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特集:認知症
処方箋チェックの勘所
日経DI2014年3月号

2014/03/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年3月号 No.197

 認知症患者は増えている。厚生労働省が2013年6月に公表した「認知症有病率調査」では、2012年の認知症患者は462万人を超えたと推計されている。今後、認知症患者の処方箋を受け付ける機会は間違いなく増える。

 あなたの薬局では、認知症患者に十分対応できているだろうか。抗認知症薬は劇的な効果が得られる薬ではない。また、認知症に伴う周辺症状(BPSD)に使われる向精神薬は、医師の処方意図が読みにくく疑義照会や処方提案もしづらい。このため、積極的に関与する機会を失いがちだ。

 しかし、だからこそ薬剤師の介入が求められている。医師は“Do処方”を続けがちだが、病状が進行すると飲めなくなるケースは多い。あるいは、薬で神経系副作用が生じ、患者家族や医師が困ることもたびたびあるのだ。

 認知症の診療に詳しい八千代病院(愛知県安城市)神経内科部長の川畑信也氏は「薬剤師には、認知症に詳しくなくても、できる範囲で関与してほしい。患者が飲みやすいように剤形や服用時点を変更するなどの工夫には、スキルをすぐに生かせるはず。そうした提案を専門家の視点で行ってもらえると、医師は大いに助かる」と語る。

 薬局の窓口でも“できること”は多い。認知症に使われる薬の基本を知れば、服薬指導や、医師への積極的な提案に生かせる。認知症関連薬のポイントを、もう一度押さえておこう。

キホン1
中核症状に使う4種の薬、処方手順や併用薬に注意

 認知症の症状は中核症状(物忘れ、失語など)と周辺症状(BPSD:暴力、幻覚、睡眠障害など)に分かれる。まずは、中核症状に関する薬の基本からおさらいしよう。

 中核症状には、ドネペジル塩酸塩(商品名アリセプト他)をはじめとする3種のコリンエステラーゼ阻害薬と、NMDA受容体拮抗薬のメマンチン塩酸塩(メマリー)が使われる。いずれも認知症の進展を抑制するが、作用のタイプは異なる。

 図1の通り、コリン作用を増強させるコリンエステラーゼ阻害薬は、「患者を活発化させる薬」だ。一方、NMDA受容体の過活動を抑えるメマンチンは「感情を安定化させる薬」に分類される。川畑氏は「おとなしいタイプの認知症にはコリンエステラーゼ阻害薬、易怒性など活発な症状を示す認知症にはメマンチンといった使い分けが行われる」と話す。

 抗認知症薬それぞれの特徴を表1にまとめた。押さえておきたいのは、処方手順、相互作用、主な副作用だ。

 抗認知症薬は増量するタイミングや期間が決まっており、ここから外れた場合には、その理由を医師に確認したい。特にドネペジルは3mgで1~2週間投与した後は5mgに増量しなければならないが、3mgの低用量処方が続くこともある(下掲囲み記事)。

 次に、相互作用や副作用について。コリンエステラーゼ阻害薬は薬理作用から推測できる通り、抗コリン作用の強い薬(下掲囲み記事)やコリン賦活薬と相性が悪い。主な副作用も、コリン作動性が高まることに伴う、悪心などの消化器症状や徐脈などの心血管症状が中心だ。一方、メマンチンではドパミン作動薬などと相性が悪い。副作用として眠気やめまいがあり、転倒に気を付けるよう十分な説明を要する。なお、この副作用を逆手に取り、夜に服用させてBPSD(不眠など)がある患者の夜間の鎮静を図る医師もいる。

 薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)も無視できない。高齢者は少しの相互作用で薬物動態が大きく変わることが多く、副作用が生じる閾値が低いからだ。14員環系マクロライドなど、CYPへの影響が大きい薬剤が併用される場合は、念のために相互作用の可能性を薬歴に書き留めておきたい。

 なお、ドネペジルは苦味が強いため、服用を拒否する患者もいる。その場合には剤形などの工夫が必要だ。メーカーは推奨していないが、現場では食事に混入させて服用させるなどの方法が取られる。また、苦味が少ないとされる製品(ドネペジル塩酸塩OD錠『オーハラ』など)を選ぶのも検討に値する。

図1 認知症治療薬の位置付け(川畑氏による)

表1 アルツハイマー型認知症治療薬の特徴

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レビー小体型、血管性の認知症に使われる薬とは?

