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特集:調剤報酬改定2014のインパクト
点数詳説と影響度
日経DI2014年5月号

2014/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年5月号 No.199

 薬局へのバッシングが吹き荒れる中で行われた今改定。調剤基本料の特例に該当するような大規模門前薬局は問答無用で減収となり、中小規模薬局にも相応の努力を求める内容となった。

 「改定内容から、薬局の役割を正そうとする厚労省の強い意志を感じる」とは、ある大手チェーン薬局の幹部。方向性は予想通りだったとはいえ、設定されたハードルの高さに、想定外の苦戦を強いられている薬局も多い。

24時間開局は増加?

 改定の内容を点数別に見ていこう。調剤基本料は41点(特例25点)と、消費増税対応分として1点引き上げられた。ところが、特例の施設基準に「処方箋受付回数2500回超/月かつ集中率90%超」が追加され(図1の赤い部分)、該当すれば改定前の40点から25点と、ー15点の大きな減算となる。

図1 調剤基本料のイメージ

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表5 基準調剤加算の主な算定要件

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 厚労省保険局医療課によると、この新たな特例に該当するのは、全薬局数の約3%。患者数の多い診療所や中小病院の門前にあり、安定した収益を上げていた薬局を直撃した格好だ。日本調剤取締役の小柳利幸氏が言うように、これまで安定的に経営してきた“稼ぎ頭”が打撃を受ける。どうやら、門前に店舗を構えるだけでは高い収益を上げられなくなる時代が、意外と早く到来するのかもしれない。

 この新たな特例点数に該当する薬局が減算を免れるための要件として、24時間開局が注目を集めている。

 24時間開局とは、365日年中無休の開局を意味する。夜間や休日は、セキュリティの観点から時間外専用の窓口などでの対応で構わないが、薬剤師が当直するなどして直ちに調剤できる体制を求めている。

 長野県上田市のイイジマ薬局や木町薬局は、特例の薬局ではないが、自主的に「24時間開局」を実践してきた(写真1)。「急を要さない場合の処方箋は『処方箋預かり箱』で対応しているので、実際に時間外に応対するのは一晩で3~4人ぐらい。“コンビニ受診”の感覚で来局する患者はいない」(イイジマ薬局の飯島康典氏)という。

写真1 薬局における夜間窓口の例

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 では、24時間開局の薬局は今後増えるのか。Part1で紹介した大手チェーン薬局幹部へのインタビューなどを総合すると、急増することはなさそうだ。

 最も大きな理由は人手不足。また、夜間窓口や当直室、防犯カメラなどの設備費用、当直者の人件費なども、実施を足踏みさせる要因だ。ある大手チェーン薬局経営者は、「大規模門前薬局でも、24時間開局を行うとなかなか採算が合わない。よほど処方箋枚数が見込めるところでなければ、実施するところは出てこないだろう」と見る。

 ただし、医療機関の動向に注意が必要だ。医科点数に新設された地域包括診療料に、「24時間開局の薬局との連携」という要件が盛り込まれた。この点数を算定する200床未満の病院が院外処方を行う場合、24時間開局する薬局がその処方箋を応需する必要がある(表6)。

表6 医科点数の地域包括診療料と地域包括診療加算の概要(編集部まとめ)

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 地域包括診療料は要件が厳しく、算定する病院は今のところ多くないようだが、次期改定で要件が緩和されれば、より多くの医療機関が薬局の24時間開局を求める可能性もある。

基準調剤加算で増収も

 大規模門前薬局にとって厳しい改定であることは、基準調剤加算の施設基準からもうかがえる。

 調剤基本料の特例に該当する薬局では、基準調剤加算を原則算定できなくなった。特に、新設された特例(受付回数2500回超/月かつ集中率90%超)に該当する薬局では、調剤基本料の引き下げも重なりダブルパンチだ。

 基準調剤加算の要件も引き上げられた。まず、24時間の調剤体制を求めた点だ。これは「24時間開局」ほど厳しくはないが、全ての患者に時間外の連絡先電話番号を文書で周知し、必要があれば速やかに薬局に出向き調剤することが求められる。加算1では近隣の薬局(自薬局含め10未満)と連携してもOKだが、同加算2では自薬局単独での対応が必要となる。

