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特集:全身性貼付薬の使い方指導
〔Step3〕製剤特性に応じた個別指導
日経DI2014年2月

2014/02/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年2月号 No.196

 ツロブテロールの貼付薬は、気管支喘息や小児の感冒などに対し広く使用されているおなじみの薬。交付時に、メーカーが配布している説明書を渡して終わりという場合も少なくないかもしれないが、服薬指導で気を付けるべき点は多い。

 ツロブテロールの貼付薬の処方を受けたらまず確認すべきなのが、β2刺激薬の重複だ。同薬にメプチン(プロカテロール塩酸塩水和物)などの経口β2刺激薬が重ねて出るケースは多い。

 いながき薬局の稲垣氏は、「あえてこうした処方をする医師もいるが、どちらも常用する処方の場合は、β2刺激薬の過量投与になる恐れがあるため、疑義照会で医師に処方意図を確認し、そのことを薬歴に残すべき」と話す。

いながき薬局の稲垣美知代氏は、「β2刺激薬の重複と副作用の動悸と振戦に特に注意」と話す。

動悸と振戦は必ず説明

 一方、副作用で最も多いのはかぶれ。2番目に多いのが動悸と手のふるえ(振戦)だ。最近のβ2刺激薬は、β2選択性が高いため、β1受容体を介する心刺激は少なくなっているが、β2受容体を介する振戦は残っている。これは、貼付薬も同じこと。ホクナリンテープでは、承認時の成人の安全性評価対象例601例中、主な副作用として、振戦23件(3.8%)、心悸亢進16件(2.7%)が報告されている。

 「特に小児は、動悸や振戦の症状を訴えることができないので注意が必要。母親から『この薬、手が震えるんですね』といわれてドキッとしたことが何度かある」と稲垣氏は話す。

 ファルコはやぶさ薬局四条烏丸店の吉田氏も、動悸と振戦の副作用の説明は、初回に必ず行っている。

 「副作用を伝えると怖がって使ってくれなくなる心配もあるが、この2点は必ず伝える」と吉田氏。同時に、対処法も伝えることが重要。「起きても剥がしてしばらくすれば収まる」と伝えておくと、患者や家族は冷静に対応できる。

投薬時に貼付、初日は2枚

 ツロブテロールの貼付薬は、24時間ごとに貼り替える薬だが、血中濃度は貼付12時間後にピークを迎える。喘息発作や咳き込みは早朝に起こることが多いので、夕方から夜に貼り替える使い方が基本だ。一般にはお風呂のタイミングで貼り替えるよう指導するケースが多い。

 一方、処方初日の対応について、ワタナベ薬局上宮永店(大分県中津市)の松本康弘氏は、気管支狭窄の症状が出ていれば、帰宅後すぐに貼ってもらう。全身性貼付薬は効果が出るまでに時間がかかるため、できるだけ早く貼るのがいいと考えるからだ。

 松本氏は、「初日は、24時間使用せず、入浴時に貼り替えてもらい、その後は、お風呂の時に貼り替えてもらうサイクルにする」と話す。すなわち、初日は2枚使うということだ。

 患者や家族からの質問で多いのが、剥がれたときの対応。同薬の健常成人における貼付12時間後の皮膚移行は、24時間貼付時の約85%に相当する。そのため、いながき薬局では、貼付後12時間経過していれば、「お薬は体に入っているので、すぐに新しいのを貼らずに、次の時間になるまで待ってください」と患者に伝えているという。

 また、剥がれたあと、新たに再貼付したとしても、ホクナリンの経口薬を服用した場合よりも、最高血中濃度が高くなることはないので問題はないと、メーカーは説明している(図5)。

図5 再貼付時の血中濃度推移のシミュレーション

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ホクナリンテープ2mg再貼付後の血中濃度のシミュレーション。再貼付後の血中濃度は最高でも再貼付しないときの約1.3倍であり、経口(ホクナリン錠1mg)投与時の最高血中濃度と比較して、3分の2以下となる。従って、再貼付の過量投与による副作用は発現しにくいと考えられる。

話題の新・貼付薬2
ニュープロパッチ

自治医科大学の藤本健一氏

 2013年2月に発売されたニュープロパッチ(ロチゴチン)は、ドパミンアゴニストの貼付薬。適応症は、パーキンソン病と中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群。2.25mg、4.5mg、9mg、13.5mgの4規格がある。薬価は順に270.3円、416.5円、641.8円、826.5円。パーキンソン病に対しては、通常、9~36mg/日(維持量)を1日1回、肩、上腕部、腹部、側腹部、臀部、大腿部のいずれかに貼付する。

 自治医科大学神経内科准教授の藤本健一氏によると、この薬は発売当初はそれほど注目されていなかったが、実は非常によく使われているという。その理由は、有効血中濃度が長時間一定に保たれるという全身性貼付薬の特徴にあるようだ。

 パーキンソン病の治療では、ドパミンの欠乏をLドーパやドパミンアゴニストにより補うが、経口薬の場合は、徐放化製剤にしても、夜間の血中濃度が下がり症状が出やすい傾向があった。

