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DIクイズ4(A)
DIクイズ4:(A)抗癌剤の口腔内崩壊に不安を訴えられたら
日経DI2014年3月号

2014/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年3月号 No.197

出題と解答 : 後藤 洋仁
(横浜市立大学附属病院薬剤部)

A1

(2)口腔内で溶解させて服用しても、薬剤は口腔粘膜から吸収されない。
(3)通常の錠剤のように、口腔内で溶解させずに水で服用してもよい。

 ティーエスワンは、代謝拮抗薬フルオロウラシル(5FU)のプロドラッグであるテガフールに、5FUの代謝を阻害するギメラシルと、5FUに起因する消化管障害を抑制するオテラシルカリウムを配合した抗癌剤である。ギメラシルは、5FUの代謝酵素であるジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼを阻害することで、生体内での5FU濃度を維持する作用を持つ。オテラシルは、消化管でオロテートホスホリボシルトランスフェラーゼを阻害することで、消化管組織での5FUの活性代謝物による副作用を軽減する働きがある。

 適応となる癌種は、胃癌、結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、手術不能または再発乳癌、膵癌、胆道癌と幅広い。通常、4週間投与2週間休薬を1クールとして、投与と休薬を既定の期間繰り返す。Gさんが罹患している胃癌では、病期がステージⅡ/Ⅲの場合、治癒切除後にティーエスワンを1年間投与する術後補助化学療法を行うことが標準治療となっている。

 ティーエスワンは1999年の発売時にはカプセル剤のみだったが、2009年に顆粒剤、13年に口腔内崩壊錠(OD錠)が剤形追加された。同薬のOD錠は、有効成分を内核に包み、即崩壊性の外殻で覆った形状をしている。このような剤形は有核型OD錠と呼ばれる。同OD錠にはピーチ味が付けられている。

 さて、Gさんは「ラムネ菓子のように口の中で溶かして飲む薬」という医師の説明から、抗癌剤を口の中で溶かすことで口や喉を痛めるのではないかと心配している。しかし、ティーエスワンのOD錠の場合、口腔内で溶解させても口腔粘膜からは薬剤が吸収されないことが臨床試験で確認されている。口の中で溶かしても、唾液とともに飲み込めば、カプセル剤と同じように薬剤は腸管から吸収される。口腔内への残留分は唾液と一緒に自然に飲み込まれるが、気になるようなら、口の中で溶かさずに水とともに服用しても差し支えない。

 なお、ティーエスワンのOD錠は同薬のカプセル剤と同等の薬物動態を示すことが確認されており、有効性や安全性も同等である。単剤で使用した場合の主な副作用には、骨髄抑制(白血球減少、貧血、血小板減少)、嘔気・嘔吐、下痢、口内炎などがある。中でも頻度が高いのは骨髄抑制で、原則として2週間に1度、血液検査を行い、グレード3以上の白血球減少などが認められた場合は休薬・減量を考慮する。程度の差はあれ治療中は免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなるため、手洗いやうがいなどの感染症予防策を講じるよう指導する。

 また、空腹時に服用するとティーエスワンの成分のうちオテラシルの吸収が増加し、5FUから活性代謝物への変換がより抑制されて抗腫瘍効果が減弱する恐れがあるため、必ず食後30分以内に服用する。飲み忘れた場合はその回は服用せず、次回には指示量を服用し、決して倍量を飲まないよう念を押す。特に今回のような剤形変更時には、変更前に処方されていたカプセル剤が余っていないかを必ず確認し、仮に余っていても「もったいないから」と今回処方されたOD錠と一緒に飲むことのないよう注意を促しておく。治療が長期にわたるため、こうした注意点を繰り返し説明して、安全に服薬を続けられるよう支援することが大切である。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 抗癌剤を口の中で溶かすと、口の粘膜などを痛めるのではないかとご心配なのですね。ですが、ティーエスワンは口の粘膜からは吸収されないことが確かめられていますのでご安心ください。このお薬にはピーチ味が付いていて、水なしで、口の中で溶かして飲めます。でも味などが気になるようなら、普通の薬のように水で飲んでも効果は変わりませんので、飲みやすい方法で服用してください。

 前回もご説明しましたが、このお薬は量を守って服用することがとても大切です。もしカプセル剤が余っていても、決して今回の錠剤と一緒に飲んではいけません。飲み忘れた場合も、次回に倍の量を飲んではいけません。服用中は免疫力が下がりますから、かぜなどにかからないよう、人混みを避け、手洗い、うがいを頻回に行うようにしてください。

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