DI Onlineのロゴ画像

CaseStudy
レモン薬局大島店(東京都江東区)
日経DI2014年2月号

2014/02/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年2月号 No.196

 「後発医薬品の調剤では確認すべき事項が多いため、思わぬミスが起こりやすい。そこで開局から2年以上かけて薬局内のルールを徹底したら、調剤時のミスはほとんど起こらなくなった」。こう話すのは、レモン薬局大島店(東京都江東区)店長の新舎美貴氏。

「ミスが起こりやすい後発品の調剤について、業務の中で負担なく取り組めるような対策を考えた」と話すレモン薬局大島店の新舎美貴氏。
写真:秋元 忍

 近年、政府は全医療用医薬品に対する後発品の数量シェアの目標を掲げて、その使用を推進している。そのために処方箋様式が度々変更されるなど、業務フローが複雑化して、ミスが起こりやすい環境にある。

 「ミスが起こりやすいのは、薬を取りそろえる前で、スタッフ間の情報共有や患者への確認がうまくできていなかった場合が多い」と新舎氏は話す。同店を経営する医療サービス研究所(東京都品川区)によるインシデント集計でも、こうした傾向がみられている(下掲記事)。

 レモン薬局大島店は、約90施設の医療機関から、幅広い診療科の処方箋を応需している。また、処方箋の6割以上が後発品への変更が可能なものであるため、薬局にはミスのない、きめ細かい対応が求められている。

 そこで、同薬局では調剤業務に3つの対策を講じて、ミスを防いでいる。「いずれも現場の負担がないように、手間とコストはできるだけ掛けないことを重視して、取り組んでいる」と新舎氏は話す。

受付時に希望を詳しく聴取

 第1の対策は、後発品への変更調剤で重要な「患者の希望」を正しく把握すること。(対策1)

 患者の希望を正確に聞き出し、薬局内で情報を共有しておかないと、確認作業で待ち時間が長くなったり、誤った薬剤の交付によるトラブルが起こる。

 レモン薬局大島店では、初回の質問票で、後発品調剤の希望だけでなく、希望しない場合の理由まで聞いている。理由を聴取しておくことで、それぞれの患者に合わせた対応が可能になる。

 例えば、質問票を留めたクリップボードに、あらかじめ後発品説明用の資料を挟んでおき、後発品について「よく分からないから希望しない」と答えた患者には、薬剤師がすぐに説明できるようにしている。

 「品質に不安がある」という患者には、その意思を十分に聞いて、後発品をまだ使ったことがないのであれば、“試行的に”使ってもらい、次回来局時に感想を聞いて、良ければ継続的に使用、気に入らなければ先発品に変更といった対応を取る。

 また、後発品に変えても「あまり安くならないため希望しない」と答えた患者には、具体的な価格差を伝えてみて、例えば「14日分で100円以上差があるなら後発品がいい」といった患者のコメントまで得られたなら、その情報も記録しておく。

対策1
質問票で患者の希望と理由を詳しく聴取

画像のタップで拡大表示

後発品調剤の希望の有無だけでなく、希望しない理由まで聞く(1)。品質に不安を感じるという患者には、先発品と同一成分であることなどを説明。「一部負担金が先発品と後発品で変わらないから」という患者には、調剤前に差額を伝えて薦めてみる。 聴取した内容は、薬歴に記録。

GEの欄を処方箋に押印

 レモン薬局大島店が徹底している2番目の対策は、処方箋のコピーを使った調剤時の情報共有だ(対策2)。

 後発品に変更調剤すると、処方箋の記載内容と、実際に調剤する薬剤の製品名が、異なる事態が生じる。処方箋の受付、薬の取りそろえ、鑑査、交付といった各担当者が正確に情報を共有しないと、確認作業に手間取る。

 そこで、同店では、後発品に対する患者の意向を示すための枠(GE欄)を処方箋のコピーにゴム印で押して、誰もが一目で把握できるような記載方法に統一している。

 調剤を担当する薬剤師は、処方箋のコピーを受け取ると、このゴム印を押して、薬歴を確認し、患者の希望を記入する。後発品への希望ありの患者では「○」、希望なしは「×」、特定の薬剤の場合に後発品を希望しているような患者では、「その都度」の意味で「ツド」と記入し、「メリスロンのみ先発」などと詳細を書き込む。

