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社長はつらいよ
妥結率が低いのは誰のせい?!
日経DI2014年5月号

2014/05/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年5月号 No.199

 薬局を経営する“仲間たち”の間で卸のことが話題に上るようになったのは、昨年の暮れぐらいだった。みんなが「なんだか卸がおかしい」と口々に言い出した。卸の担当者が価格交渉に来ないというのだ。

 確かに、いつもであれば、「早く価格を決めてくれ」と騒がしい卸の面々が、一向に何も言って来ない。当社の実情を明かせば、4社の卸から医薬品を購入しているが、A社だけしかやって来ないのだ。しかも、あまり熱心とはいえない営業で、形だけの価格交渉をしてきた。「このぐらいの価格でどうですか?」「うーん、もう少し何とかならないの」。ここまではいつもと同じだが、その後が全く違うのだ。

 例年であれば、「他社から購入しているこの薬を、当社に変えてくれたら、もう少し考えます」とか、「この薬の売り上げが足りないので、こちらを何とかしてもらえれば、もう少し頑張ります」などと、あの手この手で攻めてきていた。こちらはこちらで「この価格では、お宅に頼めないなぁ」とか「この薬をお宅から買ったら、どのくらい値引きしてくれるの?」と応戦するのが常套手段だった。

 複数の卸と付き合っていれば、それぞれが他社を意識し、1円でも安くすることで採用してもらおうと考え、結果的に値が下がっていくものだ。「あっちの卸はもっと安いよ」。この言葉が、われわれの重要な切り札だった。なのに……。

 なぜ、A社しか来ないのか。その理由らしき内実が、“仲間たち”の話から浮かび上がった。

 卸が結託して、日本全国津々浦々、エリアごと、薬局ごとに担当を決めて、その担当が価格交渉を行い、その情報を4社が共有することで値崩れを起こさない仕組みを作ったのではないか、というのだ。どうやら、うちの担当は、A社になったらしい。

 つまり、こちらの切り札である「あっちの卸はもっと安いよ」という“殺し文句”は完全に封印されてしまったわけだ。そうなると、なかなか交渉は進まず時間がかかる。そうはいっても、卸の決算月の3月には価格を決めざるを得ない。バタバタと妥結することになった。

 ホッとする間もなく4月を迎えた。今年は2年に1度の調剤報酬改定だ。そして今改定では、なんと、卸との妥結率が調剤基本料の要件に組み込まれているではないか。

 厚生労働省は、納入価が決まらず未妥結のままでは市場実勢価格を把握できず、薬価改定のベースになる薬価調査の障害になるという。

 確かにそうなのかもしれない。われわれに全く非がないと言うつもりはないが、だがしかし、薬局や医療機関だけにペナルティを課すというのは、どういうことなのか。妥結率が低いのは、薬局だけのせいなのか? その商慣習を連綿と受け継いできたのは卸ではないのか?

 われわれは、卸の商慣習に慣らされて、毎年、価格交渉をしてきたに過ぎない。なのに、なぜ購入する側だけにペナルティを課されなければならないのか。しかも、値崩れを起こさない仕組みをコッソリ作って、これまで以上に交渉を長引かせていたのは卸なのに。

 頭にきた! こうなったらリベンジだ。何とか卸を「ぎゃふん」と言わせてやる。「やられたらやり返す、倍返しだっ!」と息巻いてみたが、ふと不安になる。

 うちの会社の年商は約40億円、年間の医薬品購入額は28億円。卸にとっては大した金額ではないのかもなぁ……。(長作屋)

筆者プロフィール
関西エリアを中心に展開する薬局チェーンのオーナー(非薬剤師)。
15年前に製薬会社を辞めて薬局を開設、今では25店舗を経営。

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