●レビー小体型認知症
 レビー小体型認知症は一般に薬剤過敏性が高く、処方される治療薬の種類はアルツハイマー型認知症と大きく変わらないが、いずれも低用量で投与すべきなのが特徴。レビー小体型認知症の特有の症状としてパーキンソニズムがあり、その治療のためにレボドパやドパミンアゴニストなどが用いられることも多い。

 よく知られている処方としてはドネペジル低用量(0.5~3mg)があり、2週間以上3mgの処方が続いている場合は、レビー小体型認知症の患者である可能性も念頭に置く。また査定を避けるため、3mg錠だけでなく、5mg錠を半分に割って倍の日数で調剤するよう医師が指示するケースも(5mg×14日分→2.5mg×28日分など)。なお「アリセプト」に関して、13年10月にレビー小体型認知症に対する適応拡大申請がなされており、今後使用頻度が高まる可能性がある。ガイドラインでは、ドネペジル、リバスチグミン、メマンチンがグレードBで推奨されている(保険適用外)。BPSDにはクエチアピン、オランザピン、抑肝散がグレードC1。

●血管性認知症
 主な治療薬はアルツハイマー型認知症とさほど変わらず、コリンエステラーゼ阻害薬3種とメマンチンの処方がガイドラインで推奨されており(保険適用外)、リバスチグミンがグレードC1である以外は、いずれもグレードB。BPSD治療薬としてはリスペリドンなどの非定型抗精神病薬、バルプロ酸やカルバマゼピンなどの抗てんかん薬、意欲低下にニセルゴリン(サアミオン他)、アマンタジンなど。そのほか、チアプリド、イブジラスト(ケタス他)、イフェンプロジル(セロクラール他)などの脳循環代謝改善薬が使用されることもある。

「薬のせいで認知症」を見逃すな

 患者が本当に認知症かどうか疑うことも忘れてはならない。薬剤が原因で認知機能が低下したり、BPSD様の症状(特にせん妄など)が出て、認知症と誤解されるケースは多いからだ。

 国立長寿医療研究センター薬剤部の小出由美子氏は、「薬剤性の認知機能低下かどうかを探るには、薬が追加または変更されたタイミングと症状出現時期が重ならないか注意しておく」と語る。

 認知機能低下を誘発しやすい薬剤としては、向精神薬が代表的だが、向精神薬以外にも、循環器病薬、鎮痛薬、ステロイド、過活動膀胱治療薬、消化器病薬、抗アレルギー薬など様々ある。特に抗コリン作用の強い薬は要注意だ。「高齢者では抗コリン作用のある薬が多種類上乗せされやすいが、その場合、抗コリン作用が相加してさらにリスクが高まる」と小出氏は指摘する。

 抗コリン作用の強い薬剤は多数あるが、表5のデータは参考になる。これは、抗コリン作用を持つ代表的な薬について、その強さを点数化したもの。抗アレルギー薬のクロルフェニラミン、消化器病薬のシメチジンなど、一般的な薬剤も相当数ある。

 小出氏は、「表に示された薬剤と同系薬には抗コリン作用の強いものが多い。そのような薬剤が重複しているなら、薬剤を中止または変更して患者の様子を見れば、認知症との鑑別にも役立つ」と語っている。

表5 抗コリン作用リスクスケール

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キホン2
BPSDの治療薬は症状と合っているか確認

 次に、BPSDの治療薬を見ていこう。BPSDの治療に使われる薬は多様で、処方意図も理解しにくい。それでも、BPSDに対する処方の基本を押さえていけば、適切な服薬指導に生かせる。

 BPSDには抗精神病薬、抗不安薬などの向精神薬が使われるが、それぞれどのような症状に対応するかを図2にまとめた。川畑氏は「BPSDのタイプと使用する薬剤が合わないと、効果が期待できないだけでなく、副作用で状態が悪化する恐れもある」と話す。