 これに対し、ニュープロパッチは、これまでドパミン補充が難しかった夜間から早朝にも、持続的にドパミンが補充できる。その結果、夜間から早朝にドパミンが欠乏して起こる夜間症状が抑えられるのだ。

 進行期の患者にとって夜間症状は非常に辛いもの。体が動かせなくなり、筋肉が固くなり激しい苦痛を伴う。夜中に家族を起こしてトイレの介助や体位交換を頼むのも患者には心苦しい。「この症状がニュープロパッチでは抑えられると、患者は実感しているようだ」と藤本氏は話す。

 アルツハイマー型認知症の治療に用いるコリンエステラーゼ阻害薬は、現在3剤が承認されている。うち2剤は経口薬で、貼付薬はリバスチグミンのみ。日本ではノバルティスファーマと小野薬品工業が共同開発し、基剤も含めて同一の製剤を、それぞれイクセロンパッチ、リバスタッチパッチという商品名で製造販売している。

 リバスチグミンの貼付薬で最も問題となっているのが、皮膚局所の副作用。貼付部位の紅斑(43.1%)や掻痒感(40.2%)、接触皮膚炎(29.0%)などが、全身性貼付薬の中でも高頻度で生じる(表2)。皮膚炎は遷延しやすく、写真2の患者のように、背中一面にスタンプを押したように赤みが残ってしまうケースもある。

写真2 リバスチグミン貼付薬による接触皮膚炎(写真提供:工藤氏)

 「リバスチグミンの貼付薬は4週ごとに高用量のものへと替えていくが、9mg製剤を13.5mg製剤に替えたところでてきめんにかぶれる」と、約250人の認知症患者にリバスチグミンの貼付薬を処方する、くどうちあき脳神経外科クリニック(東京都大田区)院長の工藤千秋氏は述懐する。

貼付薬の上から保湿剤を

 リバスチグミンの貼付薬には外出や服薬管理、更衣など日常生活動作に関する改善作用が示されており、かぶれが出ても使い続けるケースは少なくない。かぶれの軽減には貼付前の保湿が有用で、患者向け説明書に記載されている「背中の半面ずつ左右交互に、翌日貼付薬を貼る側に保湿剤を塗る」という方法を指導している薬局が多い。しかし、この方法は「左右交互に、翌日貼る側に塗るというややこしさに介護者が混乱してしまい、保湿剤を塗るのをやめてしまうケースが少なくない」と工藤氏は指摘する。

「貼付薬の開始1週間前からしっかり保湿することで、皮膚副作用を防げる」と話す、くどうちあき脳神経外科クリニックの工藤千秋氏。

 無理なく継続できる保湿法として工藤氏が勧めるのが、貼付薬を貼ったまま、背中全面に保湿剤を塗る方法(図6)。介護者は背中のどちら側に保湿剤を塗るかを悩まずに済むため、継続しやすい。保湿と貼り替えを“時間差”で行う点もポイントで、夜に入浴する患者なら、入浴後は保湿剤の塗布のみで、貼り替えは翌朝の着替えの際に行う。この方法では貼付薬を貼ったまま入浴するが「剥がれなどの問題は起きないことを確認している」と工藤氏は言う。

図6 リバスチグミン貼付薬による皮膚炎を防ぐ保湿剤の塗り方(日本早期認知症学会誌 2013;6(1):98-102.を一部改変)

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 工藤氏らは、リバスチグミンの貼付薬を開始する1週間前から背中全面に保湿剤を塗布し、開始後は図6の要領で保湿と貼り替えを行う方法の有効性を、認知症患者66人を対象に検証。その結果、掻痒感を伴う紅斑が生じたのは3人(4.5%)のみで、63人は皮膚の副作用なしに維持量である18mgまで増量できたという。

保湿剤はたっぷり使う

 保湿剤として工藤氏が処方しているのはヒルドイドクリーム(一般名ヘパリン類似物質)。薄く擦り込むのではなく、白く残るくらいの量をたっぷりと塗る(写真3)。20gチューブ製剤を1週間で使い切るくらいの量が目安だ。その後、すぐに肌着を着せる。クリームが肌着に付くが「水溶性なので、洗濯すればきれいに落ちる」(工藤氏)。

写真3 ヒルドイドクリームの塗り方(写真提供:工藤氏)

 さらに、毎日保湿剤を塗るというステップを治療に導入することで、患者と介護者のスキンシップを深める効用もあるという。実施には介護者の理解と協力が不可欠だが、提案する価値のある方法と言えそうだ。

 フェンタニルはモルヒネ、オキシコドンと並ぶ癌性疼痛管理のキードラッグだ。フェンタニルおよびフェンタニルクエン酸塩(以下、合わせてフェンタニルと記載)の貼付薬は、有効血中濃度が持続的に得られる全身性貼付薬の特性により、安定した疼痛コントロールが行える。医療用麻薬という特殊な位置付けの薬であることから、調剤や患者指導で気を付けるべき項目は多い。

