DI Onlineのロゴ画像

DIクイズ2(A)
DIクイズ2:(A)蓄尿バッグが紫色になった理由
日経DI2014年4月号

2014/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年4月号 No.198

出題と解答 : 東風平 秀博
山本 雄一郎(田辺薬局[東京都中央区])

A1

(4)特定の食品由来成分からバッグ中の細菌が合成する物質が紫色であるため。

A1

紫色蓄尿バッグ症候群の原因として、尿路感染症に伴う慢性便秘が多いため。

 Tさんのように尿道カテーテルを導入している患者で、蓄尿バッグやカテーテルが紫色に変色する現象を、紫色蓄尿バッグ症候群(purple urine bagsyndrome:PUBS)という。これは、蓄尿バッグが、水に不溶性のインジゴあるいはインジルビンによって青紫色から赤紫色に着色する現象であり、膀胱内バルーンカテーテル挿入患者において慢性便秘と尿路感染症が合併する場合に出現するとされる(表1)。

表1 日本泌尿器科学会「泌尿器科領域における感染制御ガイドライン」
(2009年)における紫色蓄尿バッグ症候群に関する記載

画像のタップで拡大表示

 PUBSは、Barlowらによって最初に報告され、その後日本においても報告が散見されている。

 Deallerらは、その着色物質がインジゴ青やインジゴ赤であることから、トリプトファン代謝にかかわる生合成経路に注目して、その発生機序を推論している。

 具体的には、必須アミノ酸の一つであるトリプトファンが食事中から取り込まれ、腸管内において腸内細菌によりインドールに分解される。慢性便秘であると、腸内細菌が過剰に増殖しているため、インドールが多く発生する。インドールは腸管から吸収されるが、体内では有害であるため、肝臓で硫酸抱合を受けた後、無害なインジカンに代謝され、尿中に排泄される。

 そこに尿路感染が合併していると、尿中の種々の細菌(Providencia stuartii、K l e b s i e l l a pneumoniae、E.coli、Morganella morganii、Enterobacteraerogenes、Proteus mirabiisなど)によりインジカンは加水分解を経てインドキシルに変換される。

 インドキシルは2分子が縮合して酸化されるとインジゴ青(一般的にはこれがインジゴと呼ばれている)となる。一方、インドキシルがさらに酸化されるとイサチンになり、イサチン2分子が縮合するとインジゴ赤(インジルビン)になる。インドキシルから両分子に至るまでの反応は、尿がアルカリ性の場合に起こり得る。

 これらの反応には、いずれも細菌の関与が必須である。このような経路で産生されたインジゴ青やインジゴ赤は、蓄尿バッグや接続チューブ類を構成するポリマーに付着しやすいため、PUBSが生じるものと考えられている。

 PUBS自体は治療の対象とはならないが、発生の原因となっている慢性便秘や排尿管理への対応が、強く推奨されている(表1)。

 特に尿路感染症については、Tさんのように発熱などの症状が見られなければ、無症候性尿路感染として、抗菌薬を投与する必要はない。そのため、処方医は今回、抗菌薬を処方せず、便秘に対して酸化マグネシウム(商品名マグミット他)とセンノシド(プルゼニド他)を処方したと考えられる。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 お母様のおしっこのバッグと管が紫色になったのは、便秘と尿路感染症が一緒に起きたためと考えられます。便秘になると、腸で食べ物の成分が異常に分解されやすくなります。そして、分解された成分がおしっこに出たときに今度は細菌によって紫の色素に変わるのです。この紫色の色素は、バッグや管などのプラスチックに付着しやすいことが分かっています。

 この現象は尿路感染症と便秘を治せばなくなります。Tさんには熱もないので、先生は抗菌薬を処方されずに、便秘のお薬だけを処方されたのだと思います。何か不安なことがありましたら、いつでもご相談くださいね。

参考文献
1)Lancet 1978;311:220-1.
2)J Urol. 1989;142:769-70.
3)J Clin Microbiol. 1988;26:2152-6.
4)泌尿器科紀要 2008;54:185-8.

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