 認知症のガイドライン(日本神経学会『認知症疾患治療ガイドライン2010コンパクト版2012』、以下ガイドライン)で、BPSDに対して向精神薬がどのように推奨されているかをまとめたのが表2だ。グレードA(強い科学的根拠があり、行うよう勧められる)の薬はなく、いずれもグレードB(科学的根拠があり、行うよう勧められる)以下となっている。

 日本ではベンゾジアゼピン(BZ)系抗不安薬の処方頻度が非常に高いが、BZ系抗不安薬はガイドラインで「軽度の不安症状に、時に有用である。中等度から高度の認知症では推奨されない」と記載されている。また、同じく頻用されるBZ系睡眠薬も、睡眠障害に対して「あまり推奨されない」と注記されていることは知っておこう。

図2 向精神薬と対応するBPSDの原則(川畑氏による)

表2 BPSD治療薬のガイドラインにおける推奨度

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キホン3
よく使われるBPSD治療薬を知っておく

 とはいえ、実際の臨床はガイドライン通りにはいかない。BPSD治療薬の選択は医師によって様々だ。そこで、実処方で多く使われる薬剤を表3にまとめた。これはファーマホールディング(札幌市中央区)の北海道内111店舗の処方箋データを集計したもので、抗認知症薬4種のいずれかを服用している患者に出された向精神薬の数を抜き出した。最も処方頻度が高いのはゾルピデム酒石酸塩(マイスリー他)で、抑肝散、エチゾラム、ブロチゾラム(レンドルミン他)と続く。

 幾つかの抗精神病薬が比較的上位に位置するのは興味深い。抗精神病薬は、錐体外路症状などの副作用への懸念から処方をためらう医師が少なくないが、処方しやすいはずの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などと比較しても多い。BPSDで困るのはうつ症状よりも活発な症状、という実態が反映されているのかもしれない。

 一方、抗パーキンソン病薬の処方も目立つ。パーキンソン病やレビー小体型認知症に処方される以外に、抗精神病薬の副作用として出る錐体外路症状の抑制を目的に多用されていることがうかがえる。抗精神病薬と抗パーキンソン病薬を同時に処方されている場合には、抗精神病薬が漫然と投与されていないか、用量は適切か、休薬(漸減の方針など)が考慮されているかなどを確認しておきたい。

表3 処方頻度が高いBPSD治療薬TOP50(ファーマホールディングのデータを基に編集部で作成)

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よく使われるBPSD治療薬の主な注意点は?

表3で上位に位置する使用頻度の高い薬剤について、調剤時の注意点などを、精神科薬物療法認定薬剤師の大岩眞二氏(ハーブ調剤薬局[愛知県稲沢市]管理薬剤師)と、在宅医療の経験が豊富な笠松喜代美氏(三光薬局大崎店[東京都品川区]管理薬剤師)にコメントしてもらった。

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キホン4
BPSD治療薬調剤時の注意点を押さえる

 では、処方箋を受け付けた際に注意すべき点をまとめてみよう。

 「高齢者への処方の原則として、small dose(少量)、short duration(短期間)、simple pharmacy(単純)の“3S”が重要だ」と語るのは、BPSDの治療に詳しい国立長寿医療研究センター行動・心理療法部長の服部英幸氏。服部氏は『BPSD初期対応ガイドライン』(ライフ・サイエンス、2012)の著者でもある。

 特に、用量が重要だという。「高齢者に向精神薬を最初から高用量で投与すると副作用が出やすい」(服部氏)からだ。抗精神病薬を一般成人の用量で処方し、出てしまった副作用を抑えるためにさらに他の薬を追加、そのまま継続というパターンは多い。本来は少量から使用し、症状が収まれば休薬方法も検討しなければならない。

 なお、用量に関しては、2013年7月に厚生労働省から「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」が出ており、「リスペリドン(リスパダール他)は0.5mgから」「クエチアピンフマル酸塩(セロクエル他)は25mgから」などと具体的に記載されているため、参照したい。

