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DIクイズ5(A)
DIクイズ5:(A)胃瘻患者にアボルブが処方されたら
日経DI2014年5月号

2014/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年5月号 No.199

出題と解答 : 今泉 真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤科)

A1

約6カ月後

A2

(2)長男の妻(40歳)、(3)Aさんの孫(10歳、男性)

 前立腺は男性特有の臓器で、膀胱に続く尿道を取り巻くように存在している。高齢化とともに肥大すると膀胱や尿道が圧迫され、尿の勢いがなくなる、排尿の回数が増える(頻尿)、排尿に時間が掛かる、残尿感がある─などの症状が出やすい。高齢になるにつれて前立腺肥大症の有病率は増加し、80歳代では80%の男性が何らかの排尿トラブルを自覚しているといわれている。

 「前立腺肥大症の数値が高くなっている」というのは、恐らく前立腺特異抗原(PSA)のことだと考えられる。PSAは前立腺細胞で特異的に産生される蛋白質で、前立腺肥大症や前立腺癌、前立腺炎などによって数値が上昇する。

 軽症患者では生活指導だけで排尿状態が改善する可能性もあるため、まずは経過観察の措置が取られやすい。患者が治療を希望したり、医師が治療を要すると判断した場合には、薬物療法として(1)α遮断薬、(2)5α還元酵素阻害薬、(3)抗男性ホルモン薬、(4)その他(植物エキス製剤、アミノ酸製剤、漢方薬など)─が用いられる1)

 一般に、前立腺平滑筋の緊張による機能的閉塞には、第一選択薬としてα1受容体遮断薬が用いられる。前立腺腫大(30mL以上が目安)が明らかな機械的閉塞の場合は5α還元酵素阻害薬の使用が考慮される。

 今回、Aさんに処方が追加されたデュタステリド(商品名アボルブ)は5α還元酵素阻害薬である。主に精巣で作られるテストステロンが5α還元酵素により、さらに活性の高いジヒドロテストステロンに変換される。増加したジヒドロテストステロンは前立腺の腺細胞や間質細胞に取り込まれて細胞内の核を刺激し、前立腺の成長と増殖を促す。

 デュタステリドは、ジヒドロテストステロンの産生を抑えることで肥大した前立腺を縮小させ、下部尿路症状を改善する。デュタステリド0.5mgを1日1回反復経口投与した実験では、投与6カ月後の血清中ジヒドロテストステロンの濃度は約90%減少、投与3カ月後の前立腺組織中のジヒドロテストステロン濃度はプラセボと比較して93%減少したという報告がある。

 なお、国内外の臨床試験では投与開始6カ月後から治療効果が認められており、治療効果を評価するには通常6カ月間は治療を継続する必要がある。

 また、デュタステリドは女性および小児への投与が禁忌となっている。これは、動物実験で雄胎児の外性器雌性化が認められたことや、妊婦への暴露により血中ジヒドロテストステロンが低下し、男子胎児の外性器の発達を阻害する可能性があることが指摘されているためである。同薬は経皮吸収されるため、女性や小児はカプセルから漏れた薬剤に直接触れないよう注意しなければならない。

 Aさんのように、胃瘻部分から薬剤を注入する必要がある場合、カプセルの中身を出してチューブを通さなければならない。アボルブカプセルは中身が液状なので、手などの皮膚に触れないように注意する。万が一触れた場合には、直ちに石鹸と水で洗い流すように伝えなければならない。

こんな服薬指導を

イラスト:YAB

 アボルブというお薬には、男性ホルモンの活性を抑えることで、前立腺が大きくなるのを防ぐ働きがあります。効果が表れるまでに6カ月ほど掛かりますので、じっくり治療に取り組んでいく必要があります。Aさんにはカプセルの中身の液体を出して、胃瘻の部分から入れてください。

 なお、このお薬は女性やお子さんに対する安全性が確認されておりません。お薬は皮膚からも吸収されることが分かっていますので、胃瘻に入れる時は手袋を付けて行うと良いでしょう。特にお子さんが中身に触れないように気を付けてください。触ってしまった場合には、石鹸と水でよく洗い流してください。

参考文献
1)日本泌尿器科学会「前立腺肥大症診療ガイドライン」(2011)

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