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慢性頭痛
日経DI2014年3月号

2014/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年3月号 No.197

 頭痛は、日常診療で最も多く見受けられる神経症状の一つである。わが国では約4000万人の慢性頭痛患者がいるとされ、薬局での相談事例も多い。

 2013年に日本神経学会および日本頭痛学会より「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」が発表された。同ガイドラインはQ&A方式で構成されているのが特徴で、診療に関連する疑問が設定され、それに答える形で解説がなされている。今回は同ガイドラインより、薬局で身に付けておきたい情報を抜粋してお伝えすることにしたい。

「危険な頭痛」の見極め方

 頭痛の患者が来局した場合、薬局で必要なことはトリアージである。すぐに救急医療機関を受診する必要があるものと、危急ではないが医療機関での治療が適するもの、薬局のOTC薬で対応できるもの、といった3段階に分類できれば望ましい。

 まず、すぐに救急医療機関を受診する必要がある頭痛であるが、これはどのような薬局でも適切に対応できるようにしなければならない。ガイドラインでは、「危険な(致命的な)頭痛」を見極めるための項目が示されている(表1)。これに該当する場合、患者には直ちに救急医療機関に行くよう勧める。

 なお、項目の中には「非典型的症状」や「神経脱落所見」などの語句も含まれているが、これらは臨床的なトレーニングを受けていない薬剤師には難しい可能性もあり、限界があることを踏まえて活用したい。また高血圧は脳卒中の危険因子であり、頻度が高いながら注意が必要である。

表1 「危険な頭痛」の簡易診断項目

ガイドラインより。上記のいずれかに当てはまれば危険な頭痛の可能性がある。

OTC薬で治療可の頭痛は?

 次に、OTC薬で治療可能な患者も見極めたい。それ以外であれば、医療機関の受診が適切と判断できる。ガイドラインでは、OTC薬での治療が適する頭痛について言及しており、以下のようなQ&Aが設定されている。

Q:市販薬による薬物療法をどのように計画するか。

A:薬物療法の選択は頭痛の重症度、頭痛の頻度、生活支障度に依存する。一次性頭痛のうちでも軽症の頭痛であればOTC薬でも対処可能である。頭痛が中等度~重度でOTC薬が無効の場合、あるいはOTC薬を頻回に服用する場合は、医師の指導の下に薬物治療を行うことが望ましい。患者が薬物乱用頭痛に陥らないように服用日数の制限(月10日以内)を設け、服用日数の比較的多い患者では単一成分のOTC薬を選択するよう指導する。(グレードA[行うよう強く勧められる])

 この項目についてガイドラインでは、「一次性頭痛の主要なものは片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛であるが、OTC薬の効果が期待されるのは軽症の片頭痛、反復性緊張型頭痛である。(中略)OTC薬も片頭痛、反復性緊張型頭痛に対する薬物療法の選択肢の1つとなり得る」と解説されている。つまりOTC薬は軽症の一次性頭痛(特に片頭痛、反復性緊張型頭痛)に使用することと理解できる。

 では、軽症の頭痛はどういうものか。ガイドラインでは、(1)軽症:生活に対する支障がない、(2)中等症:日常生活や仕事に影響がある、(3)重症:日常生活や仕事が不可能・寝込む─の3段階に分けている。この中でOTC薬は「生活に支障がない」程度の頭痛をカバーすることになる。

 次に、ガイドラインでは国際頭痛分類に基づき、頭痛を一次性頭痛と二次性頭痛に分けている(表2)。このうち一次性頭痛は「片頭痛」、「緊張型頭痛」、「群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛」、「その他の一次性頭痛」の4種類である。

 片頭痛は、ガイドラインで「前兆のない片頭痛」と「前兆のある片頭痛」の2種類に大きく分けられており、それぞれ別に解説されている。

 「前兆のない片頭痛」は、「頭痛発作を繰り返す疾患で、発作は4~72時間持続する。片側性、拍動性の頭痛で、中等度~重度の強さであり、日常的な動作により頭痛が増悪することが特徴であり、随伴症状として悪心や光過敏・音過敏を伴う」と記載されている。診断基準は表3の通り。

 「前兆のある片頭痛」は、「通常5~20分にわたり徐々に進展し、かつ持続時間が60分未満の可逆性局在神経症状からなる発作を繰り返す疾患である。前兆が表れた後、前兆のない片頭痛の特徴を有する頭痛が生じることが多い。稀に片頭痛の特徴を欠く頭痛であったり、全く頭痛がなかったりする例がある」と解説されている。このうち、主要なタイプとして「典型的前兆に片頭痛を伴うもの」の診断基準がガイドラインで示されている(表4)。

 「緊張型頭痛」は、よくある一般的な頭痛と考えてよい。診断基準は表5の通り。頻度によって4種類に分けられている。なお、緊張型頭痛は「片頭痛と鑑別できない場合がしばしばある」と記載されている通り、薬局で細かく分類できない可能性を念頭に置くことを心掛けたい。

表2 一次性頭痛と二次性頭痛

ガイドラインより。国際頭痛分類第2版に準拠している。

表3 「前兆のない片頭痛」の診断基準

表4 「典型的前兆に片頭痛を伴うもの」の診断基準

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表5 「緊張型頭痛」の診断基準

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OTC薬の成分について

 ガイドラインでは、OTC薬の成分についても言及がある。「アセトアミノフェン1000mg、アスピリン1000mg、イブプロフェン200mg、400mgはいずれも片頭痛、緊張型頭痛に有効との報告がなされている。アスピリン、アセトアミノフェン、カフェインの合剤についても二重盲検により片頭痛に対する有効性が実証されており、単一成分の薬剤より有効性が高いとの報告もある。近年スイッチOTC薬としてロキソプロフェンが加わったが、RCTレベルの報告はない」と解説されている。