 改定前の基準調剤加算の施設基準では、24時間の調剤体制で連携する薬局数を定めていなかったため、自薬局の当番がほとんど回ってこないケースもあり得た。だが、「時間外にもきちんと対応する薬局を評価する観点から、自薬局含め10薬局未満という条件を入れた」と厚労省は説明する。

 在宅の実績が基準調剤加算の要件に盛り込まれたのも大きい。加算2では、在宅患者訪問薬剤管理指導料または居宅療養管理指導費、介護予防居宅療養管理指導費の過去1年間の算定回数が10回以上であることを求めた。医師の指示書などがあって在宅業務を実施したものの、算定していないケースも実施回数に含めてかまわない。年10回とは、2~3人の患者の在宅業務ですぐ到達する数だ。

 それでも、加算2の算定ができなくなる薬局が続出している。在宅業務を軽視してきた薬局に、厚労省はメスを入れたとも取れる。

 一方、これまでに在宅業務の実績がある薬局では、備蓄品目数を追加することで加算1または2を算定でき、大幅な増収になるところも出ている。

 薬剤服用歴管理指導料は、お薬手帳の運用と、調剤前の手順という2つの点で変更が加えられ、点数の変更以上に、業務フローへの影響が大きく、現場が翻弄された改定となった。

 まずは前者から説明しよう。薬歴管理料の点数は、従来の41点に加え、特例の34点が新設された。患者のお薬手帳を確認し、適切に服薬管理指導を行った場合には41点を算定できるが、お薬手帳に薬剤師が必要事項を直接記入(貼付)せず、お薬手帳に貼るシールのみを患者に渡した場合には34点を算定することになった。

 ここで問題となるのが、手帳を持参しなかった患者への対応だ。手帳を忘れた患者に新しい手帳を交付する方針の薬局は多いようだが、毎回忘れてくる患者にその都度新規発行するのが適切かどうかは、意見が分かれる。少なくとも、手帳を新規に発行した際には手帳の意義をきちんと説明し、持参率を上げる努力が必要となりそうだ。

 ぼうしや調剤薬局本町店(兵庫県姫路市)の薬剤師の大音文子氏は、「手帳を使うメリットを患者に実感してもらうことが大事」と話す。同店では従来、手帳を基に、新たに交付する薬剤との相互作用や重複投薬の有無、注意すべき併用薬などを確認した旨を、患者に丁寧に説明してきた。さらに、スタッフ全員が手帳の意義を説明できるようにするのが重要との考えで、同店ではスタッフ同士でロールプレイをし、説明の仕方を練習してきた。こうした地道な取り組みを続けてきたことで、手帳の持参率は7~8割を維持している。

 また、エルム調剤薬局名取店(宮城県名取市)では、2年前から家に手帳を忘れた患者にシールだけ渡す場合、台紙を付けて配布してきた(写真2)。台紙は複数種類あり、手帳を携帯する意義などが書かれている。台紙の色を黄色にしているのは、薬剤情報提供文書などの紙とまぎれないようにするためだ。さらに、診察券や保険証などが挟めるポケット付きのカバーには、多彩なデザインの表紙を付けて無料で配布している。

写真2 お薬手帳の持参率アップの取り組み(エルム調剤薬局名取店による)

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手帳を忘れた患者に渡すシールは、黄色の台紙に、裏紙が付いた状態で貼っている(写真上)。診察券や保険証なども挟める手帳カバーは6種類(下)。実務実習生がデザインしたものも。

 お薬手帳の意義は医師にも浸透しつつある。大田医院(兵庫県姫路市)院長の大田真路氏も手帳を活用している一人。「お薬手帳は処方を行う上で欠かせないもの。姫路市内の病院の救急外来などではお薬手帳の持参を広く呼び掛けるようになっている」と語る。

 折しも、医科点数の地域包括診療料や同加算の算定要件として、院外処方を行う際には薬局によるお薬手帳の一元管理が求められる内容となった(表6)。担当医はお薬手帳のコピーをカルテに貼る必要があり、薬局は責任重大だ。新規発行を繰り返して、手帳を一冊にまとめないなど、ずさんに管理していた場合は、担当医から思わぬ叱責を受けるかもしれない。

残薬や後発品は事前確認

 薬歴管理料のもう一つの変更点は、服薬状況、残薬の有無、後発品調剤の意向などを、薬を取り揃える前に行うようになったこと(図2、写真3)。改定前は努力義務だったが、義務となった形だ。

図2 服薬状況を確認するタイミング

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写真3 処方箋受け付け時の確認事項を周知するポスター(日本調剤による)

