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CaseStudy
西日本調剤センター薬局 (北九州市小倉北区)
日経DI2014年4月号

2014/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年4月号 No.198

 午前0時を過ぎ、街も寝静まる頃。夜更けにもかかわらず、病院の救急外来出口から、患者が1人、また1人と出てくる。そして、通りを挟んだ向かい側にある薬局に入っていく─。

 西日本調剤センター薬局(北九州市小倉北区)の店先で見られる光景だ。ここは全国でも珍しい、24時間開局を実践している薬局。福岡県を中心に8店舗の薬局を運営する九州メディカル(北九州市小倉北区)の第1号店であり、1989年に開局してから25年間、24時間365日体制で処方箋を応需し続けている。

夜間でも電灯が灯り、患者は入り口を入って右側の夜間窓口を訪れる。(写真提供:西日本調剤センター薬局)

 「処方箋を出す病院が夜中も患者を受け入れているのに、薬局が閉まっていては、患者からも病院からも信頼は得られない。そういう考えで、オープン当初から24時間開局を続けている」。こう語るのは、九州メディカル代表取締役で薬剤師の波多野稔丈氏だ。

 西日本調剤センター薬局の目の前にあるのは、九州地方有数の急性期病院である健和会大手町病院(病床数527床)。年間6000台以上の救急車、2万5000人以上の救急外来患者を受け入れる。病院の周囲には他に薬局を開設できる土地や物件がなく、門前薬局といえるのは同薬局のみだ。

入り口脇に夜間受付を設置

 薬局の通常の営業時間は9時~18時で、この時間帯は普通の薬局と同じように、患者は待合の受付カウンターに処方箋を出し、薬を受け取る。

 18時を過ぎると、夜間の体制に切り替わる。薬局の入り口は二重のドアになっており(図1)、外側はそのまま開けておき、内側のドアは施錠して待合スペースには入れないようにする。この風除室が、夜間の待合スペースになる。夜間に来局した患者は、風除室の夜間受付にあるブザーを押して、中にいる職員を呼び出す仕組みだ(写真【1】)。

図1 西日本調剤センター薬局の見取り図

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【写真1】夜間受付の窓口。開局時からこの場所に設置している。

 18時~9時まで勤務するのは薬剤師1人と事務員1人。毎晩この2人で当直業務全般をこなす。ブザーが鳴ると、まず事務員が夜間受付で対応し、患者の用件を聞いた上で薬剤師を呼び出す。薬剤師が調剤している間、患者は風除室の椅子に座って待つ。

 夜間に薬局を開局するために重要なのは、セキュリティの確保だ。薬局に金銭だけでなく、厳重に管理しなければならない薬が置かれている。同薬局では、夜間受付の上部に防犯カメラ(写真【2】)を設置している。また、窓口はおよそ30cm×60cmの狭い間口にしており、不審者が入り込めないような工夫が施されている。薬剤師や事務員が窓口から離れる際は、必ず施錠するようにしている。

【写真2】防犯カメラ。迷惑行為の抑止力になる。【写真3】入り口に営業時間を表記。

 窓口は、以前はもっと広かったが、「興奮して刃物を振り回す人が来てトラブルになりかけたことがあり、このままでは危険ということで、8年ほど前に間口を狭くした」と、波多野氏は話す。

当直は月2~4回/人でシフト

 夜間の対応に必要な薬剤師の確保も重要なポイントだ。同薬局では、常勤の薬剤師以外に、外部から“アルバイト当直”の薬剤師数人を雇用して人員を確保している。毎月10人ほどが交代で当直を行っている(図2)。

図2 西日本調剤センター薬局の薬剤師の勤務シフト表(抜粋)

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 「4年ほど前までは、常勤薬剤師には当直業務を必須にしていたが、今は働き方の多様化も必要なので、選べるようにしている」と波多野氏は話す。

九州メディカルの波多野稔丈氏。農学修士修了後、薬学部に入り直し、父親が開設した薬局を継承した。

 常勤薬剤師が当直に入る回数は1カ月当たり4回までで、当直明けは休みとする。ただし女性の薬剤師は当直後に体調を崩す例が多く見られたため、原則として1カ月当たり2回までにしている。男性は2~4回当直する職員が多いという。

