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適応外処方のエビデンス
コントロール不良の糖尿病患者の血糖値をコレスチミドで改善
日経DI2014年3月号

2014/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年3月号 No.197

疾患概念・病態

 糖尿病は、膵臓から分泌され血糖値を下げるホルモンであるインスリンが不足ないしは十分作用しないことが原因で、血中の糖質が常に高い状態になっていることを指す疾患である。

 発症初期は自覚症状がないが、慢性的な高血糖状態は、生体に様々な影響を及ぼし、神経障害、網膜症、腎症の3大合併症のほか、動脈硬化性疾患や感染症を引き起こす。糖尿病の治療の目的は、これら合併症の予防・進展抑制である。治療では、HbA1c値や食後の血糖値などを指標として、食事療法、運動療法、薬物療法による血糖コントロールを行う。

治療の現状

 2型糖尿病の治療では、まず食事療法と運動療法を行い、十分効果が得られない場合に薬物療法を行う。

 糖尿病の治療薬としては、(1)インスリン分泌を促進することなく血糖を改善するビグアナイド薬やチアゾリジン薬、αグルコシダーゼ阻害薬、(2)血糖依存性にインスリン分泌を増やすジペプチヂルペプチダーゼ4(DPP4)阻害薬、グルカゴン様ペプチド(GLP)1製剤、(3)血糖非依存性にインスリン分泌を促進するSU薬、速効型インスリン分泌促進薬、(4)インスリン製剤─などが使用されている。

 一方、高コレステロール血症を合併する糖尿病予備軍や薬物療法中の糖尿病患者で、HbA1c値が高めあるいは上昇傾向にある場合、血糖降下作用を期待して、陰イオン交換樹脂(レジン)であるコレスチミド(商品名コレバイン)が適応外使用されることがある(表1)。

表1 HbA1c値が下がらない糖尿病患者へのコレスチミドの処方例

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コレスチミドの有効性

 鈴木らは、脂質異常症に2型糖尿病を合併する患者におけるコレスチミドの血糖降下の作用を、αグルコシダーゼ阻害薬との比較によって検討した1)

 2型糖尿病に脂質異常症を合併する33例の患者を、従来の治療にコレスチミドを追加する群(17例)と、従来の治療にアカルボース(グルコバイ他)を追加する群(16例)に分けた。コレスチミドは1.5gを1日2回朝夕食前、アカルボースは50mgを1日3回毎食前に、それぞれ2週間経口投与した。両群とも1日10回(2~4時間おき)、血糖値と血清脂質を測定した。

 その結果、コレスチミド群では朝食後2時間の血糖値が216.9±37.2mg/dLから191.1±40.9 mg/dL(P=0.008)に下がり、血糖値の日内変動幅も有意に低下し、アカルボースとほぼ同様の血糖降下作用を認めた。

 一方、竹林らは、LDLコレステロール(LDL-C)値が高い2型糖尿病患者を対象に、長期的なコレスチミドの血糖降下作用を調べた2)

 LDL-C値が高い2型糖尿病患者34例(うち男性12例、平均年齢63.1±9.1歳)に、コレスチミド1.5gを1日2回、18カ月間投与した。その結果、平均HbA1c値は、治療開始時(8.1%±1.1%)に比べて、治療開始3カ月後(7.1%±0.7%)と18カ月後(7.2%±0.9%)で著しく低下していた(3カ月後、18カ月後いずれも、治療開始時に対してP<0.0001)。コレスチミドは、LDL-C値が高い2型糖尿病患者のHbA1c値を比較的長期間にわたり下げることが分かった。

 ただし、HbA1c値が8.0%より高いコントロール不良の患者や、SU薬のグリベンクラミド(オイグルコン、ダオニール他)5mg/日以上を含む多剤併用療法を受けている患者では、治療開始3カ月後のHbA1c値は低下するが、その後治療開始18カ月後までにHbA1c値が再び上昇する例が多かった。

 山川らは、脂質異常症がある2型糖尿病患者を対象に、コレスチミドの血糖降下作用の強さを、同じく血糖に影響する可能性があると指摘されているスタチン系の脂質異常症治療薬との比較によって検討した3)

