DI Onlineのロゴ画像

DIクイズ1(A)
DIクイズ1:(A)β遮断薬とβ刺激薬を併用するCOPD患者
日経DI2014年5月号

2014/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年5月号 No.199

出題と解答 :今泉 真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤科)

A1

(1)一部のβ遮断薬は、COPDへの投与は禁忌となっている。

A1

(2)一部のβ遮断薬は、COPDの予後を改善することが示されている。

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、たばこの煙などの有害物質に長期にわたって曝露されることで生じた肺の炎症性疾患であり、進行性で不可逆的な気流閉塞を示す。安定期のCOPDの治療には、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)や長時間作用型β2刺激薬(LABA)といった気管支拡張薬が用いられる。

 β受容体にはβ1、β2、β3の3つのサブタイプがある。それぞれ主に心臓、気道、脂肪細胞に存在し、β1は心機能促進性、β2は平滑筋弛緩性、β3は脂肪分解促進性に作用する。LABAはβ2受容体に結合し、アデニル酸シクラーゼを活性化してcAMPを増加させる。その結果、プロテインキナーゼAを活性化し、気管平滑筋を弛緩させる。

 一方、高血圧や狭心症などに用いられるβ遮断薬は、β1受容体を遮断し、カテコールアミンの作用を競合的に抑制することで心拍出量やレニン産生・分泌などを低下させ、降圧作用や心負荷軽減作用を示す。β遮断薬は、β1受容体への選択性やα遮断作用の有無、内因性交感神経刺激作用(ISA)などによって分類される。なお、2014年4月に改訂された『高血圧治療ガイドライン2014』(日本高血圧学会)では、β遮断薬は高血圧治療の第一選択薬ではなくなっている。

 従来、COPDに対するβ遮断薬の使用は回避される傾向にあった。β2受容体の遮断により、気道収縮を悪化させる恐れがあると考えられていたためである。しかし、現在までに、それを否定する内容の研究結果が数多く報告されている。

 1998年に報告された観察研究では、急性心筋梗塞を発症したCOPD患者4万2000人において、β遮断薬を使用した群は使用しなかった群に比べて、死亡率が40%低いことが判明した。また、高血圧を合併するCOPD患者を対象とした別の研究では、β遮断薬投与群はカルシウム拮抗薬投与群に比べて、有意に死亡率が低かったことも報告されている。

 さらに、1966~2010年の無作為化比較試験の結果を検証したコクラン・レビューでは、選択性β1遮断薬をCOPD患者に投与しても、プラセボに比べて1秒量(FEV1)や呼吸器症状に悪影響を及ぼさず、β2刺激薬によるFEV1改善効果も抑制しないことが報告されている。

 また、前述のガイドラインでも、COPDを有する高血圧患者へのβ遮断薬の使用に関して、「投与は可能であり、選択的β1遮断薬を使用する」と記載されている。

 β1遮断薬がCOPDに有効な理由として、COPDが心血管疾患のリスク因子であることや、β1遮断薬がβ2受容体のアップレギュレーションを介してβ2刺激薬の効果を高める可能性が指摘されている。

 Gさんに処方されているビソプロロールフマル酸塩(メインテート他)は、β1受容体への選択性が高く、ISAもない。気管支喘息や気管支痙攣の恐れがある患者には慎重投与となっているが、COPD患者への投与に関しては添付文書に記載はない。なお、非選択性β1遮断薬のナドロール(ナディック)はCOPDへの投与は禁忌である。また、LABAは高血圧を悪化させる恐れがあるため、家庭血圧の測定を勧めるなど、継続的なモニタリングも必要だろう。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 Gさんがお調べになった通り、セレベントはβ刺激薬、メインテートはβ遮断薬という種類です。どちらも細胞にあるβ受容体にくっ付いて、逆の作用を発揮します。

 ですが、β受容体には3つのタイプがあり、セレベントは気道にあるβ2受容体、メインテートは心臓にあるβ1受容体と、別の場所にあるβ受容体にくっ付き、お互いの作用には影響を与えにくいことが分かっています。また最近の研究で、心臓のお薬であるメインテートが、COPDにも良い効果をもたらすことも分かってきていますので、ご安心ください。この調子で、禁煙と服薬を続けていきましょう。

参考文献
THE LUNG perspectives.2011;19:461-5.
N Engl J Med.1998;339:489-97.

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