抗精神病薬は副作用を薬剤ごとに予想して備える
 グループ別に見ていこう。まずは、副作用が特徴的な抗精神病薬から。処方の中心はリスペリドンやクエチアピンなどの非定型抗精神病薬で、定型抗精神病薬に比べて副作用が少ないとされる。この2剤に、ハロペリドール(セレネース他)、ペロスピロン塩酸塩(ルーラン他)を加えた4剤は、2011年9月28日の厚労省通知で「器質性疾患に伴うせん妄、精神運動興奮状態、易怒性」に適応外処方が可能になっており、BPSDに使用しても査定されにくい。

 なお、表3で定型抗精神病薬であるチアプリド塩酸塩(グラマリール他)が上位に挙がるが、「チアプリドは昔からせん妄に適応があり使われた。その経験を基に使用する医師が多いのではないか」(服部氏)と推測される。

 抗精神病薬が処方された場合、どこに注意すべきか。向精神薬に詳しい、いしい記念病院(山口県岩国市)内科の長嶺敬彦氏は「各薬剤に特徴的な副作用をチェックしてほしい。抗精神病薬は効果の強さに関してはどれも大きく変わらない。しかし、ドパミン2受容体以外の受容体に対する影響が各薬剤で大幅に異なり、副作用の出方にそれが表れる」という。

 表4に、米国精神病学会の統合失調症診療ガイドラインにある、各抗精神病薬の副作用の出やすさを示した。これらを基にすれば、服薬指導時に重点的に説明する内容や、患者家族に何を聞くべきか、優先順位が見えてくる。

 処方に関して長嶺氏は、「リスペリドンは日本での使用経験が豊富で、アリピプラゾール(エビリファイ)は過剰なドパミン低下状態を防ぐ作用があり副作用が少ないことから、比較的使われやすい」と語る。

 なお、抗精神病薬は一般に高齢者の死亡リスクを高めるとされており、症状が収まれば休薬しなければならず、漫然と投与されている場合は要注意だ。休薬の方法は、国立精神・神経医療研究センターが2013年10月に「SCAP法による抗精神病薬減量支援シート」を公開しており、参考になる。

表4 抗精神病薬の主な副作用に関する特徴

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睡眠薬と抗不安薬は作用時間と服用期間を見る
 睡眠薬は主にBZ系か非BZ系か、あるいは作用時間によって分類されるが、認知症の高齢者向けに調剤する際に注意しておきたい基本的なポイントもその2つだ。

 BZ系薬は非BZ薬に比べて効果が強く、筋弛緩作用による転倒リスクがあるほか、依存も生じやすい。そのため、通常は非BZ系薬が推奨される。

 また、作用時間が短いものから使うのが基本。服部氏は「作用時間が長いものは、催眠効果が朝まで持ち越してしまう恐れがあるため、基本的には避けたい。私は超短時間型を基本にし、長く効くものでもブロチゾラム(レンドルミン他)程度にしている。強い不眠に限り最後の切り札としてフルニトラゼパム(サイレース他)を使用する。非BZ系の中では新しい機序のラメルテオン(ロゼレム他)もよく使うが、頑固な不眠には効きにくい印象だ」と語る。

 ほかに、睡眠障害のタイプによっても使い分けがある。入眠障害には超短時間型、早朝覚醒には長時間型、中途覚醒にはその中間、といった具合だ。

 もっとも、薬が効かず長時間型に変更されるなど、上記原則と一致しない患者もいる。そのような患者でふらつきなどが出ているようなら、転倒のリスクを考え医師に伝える必要があるだろう。

 なお、睡眠薬は休薬にも注意を要する。いきなり中断すると激しい離脱症状が出て、休薬が困難になる場合もある。睡眠薬の漸減方法は様々だが、BZ系薬の場合、半錠~4分の1錠ずつ、1~2週間ごとに様子を見ながら減らしていく(複数種類飲んでいる場合は短時間作用型から)など、緩徐な減量が一般的だ。患者が減量に不安を覚えないよう、薬局でのケアも重要となる。

 抗不安薬では最低限、薬歴やお薬手帳などで服用期間を確認したい。BZ系薬は長期連用すると、中断するのに困難を伴うからだ。薬剤耐性や脱抑制などを来して患者家族が困り、薬をさらに重ねるという悪循環に陥りやすい。服部氏は「BZ系抗不安薬の使用は、可能な限り1~2カ月などの短期間に留めるべき。症状が落ち着けば頓用にするなど、徐々に減らしていく工夫も必要だろう」と語る。

