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いまさら聞けない栄養の話
糖尿病患者の運動時には低血糖に注意
日経DI2014年4月号

2014/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年4月号 No.198

太田 篤胤 Atsutane Ohta
城西国際大学薬学部教授
東京農工大学卒業。テルモ、明治製菓を経て、2004年から現職。「オリゴ糖のミネラル吸収促進作用」の研究で、トクホを商品化した経歴を持つ。趣味はフルマラソン。

 中高年の間で、登山が人気だ。残念ながら、事故も増えていると聞く。原因の一つに低血糖があるそうだ。

運動中こまめに糖分を補給

 登山中は、交感神経の活動が活発になって空腹を感じにくいため、気付かないうちに低血糖になって注意力が散漫になり、それが怪我や事故のもとになる。さらに、症状が進むと、山中で急に力が出なくなり、足がもつれて歩けなくなる、視界が暗くなる、意識が混濁するといった事態に陥る。こうなると食べ物も喉を通らず、血糖値を上げることが困難となる。これは、登山者の間では、シャリバテ(飯が足りずバテること)と呼ばれよく知られている。登山中の低血糖は怖いのである。

 登山の運動量は多い。筋肉中のグリコーゲンは、歩き始めてから3~4時間でなくなるため、登山中はこまめに糖分を補給する必要がある。

 糖尿病患者では、普段から糖分摂取を節制する習慣がついている人も多いが、登山のときは定期的に糖分を摂取して低血糖を予防するよう、アドバイスすることが重要だ。

インスリンやSU薬を調整

 そもそも、糖尿病患者が登山のようなハードな運動をする場合には、事前に医師に相談し、薬の量を調整する必要がある。

 運動療法は、食事療法と並ぶ糖尿病治療の基本であり、進行した合併症や重度の心血管疾患などの心配がない限り奨励されている。しかし、一般に糖尿病の運動療法として奨められることが多いウォーキングなどと異なり、登山はハードな筋肉運動である。

 軽症で食事療法・運動療法のみの患者であれば特に心配はないが、経口薬やインスリン療法を受けている患者がハードな運動を行う場合は、低血糖を予防するために、普段の運動量を基準に決められている薬の量を、より強度な運動に合わせて調整する必要がある。

 薬物療法中の糖尿病患者における運動療法については、日本糖尿病学会が表1のような指針を示している。

表1 薬物治療中の糖尿病患者における運動療法
(日本糖尿病学会「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」による)

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 その他、糖尿病患者の運動療法における一般的な注意として同ガイドラインは、(1)血糖コントロールが悪いとき(特に尿ケトン体陽性時)は運動しない、(2)日常生活の中で段階的に運動量を増やす、(3)できれば毎日、少なくとも週に3~5回、中等度の強さの有酸素運動を20~60分行う─―などを挙げている。

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