動療法であればどうか。それを調べた研究が今回の論文である。

 集中治療群は、最初の6カ月で週1回のカウンセリングを受け、1200~1800kcal/日のカロリー制限と週175分の運動が課され、体重を7%落とすように指導された。6カ月経過後も回数は減るもののカウンセリングが提供された。一方、対照群には、食事や運動に関する年3回のグループ教育と社会的支援が4年間行われた。

 1年後、差は顕著に出て、集中治療群では体重が8.6%減少したのに対し、対照群では0.7%の減少にとどまった。ところがこの差は徐々に小さくなり、平均追跡期間9.6年の研究終了時には、前者は6.0%減少、後者は3.5%減少と、かなり縮まってしまった(図1)。HbA1cも同様の傾向である(図2)。

表1 集中指導群と対照群におけるイベントの発生率とハザード比

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図1 両群における体重の推移

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図2 両群におけるHbA1cの推移

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 一次アウトカムである複合心血管イベントの発生率は変わらず、集中治療群1.83/100人年、対照群1.92/100人年で、ほぼ同等の結果に終わった。

 食事や運動に対する介入は、厳しく指導して目標に到達させたとしても、それを維持させることは難しく、患者ができる範囲で気長に取り組ませるのと長期的には変わらないというわけだ。

 ただ、食事制限や運動に意味がないと早合点すべきではない。これは、対照群もきちんと気長に治療を受けた結果である。食事制限も運動も、気負わず、無理せず、続けることが大事であることに変わりはない。患者さんにはこの論文を逆手に取って、次のようなアドバイスをしてはどうだろう。

 「糖尿病の食事・運動療法は、無理のない範囲で気長に継続することが重要です。最初から無理して頑張っても、気長に継続する人と比べて、糖尿病の合併症になる頻度は変わらないという研究結果が出ています」

 厳しい食事制限や運動プログラムを課して途中で脱落されるよりは、こちらの方が実践的ではないだろうか。

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 こちらの研究も、厳格な治療と緩徐な治療を比較した日本人の試験結果である。冠動脈疾患のある人の血圧と脂質を主に薬物を用いて厳格に下げることで、どれだけ血管系イベントなどの再発が予防できるかを調べた。

表2 脂質や血圧の厳格治療群と対照群における血管系複合アウトカムの発生率とハザード比

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 厳格治療群では、収縮期血圧を120mmHg未満、LDLコレステロールを80mg/dL未満を目標とし、それぞれ140mmHg未満、100mg/dL未満を目標とする標準治療と比較した。その結果、有意差はないものの厳格治療群で患者に不利益を生じる傾向が見られたというものである。

 糖尿病治療に限らず、冠動脈疾患および脂質異常症と高血圧の合併例でも厳格な治療が有害である可能性が日本人で示されたわけで、大変興味深い。しかも、一般に再発防止のための治療(2次予防)はハイリスク患者が対象になるため、1次予防に比べて薬物療法の効果が表れやすいが、それでも標準的な治療を上回る効果が得られなかったのは驚きである。これが1次予防の投薬を対象にしていたら、どのような結果になっただろうか。

 今回は脂質と血圧を両方とも厳格に下げているので、どちらを下げたことが結果に影響したのかは不明だ。脂質には厳格な治療の有効性を示す研究結果が幾つか出ているため、血圧の過度な低下がより影響を及ぼしているのかもしれないが、よく分からない。

 ともあれ、食事・運動療法も薬物療法も、ほどほどが一番いいようである。

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