 また、薬物乱用頭痛について踏み込んでおり、「OTC薬は患者自身で制限なく手に入れることができるため、長期間の頻回使用により薬物乱用頭痛を来し得ることを患者に説明し、注意を促す必要がある」と記載されている。

 薬物乱用頭痛の定義は、「単一成分の鎮痛薬では3カ月以上にわたり15日/月以上、複合鎮痛薬では10日/月以上服用を続ける場合」となっており、「10日/月以上にわたりOTC薬を服用している患者や、効果がないのに漫然と使用している患者」については、医師の適切な指導を求めている。

 OTC薬とは異なるが、漢方薬への言及もある。頭痛一般に関する「漢方薬は有効か」という問いに対して、「近年では徐々に科学的エビデンスも集積されつつあり、頭痛治療に対する有効性を裏付けている」(グレードB[行うよう勧められる])と表記されている。症例集積研究以上のエビデンスを持つ漢方薬として、呉茱萸湯、桂枝人参湯、釣藤散、葛根湯、五苓散の5種類が紹介されている。

片頭痛治療について

 ガイドラインでは、片頭痛の治療および予防に関して多くが割かれている。薬局の業務に重要な情報を抜粋しておきたい。

 大規模疫学調査によると、片頭痛患者は日本で約840万人と推定されている。また、年間有病率は8.4%で、前兆のある片頭痛が2.6%、前兆のない片頭痛が5.8%である。年齢層では20~40歳代の女性が多く、未成年者における有病率は高校生9.8%、中学生4.8%である。医療機関を受診する患者は少ないとの報告もあり、有病率はこれより高い可能性が十分にある。

 片頭痛に関しては、以下に紹介する2つの設問が重要となるだろう。

Q:片頭痛の急性期治療には、どのような方法があり、どのように使用するか。

A:片頭痛急性期の治療は、薬物療法が中心である。治療薬として、(1)アセトアミノフェン、(2)非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、(3)エルゴタミン、(4)トリプタン、(5)制吐薬─があり、片頭痛の重症度に応じた層別治療が推奨される。軽度~中等度の頭痛にはアスピリン、ナプロキセンなどのNSAIDsを使用する。次に中等度~重度の頭痛、または軽度~中等度の頭痛でも過去にNSAIDsの効果がなかった場合にはトリプタンが推奨される。また薬剤使用方法、妊娠中や授乳中の薬剤の対応、急性期発作中の患者指導と注意点についての説明が必要である。(グレードA)

 片頭痛の急性期治療は、片頭痛発作を確実に消失させ、患者の機能を回復させることが急務となる。一般に片頭痛の急性期治療としては薬物療法が中心であり、有効性と安全性のエビデンスおよびコンセンサスに基づいた薬効分類(表6)が示されている。

 薬剤使用に際しては、いずれの薬剤も3カ月を超える定期的乱用により薬物乱用頭痛の可能性を説明し、注意を促す必要がある。また、調剤に当たって事前に禁忌となる状態や妊娠・授乳の有無を確認することや、急性発作時には日常生活上の注意点(暗い場所で休む、痛む部位を冷やす、入浴を控えるなど)の指導も併せて行うことが肝要である。

 なお、ガイドラインでは片頭痛急性期治療におけるアセトアミノフェンとNSAIDsについて別途言及されており、「アセトアミノフェン単剤投与およびNSAIDs単剤投与は安全性が高く安価であり、軽度~中等度の片頭痛発作の第一選択薬として推奨される。しかし、トリプタンに比べて効果は限定的で、アセトアミノフェンやNSAIDsで効果のない片頭痛患者には、トリプタンの早期の投与を検討する」(グレードA)と評価されている。

Q:予防療法にはどのような薬剤があるか。

A:予防療法における有効性のエビデンスの強さと効果、有害事象のリスクなどから、片頭痛予防薬は表7のようにグループ分けすることができる。(グレードB)

 急性期医療のみでは不十分な場合に予防療法が選択される。予防療法の目的は、(1)発作頻度、重症度と頭痛持続時間の軽減、(2)急性期治療の反応の改善、(3)生活機能の向上と生活への支障の軽減─にある。

 現在、日本で片頭痛の予防薬として保険適応されている薬剤としては、ロメリジン塩酸塩(商品名テラナス、ミグシス)、バルプロ酸ナトリウム(デパケン、セレニカ他)、プロプラノロール塩酸塩(インデラル他)、ジヒドロエルゴタミン(ジヒデルゴット他)である。

 また、ガイドラインでは有効性と安全性のエビデンスおよびコンセンサスに基づいた薬効分類(表7)が示されている。予防療法の効果判定には少なくとも2カ月を要し、有害事象がなければ3~6カ月は予防療法を継続し、コントロールが良好になれば予防療法薬を緩徐に漸減し、可能であれば中止することが勧められる。

表6 片頭痛急性期治療薬の分類

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ガイドラインより一部改変。国内未発売の薬剤は除外し、一部に推奨用量を追記した。

表7 片頭痛予防薬の分類

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ガイドラインより一部改変。国内未発売の薬剤は除外し、一部に推奨用量を追記した。

(東京慈恵会医科大学病院薬剤部・北村正樹)

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