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医師が語る 処方箋の裏側
抗てんかん薬クロナゼパムが著効する睡眠障害とは
日経DI2014年5月号

2014/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年5月号 No.199

 「夫の“寝ぼけ”がこのごろひどいんです。夜中に急に大声を上げたり、蹴ったり。昨晩なんか、いきなり顔を叩かれたんですよ!」。そう憤慨する奥さんに連れられて当院を受診した渡民夫さん(仮名、67歳)。ご本人も手や顔に傷があり、「いやな夢を見て、暴れてけがをしてしまった」と恐縮する。

 渡さんが罹患しているのは、睡眠障害の一種であるレム睡眠行動障害だ。レム睡眠とは、体は眠っているのに脳は活動している眠りで、通常は筋肉が弛緩するため夢を見ても体が動くことはない。しかし、レム睡眠行動障害の患者では、レム睡眠中に筋活動の抑制が起こらないため、夢の内容に呼応して体が動いてしまう。好発年齢は60歳以上で、圧倒的に男性に多い。

 治療に用いる薬剤の作用としては、暴力的な行動を引き起こす不快な夢を抑制するものが主体となっている。この作用を持つ“特効薬”が、ベンゾジアゼピン系抗てんかん薬のクロナゼパム(商品名ランドセン、リボトリール)だ。1日1回0.5~1.5mgを就寝前に服用することで、8割以上の人で数日内に、睡眠中の異常行動が生活上問題ないレベルにまで軽減する。クロナゼパムには抗不安作用や催眠作用もあるため、睡眠の質も改善する。

 ただし、クロナゼパムには筋弛緩作用があるため、筋力の低下した高齢者や、睡眠時無呼吸症候群の合併例には不向きだ。その場合、筋弛緩作用を持たないドパミンアゴニストであるプラミペキソール塩酸塩水和物(ビ・シフロール他)を少量から漸増する。他に、メラトニンや抑肝散を用いることもあるが、効果はクロナゼパムには及ばない。

 なお、レム睡眠行動障害の患者には飲酒習慣を持つ人が多い。飲酒は症状を悪化させるだけでなく、薬の副作用も誘発しやすい。副作用ばかり出て薬が効かないことにならないよう、薬局でも飲酒習慣を確認し、お酒を控えるよう指導してほしい。(談)

井上 雄一氏
Inoue Yuichi
睡眠総合ケアクリニック代々木(東京都渋谷区)理事長。1982年東京医科大学卒業。鳥取大学医学部付属病院講師、順天堂大学医学部精神医学講師、財団法人神経研究所研究部部長などを経て、2011年11月より現職。東京医科大学睡眠学講座教授。専門は睡眠学、自律神経学、臨床精神薬理学。

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