 LDL-Cが高い2型糖尿病患者を対象に、患者の従来からの治療内容を変更せずに、各種脂質異常症治療薬を追加して、治療開始3カ月後の血糖値を調べた(コレスチミド群71例、ピタバスタチンカルシウム[リバロ他]群95例、プラバスタチンナトリウム[メバロチン他]群85例、アトルバスタチンカルシウム水和物[リピトール他]群76例)。

 その結果、コレスチミド群では、治療開始3カ月後の空腹時血糖値およびHbA1c値は、それぞれ169±59 mg/dLが138±29mg/dLに、また8.1±1.0%が7.4±0.8%へと、いずれも有意(各P<0.05)に低下した。

 一方、プラバスタチン群およびピタバスタチン群ではいずれも変化がみられなかった。また、アトルバスタチン群では有意(P<0.05)に上昇した。

 コレスチミド群で、HbA1c値が8.4%以上の患者では平均1.0%、8.4%未満の患者では平均0.4%の低下と、HbA1c値が高い患者の方が血糖降下作用が高い傾向を認めた。

作用機序

 コレスチミドは、消化管で胆汁酸を吸着して排泄することにより、胆汁酸の腸肝循環を阻害する薬剤である。胆汁酸の腸管からの再吸収が抑制されて胆汁酸の排泄が促されると、肝臓におけるコレステロールから胆汁酸への合成が活性化する。その結果、肝臓でのLDL-C受容体が増加し、血中LDL-Cが取り込まれてLDL-C値が下がる。さらに、食事中のコレステロールを直接吸着することなどを介して、食事からのコレステロール吸収を抑制する作用を併せ持つ。

 これらのよく知られている作用に加えて、コレスチミドには、腸管においてブドウ糖を直接吸着し、消化管におけるブドウ糖の吸収を抑制・遅延させる作用がある可能性が指摘されている4)。実際、高コレステロール血症を有する2型糖尿病患者にコレスチミドを投与すると、食後2時間血糖値が低下するとともに、GLP1濃度が上昇することが確認されている4)6)

 また、同薬の便秘や腹部膨満感などの副作用が食事摂取量を減少させ、血糖降下に結びつく可能性も指摘されている2)5)

 核内受容体を介した糖新生律速酵素の発現促進という胆汁酸の作用を抑制する機序も指摘されている4)5)7)が、否定的な意見もあり、コレスチミドによる血糖降下作用の主たる機序は明らかでない。

適応外使用を見抜くポイント

 一般にコレスチミドが処方されるのは、総コレステロール値およびLDL-C値を改善するのが目的なので見抜くのは困難である。しかし、糖尿病治療薬の処方にコレスチミドが追加された場合には、HbA1c値を低下させる目的である可能性がある。

 患者にインタビューすると、HbA1c値の低下目的の処方であるとの説明を受けている場合もあるが、コレステロールに対する作用しか説明しかなされていない場合もある。従って、糖尿病患者にコレスチミドが処方されている場合には、説明を受けているかいないかにかかわらずHbA1c値の低下作用があることを説明することが重要である。

 なお、コレスチミドの服用により中性脂肪値が上昇することがある。表1のようにフェノフィブラート(トライコア、リピディル他)が併用されている場合、その影響はほとんどないと思われるが、モニターは必要である。中性脂肪値が上昇する機序は不明であるが、胆汁酸の腸肝循環の阻害が中性脂肪に富むVLDLの合成を亢進するためとの推察がある。

参考文献
1) J Nippon Med Sch. 2006;73:277-284.
2) SRX Medicine,Volume 2010,Article ID 973413.
3) Endocrine Journal. 2011;58:185-191.
4) Geriat Med. 2009;47:1165-9.
5) Prog Med. 2009;29:2043-8.
6) J Nipponn Med Sch. 2007;74:338-43.
7) Diabetes. 2007;56:239-47.

講師 藤原 豊博
AIメディカル・ラボ、薬剤師
2000年から「月刊薬事」(じほう)で適応外処方に関する連載を開始。同連載をまとめた3分冊の『疾患・医薬品から引ける適応外使用論文検索ガイド』(じほう)が刊行されている。

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