オピオイド未使用では禁忌

 フェンタニルの貼付薬の処方箋を受け取ったらまず患者に確認したいのが、オピオイド鎮痛薬の使用経験。オピオイドへの感受性は個人差が大きいため、初回は注射薬や経口薬など血中クリアランスが早い剤形で投与し、忍容性を確認するのが基本。初めてオピオイドを使用する患者に、細かい用量調節が難しく、剥がしても血中濃度がすぐに下がらない貼付薬を使うのはリスクが高い。そのため、オピオイドの使用経験がない患者へのフェンタニル貼付薬の使用は禁忌となっている。

 フロンティア薬局浅草橋店(東京都台東区)の前田桂吾氏は、「使用しているオピオイドについて患者から情報が得られなければ、疑義照会して詳細を確認すべき」と注意を促す。

慢性疼痛では確認書が必要

 デュロテップMTパッチやワンデュロパッチは、慢性疼痛に処方されることもあるので注意が必要だ。デュロテップMTパッチは2010年1月、ワンデュロパッチは13年12月に、中等度から高度の慢性疼痛への投与が可能になった。その際、適正使用を図るために、処方医への教育と確認書を用いた流通管理が義務付けられた。

 両薬の製造販売元であるヤンセンファーマが提供するeラーニングを受講し、許可を得た医師だけが同薬を慢性疼痛に処方できる。初回の処方の際に、処方箋とともに専用の確認書(写真4)を患者に交付し、患者に確認書を保管してもらう仕組みだ。

写真4 慢性疼痛へのデュロテップMT、ワンデュロパッチ処方時の確認書

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 薬局では、慢性疼痛に対してデュロテップMTパッチやワンデュロパッチが処方されている場合、必ず患者に確認書の提示を求める必要がある。患者が確認書を持参していない場合は、薬剤師がヤンセンファーマの専用の窓口に問い合わせて、処方医のeラーニングの受講歴を確認する。eラーニングを受講していない医師が処方した場合は、調剤を行ってはいけないことを必ず覚えておきたい。

呼吸抑制への対処を伝える

 フェンタニルの貼付薬で最も注意すべきなのが、副作用の過鎮静と呼吸抑制だ。これらは過量投与により薬剤の血中濃度が上がり過ぎた場合に出現する。症状が進めば死に至る恐れがあるため、症状が出たときの対応を交付時に必ず伝える必要がある。

 過鎮静や呼吸抑制が疑われる症状は、「呼吸が遅くなる」「呼吸が浅くなる」「呼吸が苦しくなる」など。国立がん研究センター中央病院薬剤部主任薬剤師の橋本浩伸氏は、これらの症状に気付いたら、まず一刻も早く貼付薬を剥がし、それから医師に連絡するように患者に伝えている。

 また、貼付薬は貼ってから効果が出るまでに時間が掛かると伝えることも重要だ。痛みが治まらないからといって貼付薬を追加すると、過量投与に陥る恐れがあるからだ。

 一方、使い方指導として、貼付部位の温度が上がるとフェンタニルの吸収量が増え、過量投与になる恐れがあることを伝えておきたい。同院薬剤部の先山奈緒美氏は、「40℃近い熱がある場合は医師に相談してほしい。暖房器具を使う場合や入浴の際には、貼付部位の温度や体温が長時間高くならないように」と説明している。

国立がん研究センター中央病院薬剤部の橋本浩伸氏(左)と先山奈緒美氏。

 さらに、薬の廃棄方法も説明する。使用済みの製剤でも粘着面には薬の成分が残っている。子どもやペットが触ると危険なので、必ず粘着面を内側にして折ってから捨てるようにしたい。

 その他、余った薬剤は医療機関や薬局で回収していることや、麻薬を患者以外の人に譲渡してはいけないことなども説明しておく必要があるだろう。

話題の新・貼付薬3
ネオキシテープ

 ネオキシテープは、2013年6月に発売された過活動膀胱の治療薬。抗コリン作用と平滑筋直接弛緩作用を併せ持ち、排尿筋過活動の改善効果を示すオキシブチニン塩酸塩の貼付薬で、基剤には特異な臭いがある。1規格(73.5mg)で薬価は189.4円。1日1回、下腹部、腰部または大腿部に貼付する。

 同成分の経口薬(商品名ポラキス他)は1988年に発売され、頻尿や切迫性尿失禁の治療薬として高い評価を得てきた。一方で、経口薬では(1)血中半減期が短いため1日3回の服用が必要、(2)口渇や便秘などの抗コリン性副作用の頻度が比較的高い─の2点が課題となっていた。ネオキシテープを久光製薬と共同販売する旭化成ファーマによると、貼付薬にすることで1日使用回数を減らすと同時に、オキシブチニンや肝代謝物の血中濃度の急激な上昇が抑えられ、抗コリン性副作用が軽減されているという。

 ただし皮膚局所の副作用発現率は高く、臨床試験では適用部位の皮膚炎が46.6%、掻痒感は2.5%に生じている。なお、経口薬は小児の夜尿症に適応外使用されることがあるが、貼付薬に小児用量はない。

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