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医師が語る 処方箋の裏側
くる病だけじゃない! 乳児ビタミンD欠乏の症状とは
日経DI2014年2月号

2014/02/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年2月号 No.196

 この処方箋は、乳児にビタミンDを投与するシンプルな内容である。処方内容から、まずくる病を想起するだろう。しかし患者は救急車で来院し入院した。くる病で救急搬送されることはあまり考えられないとすれば、どのような症状だったか想像できるだろうか。

 答えは痙攣である。ビタミンD欠乏の病態として、くる病以外に低カルシウム血症による痙攣も生じ得ることを知っていてほしい。

 一般に乳児の痙攣は約9割が熱性痙攣で、多くの場合投薬などの必要はない。1割未満は無熱性の痙攣で、原因の多くはてんかんであり、残りの原因に低血糖や低カルシウム血症などが挙がる。また通常の熱性痙攣は1分前後で収まるが、痙攣が10~15分と長く持続する場合は要注意で、神経系の異常以外に代謝異常を疑う必要がある。

 患児の血液検査結果は、血清Ca値が5.7mg/dL(正常下限8.5mg/dL)とかなり低く、血清ビタミンD(25-[OH]D)値も5ng/mL未満(同10ng/mL)で同様だった。血清Ca値を上昇させる副甲状腺ホルモン(PTH)は75pg/mLで軽度上昇を示していた。これらから、ビタミンD欠乏による低カルシウム血症であると診断された。入院後はカルシウムとビタミンDの補充が行われ、退院後はビタミンDのみの処方となった。

 新生児のビタミンD欠乏はよく見られ、新生児全体の3割以上が正常下限値を下回るとの報告もある。また、一般に母乳中のビタミンD含有量は人工乳の1割以下しかなく、完全母乳栄養で育てられる乳児ではビタミンDが欠乏しがちである。実際、人工乳のみ、または人工乳と母乳を併用している乳児では、ビタミンD欠乏を来す頻度は低い。つまり、乳児のビタミンD欠乏は、完全母乳栄養かつ生後6カ月以内に多く見られるのが特徴といえる。

 昨今、日光を避ける女性が増えている。完全母乳栄養で育児中の母親には、子どもとともに日光を浴びたり、ビタミンDを多く含む食事を取るよう生活指導してほしい。(談)

井原 健二氏
Ihara Kenji
九州大学病院総合周産期母子医療センター(小児科)准教授。1989年九州大学医学部卒。同大学病院助手、米国ワシントン大学医学部客員准教授などを経て、2010年から現職。医学博士。専門は小児内分泌疾患など。

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