必要に応じて、受け付け周辺に掲示している。

 これに伴い、処方箋受付時、つまり調剤前に薬歴などを確認しなければならなくなるため、薬局内の動線を見直す薬局もある。大阪府内に3店舗の薬局を経営する、グリーンメディック(大阪府豊中市)代表取締役の多田耕三氏は「5月にも一つの店舗でカウンター部分の改装を検討している」と話す。受付時の確認を行うスペースを広く確保するなどして、患者の流れを整理するのが狙いだ。

 また、iPadを使った、患者の薬歴をどこでも確認できるシステムを導入する薬局もある。iPadを活用したシステムを開発しているグッドサイクルシステム(東京都渋谷区)によると、2014年3月時点で、同社のiPadのシステムを750店舗が導入。毎月50店舗のペースで導入先が増えているという。

 代表取締役の遠藤朝朗氏は「今夏には処方箋の2次元バーコードをiPadで読み取れる機能を追加する予定」と話す。この機能を用いれば、患者氏名を入力せずに、薬歴などを呼び出せる。

 このほか、飲み残しを患者が記載する用紙をレセコンで出力し、薬剤交付時に渡している薬局もある(写真4)。時間の掛かる確認作業を効率化するための一法だ。

写真4 次回来局時に残薬を申告(エルム調剤薬局名取店による)

調剤した薬剤の残薬を記入する用紙が発行されるレセコンもある。

 後発医薬品調剤体制加算は、算定要件の後発品比率(%)の計算方法が、「後発品の数量/(後発品のある先発品の数量+後発品の数量)」となり、55%以上65%未満で18点、65%以上で22点の2段階になった。

 薬局経営者らは、「今回の改定で一気にハードルが上がった」と言う。実質的に、旧指標で35%以上の加算3(19点:旧)を算定していた薬局でなければ、低い方の点数(18点:新)でさえほとんど算定できなくなるとみられる。算定に向けて努力する薬局と諦める薬局の二極化が顕著になるはずだ。

 もっとも、諦めるのは早いかもしれない。DPC病院の機能係数に「後発医薬品係数」が追加された。また、行政が医療機関への指導時に後発品への変更を指示するケースも出始めていると聞く。後発品を取り巻く環境は今後も大きく変わっていくと考えられる。

 また、後発品の普及に伴い、後発医薬品調剤体制加算がいつまで“単独”で存続するのかといったことに、関心を寄せている経営者もいる。今後は基準調剤加算への包括化も視野に入れた対応が必要になるかもしれない。

 なお、一般名で書かれた処方箋で先発品を調剤する場合、薬局が調剤報酬明細書(レセプト)にその理由を記載しなければならなくなった。具体的には(1)患者の意向、(2)保険薬局の備蓄、(3)後発医薬品の存否、(4)その他─のうちから主なものを1つ選ぶ。厚労省は、得られたデータを2年後の改定に用いるとみられる。

 在宅業務に関しては、同一建物以外に居住する患者に訪問薬剤管理指導を実施した場合、同指導料が500点から650点に引き上げられた。一方、同一建物に居住する患者では350点から300点にマイナスとなった。さらに、薬剤師1人について1日の算定回数が5回までに制限された。

 薬剤師の在宅業務は、介護保険の居宅管理指導費が算定されるケースが多いため、今改定の影響は少ない。介護報酬改定で同様の改定が予想される2015年度までに、その対応策を練っておく必要がありそうだ。

 それよりも、在宅訪問の手順が思わぬ形で影響を受ける。医師が同一建物居住患者を訪問した場合の在宅時医学総合管理料などの点数が新設され、同一日に2人以上の患者を診察した場合の点数が大幅に下がった(図3)。このため、施設の訪問日を分散したり、医師数を増やすなどの対策を取る医療機関が増えている。

図3 医科向け在宅関連点数の変更例

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 薬局にとっては、まとめて発行されていた処方箋が曜日ごとに分散し、業務フローを見直さざるを得ない状況だ。厚労省は、“効率的”に業務を行おうとする状況に歯止めをかけ、在宅医療の質を維持する方向に転換したわけだ。

 次期以降の改定では、調剤基本料の特例の範囲拡大や、後発品などの加算点数の包括化といった、技術料のさらなる引き締めが予想される。あらゆる事態を想定した薬局の運営体制を考えていかなければならない。

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