おしっこが漏れて困っているけれど、恥ずかしくて誰にも言えない、などと思い悩んでいる女性は少なくない。実際、40代以降の女性の4人に1人は、尿漏れを日常的に意識しているとされる。 一口に「尿漏れ」と言っても、くしゃみをした時など、尿意がないのに少量の尿が漏れてしまう「腹圧性尿失禁」や、尿意を感じて急いでトイレに向かっても、間に合わずに漏らしてしまう「切迫性尿失禁」など、様々である。 腹圧性尿失禁には骨盤底が関与している。骨盤底とは、骨盤の内部で膀胱や尿道、子宮、直腸などの臓器を支える部分で、筋肉や線維組織で形成されている。妊娠・出産により骨盤底は緩みやすく、尿道や膀胱の位置が変化して腹圧性尿失禁になりやすい。特に産後3カ月ぐらいまでは尿漏れを訴える人が多い。また子宮筋腫、子宮脱などにより膀胱や尿道が圧迫・牽引されて尿漏れを引き起こすこともある。 一方、切迫性尿失禁に悩む人や、過活動膀胱の患者は、いつも尿漏れの懸念があったり、少ししか尿が溜まっていないのに尿意を催したりと、常にトイレの在りかが気になり、頻尿にもなる。 このほか、薬剤により尿道や膀胱の平滑筋が弛緩し、排尿しづらさ、頻尿、尿漏れなどを引き起こすこともある。原因薬には利尿薬、Ca拮抗薬、抗コリン作用のある向精神薬、抗うつ薬、睡眠導入薬などがある。 排泄には認知能力と身体能力の両方が重要である。中でも認知能力が低下した高齢者が多剤を服用しているケースでは、尿漏れの原因の特定は難しいのが現状である。 尿失禁の治療には、保存的治療と手術治療がある。保存的治療として一般的なのは、骨盤底筋体操(骨盤底トレーニング)と薬物療法である。 骨盤底筋体操には、出産で緩んだ骨盤底組織の回復を促す効用があるものの、恒常化した腹圧性尿失禁の治療としての効果は十分でなく、専門医は症状に応じて手術治療を勧めている。切迫性尿失禁は、生活指導と薬物治療が中心になる。 手術治療には、特殊なテープで膀胱の下部と尿道をブランコのように支え、腹圧がかかっても位置が変わらないように固定する手術などがある。 では実際に、薬局で患者から尿漏れの相談を受けた時、どう対応すべきだろうか。まず確認したいのは、骨盤底が緩む原因があるかどうかだ。産褥期である、子宮筋腫がある、子宮脱の診断を受けているといった患者には、既に受診している医療機関の医師に、尿漏れに悩んでいることを伝えるようアドバイスしてほしい。 子宮筋腫や子宮脱があるかどうか分からないという人は、まず産科や婦人科を受診するとよいだろう。 原因が思い当たらない患者で「じっとしていれば漏れないが、何かをした拍子に漏れる」という人は、腹圧性尿失禁が疑われるため、泌尿器科か専門の産婦人科の受診を勧める。 一方、安静時や就寝中にも尿漏れや頻尿の問題があるという人は過活動膀胱が疑われるため、かかりつけの医師に相談するとよい。 なお、尿漏れを気にして生理用ナプキンを常用している人がいるが、尿漏れに生理用品を使うと、外陰部の皮膚障害を起こす原因にもなる。尿漏れパッドには、多くの吸収材が使用されており、パッドの表面がじめじめしない工夫がされている。尿漏れには尿漏れ専用パッドを使うよう、アドバイスしてほしい。 指導箋は、複製して配布するなど、薬局での患者指導に自由にご活用ください。DIオンライン(http://di.nikkeibp.co.jp)からもダウンロードできます。
尿意の有無で異なる病気
適切な受診先を勧める
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