 次に、再び薬歴の前回処方などを確認しながら、実際に調剤する薬剤を選ぶ。一般名や「後発品への変更可」とされている処方箋では、特に注意が必要で、処方箋のコピーには、調剤する薬剤名を赤字で分かりやすく書き、さらに目立つように蛍光色のペンで強調する。

 前回と同様の処方内容の場合、処方箋の右上に分かりやすく、「Do」と書いておくのも重要だ。これは「薬歴を確認済みである」いう意味もある。また、交付を担当する薬剤師が患者に「前回と同じお薬ですね」などと一緒に薬を確認する際にも役立つ。

対策2
誰でも分かるように処方箋コピーに記入

画像のタップで拡大表示

薬歴の表書きには、質問票や口頭で確認した情報を書く(1)。調剤担当者は、処方箋のコピーに後発品の意向を示す枠(GE欄)(2)を押印し、薬歴を見てGE欄に「○」(希望あり)、「×」(希望なし)などと記入。前回と同様の処方なら右上に「Do」と書く(3)。調剤する製品名を書き、目立つようにマーカーを引く(4)。

頭に【GE】で注意促す

 3番目の対策は、後発品であることを強調した表示を徹底すること。

 レセコン上などで先発品と後発品が並んでいると、見間違えやすく、入力ミスなどが発生しかねない。

 そこでレセコンや薬歴に登録されている製品名は、後発品の場合、全て先頭に「【GE】」を入れている(対策3)。GEを隅付きカッコで囲んでいるのは、より視認性を高めるためだ。

 散剤を計量する電子天秤も、薬剤のバーコードをリーダーにかざすと、液晶画面には「【GE】+製品名」が表示されるように設定した。

 また、薬袋、薬剤情報提供文書、お薬手帳用のシールのデータは、レセコンと連動しているため、全て【GE】付きで印字される。

 このようにすると、最終鑑査時に処方箋や薬剤と照合するのがスムーズになるだけでなく、交付時にも患者と一緒に確認しやすい。

対策3
後発品の製品名の先頭には全て「【GE】」

画像のタップで拡大表示

調剤する薬剤を選択するレセコンのデータ(写真上)、薬袋やお薬手帳のシール(右)などは、後発品の製品名の先頭に「【GE】」が付く設定で統一している(1)。鑑査や交付時の確認もスムーズになる。

店舗内はノートで情報共有

 以上のような調剤室内の対策を講じても、ミスは完全にはなくならない。

 そこで、レモン薬局大島店では、ミスを減らす環境作りの一環として、全スタッフが目を通す「連絡ノート」を作成。細かいミスでも記録し、再発防止のための情報共有に念を入れている。

 新舎氏は、「ミスが起こると、その内容だけに注目しがちになるが、それでは解決にならない。業務全体でミスが起こりやすい状況になっている可能性があるので、業務フローを見直したり、改善できることを今後も考えていきたい」と話している。(河野 紀子)

全社のインシデント報告はオンラインで共有

 レモン薬局大島店を経営する医療サービス研究所では、全19店舗で後発品調剤時に発生したインシデント事例を集計し、業務改善に生かしている。

 集計で役立っているのは、インターネットで共有化したアンケート形式の報告書。アンケートには、(1)発生・発覚した日付と時刻、(2)本来交付すべき薬剤と誤って交付した薬剤、(3)発覚のきっかけ、(4)事故レベル、(5)患者対応、(6)発生した経緯─などを記入する。

 これを第1報(ブリーフリポート)として入力すると、その内容が、社内の医療安全対策委員会のメンバー、エリアマネジャー、事業部長、社長にメールで自動配信される。その後、再発防止策も含めて、医療安全対策委員会にフルリポートが報告される仕組みだ。2012年7月からこの運用を開始し、これまでに図Aに挙げた種類のインシデントが複数報告された。

 同社の平均後発品調剤率は約30%で、この2年間で10%以上伸びている。同社薬局事業部サービスマネージャーの舟橋智広氏(写真)は、「後発品調剤率が伸びると、インシデントは起こりやすくなる。大島店をはじめとした各店舗の対策を他店でも生かせるように、業務の標準化やルール作りを進めていきたい」という。

図A 医療サービス研究所での後発品のインシデント事例

画像のタップで拡大表示

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