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収入減を避けようとして 「ブラック薬局」になるなかれ
日経DI2014年4月号

2014/04/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年4月号 No.198

「ブラック企業」という言葉がある。かつては反社会的勢力が経営する企業を指していたが、現在では労働者を酷使・選別して使い捨てにする企業のことを広く呼ぶ。ブラック企業は労働者に度を超した長時間労働やノルマを課し、方針に付いて来られない者を非情に切り捨てることで、近年社会的な問題となっている。

 薬局もまた、今後ブラック企業化するのではないか。その理由は2014年診療報酬改定にある。改定では、調剤基本料の特例と基準調剤加算の見直しが行われた。調剤基本料は従来、処方箋の受付回数が月4000回を超え、特定の医療機関からの処方箋の集中率が70%を超えた場合に、特例として引き下げられていたが、この条件を広げ、受付回数が月2500回超、処方箋集中率が90%超の場合も、特例として引き下げられることになった。その上で、24時間開局する場合には、後者の特例からは除外すると定められた。

 また基準調剤加算では、基準1の条件に「当該薬局を含む近隣の薬局と連携して24時間調剤並びに在宅患者に対する薬学的管理及び指導を行うのに必要な体制が整備されていること」という項目が追加され、基準2の条件に「当該薬局のみで24時間調剤並びに在宅患者に対する薬学的管理及び指導を行うのに必要な体制が整備されていること」が追加された。

 この24時間というのがポイントである。今回の改定により、調剤基本料が引き下げられる薬局や基準調剤加算が算定できなくなる薬局が増加することが予想される。特に調剤基本料の引き下げを免れるためには、当直を行う薬剤師を配置して、文字通り24時間の営業体制を構築するほかない。

 これはそう簡単ではない。防犯の問題もあるし、かといって人員を増やせば人件費がかさんで採算が取れなくなる。そこで、最も安易な解決法が、薬局をブラック企業化することである。例えば名ばかりの役職を与え、わずかな手当と引き換えに長時間労働を強い、残業代は払わない。売上高アップのため、薬剤師に様々なノルマを課し、方針に付いて来られない者は非情に切り捨てる。このようにして、ブラック企業化しなければ利益を確保できないという薬局も出てくるのではないだろうか。

 ただし行政が、薬局に支払う診療報酬を削減するためだけに今回の改定を行ったわけではないということも理解すべきだろう。

 院外処方の調剤基本料が、院内調剤と比較して高いというのは以前から指摘されていた。特定の病院の処方箋しか受け付けないのであれば院内調剤と何が違おうか。

 また全ての基準薬局が、基準調剤加算を算定するだけの仕事を本当にしていたと言えるだろうか。夜間・休日用の電話番号に掛けてもつながらないということはなかったか。チェーン薬局などで緊急連絡窓口を一本化し、実際に基準薬局としての体制を整備しているのは一部の店舗だけなのに、全店舗で基準調剤加算を算定したりしていなかったか。今回の改定は、特定の医療機関の処方箋だけしか受けない門前薬局や、大した仕事をしていない基準薬局はもう認めないという行政からのメッセージとも受けとれる。

 貧すれば鈍すという言葉がある。余裕がなくなると、判断も鈍るという意味だ。薬局には特に厳しい今回の改定だが、開設者には後ろ指を指されないような経営努力を希望したい。(みち)

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