 また、抗不安薬は筋弛緩作用が少ないものが無難だ。よく選ぶ抗不安薬として服部氏は、「私はクロチアゼパム(リーゼ他)とロフラゼプ酸エチル(メイラックス他)を使う。両剤とも作用が比較的マイルドで、用量も調整しやすく感じる。また、ロラゼパム(ワイパックス他)もCYPの代謝を受けないため、肝機能が低下しがちな高齢者に使いやすい」と話す。

SSRIなどの抗うつ薬はCYPや中止時離脱症状を
 抗うつ薬に関しては、SSRIやセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)が主に使用される。特にSNRIはノルアドレナリン濃度上昇が意欲低下に効果を示すとされ、処方頻度が高まりつつあるようだ。これらの薬剤は従来の三環系抗うつ薬などに比べて抗コリン作用などの副作用が少ないが、注意したい点も幾つかある。

 長嶺氏は「抗うつ薬の効果も抗精神病薬と同様に、個人差はあるが全体として大きな差はない。注意したいのは、CYP阻害、離脱症状、電解質異常だ」と語る。SSRIには、CYPで代謝される薬剤が少なくない。例えばフルボキサミンマレイン酸塩(ルボックス他)は多種類のCYP阻害作用があり注意が必要だ。長嶺氏は「塩酸セルトラリン(ジェイゾロフト)とエスシタロプラムシュウ酸塩(レクサプロ)はCYPの関与が少ないため、多剤併用を行う高齢者では比較的安全な方だ」と語る。

 また、BPSDが収まって中止する際、離脱症状が出る可能性があるため、漸減する必要がある。「特にパロキセチン塩酸塩(パキシル他)は作用時間が短いため離脱症状が出やすく、減量時には慎重に行う」(長嶺氏)。

 電解質異常は低ナトリウム血症が主で、機序は抗利尿ホルモンの分泌が関与するとされる。患者に動作緩慢化や痙攣発作などが出た場合は医療機関を受診するよう、注意を促したい。

認知症に適応外処方され得る向精神薬以外の薬剤
(AIメディカル・ラボの藤原豊博氏による)

●ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
 アルツハイマー型認知症(AD)の患者では脳脊髄液中のアンジオテンシン変換酵素(ACE)活性が亢進しており、過剰産生されるアンジオテンシン(AT)2が脳神経細胞からのアセチルコリン遊離を抑制していると考えられている。ぺリンドプリル(コバシル他)やカプトプリル(カプトリル他)などの脳移行性ACE阻害薬は非移行性ACE阻害薬に比べてAD発症率を有意に低下させるとの報告がある。

 ARBのバルサルタン(ディオバン他)は、AT1受容体を選択的にブロックすることでAT2やAT4受容体を刺激し、そのシグナルが神経保護や神経再生に関与することが明らかにされている。そして、降圧効果とは独立して認知機能を改善させることも確認されている。(出典:大類孝、医学のあゆみ2011;239:413-7)

●イコサペント酸エチル(EPA)
 EPA(エパデール)販売元の持田製薬がアルツハイマー型認知症患者を対象に臨床試験を行ったところ、全般的な有効性を示す患者が多数認められたものの、有意な有効性が得られなかったことから、開発を進めていない。また、米国でもEPA、DHAに認知症予防効果が認められなかったと報告されている(Neurology. 2013 Oct 22;81(17):1484-91.)。従って、サプリメント的な意味合いによる処方が考えられる。

●シロスタゾール
 シロスタゾール(プレタール他)は嚥下機能低下患者に対する嚥下反射改善を狙った適応外処方がよく知られているが、血管性危険因子を持つ認知症の一部にも有効性が認められており、適応外処方される可能性がある。機序としては、認知や記憶に関与するcAMP応答配列結合蛋白(CREB)のリン酸化を亢進させる作用が考えられている(アミロイドβ蛋白はCREBのリン酸化を阻害する)。

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