DI Onlineのロゴ画像

いまさら聞けない栄養の話
低糖質ダイエットの長期的な安全性は不明
日経DI2014年2月号

2014/02/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年2月号 No.196

太田 篤胤 Atsutane Ohta
城西国際大学薬学部教授
東京農工大学卒業。テルモ、明治製菓を経て、2004年から現職。「オリゴ糖のミネラル吸収促進作用」の研究で、トクホを商品化した経歴を持つ。趣味はフルマラソン。

 低糖質ダイエットは、炭水化物の摂取を極端に減らし、主に蛋白質と脂質でカロリーを摂取するダイエット法。短期間で高い減量効果が得られるとして人気がある。炭水化物をほとんど摂取しないことで、糖質の代わりに脂肪や蛋白質がエネルギーとして使われる状態を誘導する。興味深いのは、このダイエットは、インスリン抵抗性が高い人で特に効果が高いことだ。

脂肪が使われやすくなる

 Ebbelingらが、肥満症の若い成人において、糖質を制限した場合と、脂質を制限した場合の減量効果を比較したところ、インスリン抵抗性が高い肥満症の患者で、特に低糖質ダイエットが効果的であることが分かった(図)(参考文献1)。

図 体重の変化

画像のタップで拡大表示

 インスリンは血糖値を下げる作用のほか、余ったエネルギーを脂肪として蓄積する作用や脂肪の分解を抑制する作用がある。炭水化物の摂取量を減らしてインスリン分泌を抑制すると、余ったエネルギーが脂肪として蓄積されにくくなる、脂肪がエネルギーとして使われやすくなるなどの効果が期待できる。インスリン抵抗性が高い、すなわち、血中インスリン濃度が高い患者の方が、低炭水化物食による体重減少効果が大きいのはこうした理由によると考えられている。

 一方、低糖質ダイエットを長期的に実践した場合の安全性を疑問視する声は以前から多く、近年も様々な研究結果が報告されている。例えば、2013年に報告されたメタ解析では、低炭水化物食を遵守している人は、そうでない人に比べて総死亡リスクが有意に高く(リスク比1.31 [1.07-1.59] p=0.007)、心血管疾患による死亡リスクも高いことが明らかになった(リスク比1.10[0.98-1.24] p=0.12)(参考文献2)。

 原因としては、果物や根菜類などの摂取の減少による食物繊維の摂取量の減少や、動物性食材の摂取の増加に伴う飽和脂肪酸やコレステロールなどの摂取量の増加が指摘されている。

 炭水化物が多い主食である米飯を食べないだけではなく、様々な食材の炭水化物量を気にして食べないようにすると、食事に使える食材の種類が大きく制限されてしまう。こうした偏った食事の長期摂取が、健康リスクを高める可能性もあるだろう。

参考文献
1)JAMA 2007; 297: 2092-102.
2)Plos One 2013;8:e55030.

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