 また、夜間の事務は専従の50歳前後の男性2人が交互に勤務し、処方箋の受け付けやレセコンの入力など、事務的な仕事を受け持つ。

当直中は「雑務」の片付けも

 来局する患者は平均して一晩に15人前後だという。時期的には冬場に増える傾向がある(図3)。時間帯でいえば18時~24時が多いが、3時くらいまでは一定数の来局がある(図4)。4時を過ぎると、だいぶ少なくなるようだ。

図3 夜間(18時~翌朝9時)における月別の処方箋応需枚数(2013年)

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図4 夜間(18時~翌朝9時)における時間帯別の処方箋応需枚数(2014年1月)

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図5 営業時間と夜間の処方箋発行元の割合

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 なお、応需する処方箋の内容は、鎮痛薬、胃腸薬、感冒薬といった軽症急性疾患に関する薬剤が多いという。

 「当直」と聞くと、調剤や服薬指導などの時間以外は当直室でゆっくりできる印象があるかもしれない。しかし、同薬局では必ずしもそうではないようだ。

 管理薬剤師の大場崇氏は、「アルバイト当直の薬剤師以外は皆、雑務をこなす時間に当てている。私自身は薬品期限の確認や、医薬品データの新規登録、薬歴の整理などに当てることが多い。他に、分包機などの機器やシステムのメンテナンスをする薬剤師もいる」という。もちろんテレビを視聴したり食事を取る時間もあるが、決してのんびり過ごせるわけではない。

 「だいたいの場合、22時くらいまでに抱えている仕事を終わらせ、0時~1時頃には仮眠を始める。ただし患者が断続的に来るため、夜間にゆっくり寝られることはあまりなく、早朝の4時~8時くらいの間にまとまった睡眠を取ることが多い」(大場氏)。

 なお、薬局内には当直の2人が過ごすための当直室などの専用スペースはない。仮眠は、1畳ほどの広さの仮眠室(写真【4】)や、待合のソファ(写真【5】)で取る。

【写真4】薬局内の仮眠室。【写真5】待合のソファ。夜間は並べ替えて仮眠スペースにする。【写真6】当直中の管理薬剤師の大場崇氏(左)と事務員の古野智彦氏。

基本料の「特例」対象外に

 同薬局では現在、夜間に受け付けた処方箋に関して、「夜間・休日等加算(1回40点)」を算定しており、「時間外加算(調剤技術料の100%)」「休日加算(同140%)」「深夜加算(同200%)」などは算定していない。このため同薬局の夜間の調剤技術料は、処方箋1枚当たり2000円ほどに過ぎない。夜間の枚数が15枚程度とすれば3万円程度の増収だ。

 一方、夜間に開局しておくためには、人件費は1晩当たり、薬剤師が3万円前後、事務員が1万5000円前後で合計4万~5万円掛かる(薬剤師は当直回数に応じて基本給が変わる)。光熱費も1晩当たり2000~4000円ほど掛かる。24時間開局は、費用や人的負担の大きい取り組みなのだ。

 波多野氏は「24時間開局は、薬局が昼間の利益を還元して地域に貢献するための一つの形。負担が多少重くても行うべきものと考えている」と話す。

 なお、24時間開局が2014年の改定で大きな注目を浴びたのは、調剤基本料の特例(25点)に該当する薬局として「処方箋月2500枚超4000枚以下、かつ集中率90%以上」という条件が新たに設けられたため。その薬局が24時間開局を行っていれば、特例の対象外になる。西日本調剤センター薬局は、月3200枚かつ集中率90%超なので、まさにこの条件に該当する。

 特例対象外になれば、調剤報酬が処方箋1枚当たり28点(調剤基本料41点→25点、基準調剤加算12点→0点)の減算を免れる。同薬局では応需する処方箋枚数が多いため、28点×3200枚で1カ月当たり約90万円程度の減収を免れる計算。前述した夜間の増収分を考慮すると、24時間開局は経営的にトントンといえそうだ。

 「24時間開局に新たな点数が付けられたわけではなく、点数を維持できるにとどまるが、これまでの取り組みが評価されたことはうれしい」と波多野氏。

 また、今後の方針として波多野氏は、「われわれはまだ、24時間開局の体制を生かしきれていない。いつでも電話や来局に対応できる点をもっとアピールし、在宅医療やOTC薬の相談など、多くのニーズに応えられる多機能な薬局にしていきたい」と話している。(野村 和博)

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