2014年、厚生労働省が策定した国民健康づくり運動である「健康日本21」(第二次)がスタートする。その中で、健康を支え、守る社会環境の整備のための拠点の一つに、薬局が挙げられている。また、厚労省は14年度予算概算要求で「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点化を推進するモデル事業」のために、2億9202万円を計上している。ここにきて、健康を支援し相談に対応する機能を、薬局に期待する機運が高まっているといえる。その期待に応えるためにも、今年こそ薬局は、本気で「健康ステーション」となるべく機能を強化し、認知してもらえるように努力する必要があるだろう。 とはいえ現状では、いわゆる「調剤薬局」は処方箋を持たない人にとって、入りにくい場所となっているのも事実。薬局の機能を知ってもらい、気軽に足を運んでもらうには─。そのきっかけとなるのが「健康フェア」だ。 神奈川県を中心に24店舗を経営するトライアドジャパンの代表取締役社長の野澤充氏は、「処方箋を持つ患者さんだけでなく、病気になる前から薬局を利用してほしい。そう思って10年ほど前から健康フェアを実施してきた」と話す。同氏は当時、国際薬剤師・薬学連合(FIP)国際会議で、デンマークの薬局が健康測定や疾患啓発、健康相談などを行い、地域の健康を守っているとした発表を聞いて、「日本の薬局も、予防や健康増進の機能を持つべき」と考えたという。 宮崎県を中心に薬局を展開するひむかメディカル(宮崎市)も02年から健康フェアを開催。同社代表取締役の永田英徳氏は「われわれの仕事を『健康を支える』と大きく捉えたときに、薬を渡すだけでは限界があると感じた。病気にならない生活の提案も大切」と言う。そのため同社では、有志による委員会を作り、健康的なライフスタイルや食材などの提案を行ってきた。健康フェアはその一環。同社の健康フェア実行委員長でひまわり薬局小林店(宮崎県小林市)管理薬剤師の永田裕介氏は、「健康フェアは、生活を見直すきっかけにしてもらえる。また、繰り返し開催することで、健康情報のエキスパートとして薬剤師が認知されるようになってきたと思う」と手応えを語る。 集患や連携にも有効 フェアの開催は、地域の医療や介護スタッフに、薬局を知ってもらい、「健康ステーション」としてのイメージを持ってもらうのにも効果的だ。医師やリハビリスタッフ、訪問看護師に健康フェアでの講演を頼むことで、地域医療連携のきっかけにもなる。「健康フェアは、薬局が健康情報の発信基地であり、地域に貢献したいと考えていることを示すよい機会。特に、在宅医療に取り組むなら、言葉は悪いが、いい“宣伝”になる」と野澤氏は言う。 任せれば、年々充実する まず、目的やターゲットを考え、それに見合った形態と会場を設定する。例えば、健康情報を広く発信したいなら、多くの人が集まれる場所を借りて、大々的にやるのも一手だ。一方、「処方箋を持たない人に、気軽に薬局に出入りしてもらうきっかけにしたい」というのであれば、薬局を会場にして、相談コーナーなどを充実させ、来場者に薬局スタッフが身近に感じてもらえるようにするとよいだろう。 集客のための告知は必ず行いたい。薬局内へのポスター掲示や患者へのチラシ配布は必須だが、患者以外に来てもらいたいのであれば、費用は掛かるが新聞の折り込みチラシやポスティングなどが効果的だ。 企画や準備、運営は担当を決めて分担して行うのがよい。ひむかメディカルでは、有志による健康フェア実行委員会が企画から運営まで行う。「現場に任せ切ることが大事」と代表取締役の永田氏。信頼して任せれば、自分たちで意見を出し合い、内容が年々、充実してくるという。会社に”やらされている感”があるとフェアは成功しない。現場のスタッフの充実感が大切だ。そして継続すること。それこそが健康フェアの意義を高める秘訣といえる。 健康フェアの規模や形態は様々 灰吹屋薬局(川崎市高津区)では区民祭に合わせて実施。 医院の開業に合わせて行った、かもめ薬局相模台店(相模原市南区)の健康フェア。 健康相談会の告知 薬局内には必ずポスターを掲示して来局者に開催予定を伝える(写真上)。当日は、健康相談会を実施していることが分かるように表示する(下)。いずれも、薬樹健ナビが経営する健ナビ薬局南林間(神奈川県大和市)。 トライアドジャパンに聞いた 「薬局の存在を知ってもらい、気軽に利用してもらえるようにしたい」という考えから、10年以上にわたって健康フェアを開催してきたトライアドジャパン。同社運営管理部企画推進室課長の佐藤幸栄氏に、同社が経営するかもめ薬局の健康フェアの、準備から開催後までの一部始終を紹介してもらった。 第1回ミーティング開催 当日の流れを書いた文書をスタッフに送る チラシの原稿を入稿 折り込みチラシを新聞に入れる 測定機器の搬入、動作確認、操作手順のチェック 朝8:30 スタッフ集合 来場者にお礼状を送る
薬局がさらされている現実的な問題の解決にも、健康フェアは有効だ。野澤氏は、「調剤報酬は厳しくなる一方。これまで以上に、患者さんを集めることを真剣に考えなければ、薬局は立ち行かなくなる」と強調する。処方箋枚数を増やすには、かかりつけ薬局を持たない地域住民に、いかに自薬局をアピールするかが鍵となる。健康フェアはその一手段となり得るというわけだ。
では、どのように実施すればよいのか。健康フェアと一口に言っても、形態は様々だ。行政や地域の他団体と一緒になって大々的にやる、行政が主催する市民祭などに出展する、薬局のイベントとして定期的に実施する─などがある。また、他施設に出向いたり、毎月のように小規模な健康相談会や健康セミナーを薬局で行う方法もある。
(写真提供:灰吹屋薬局)
(写真提供:トライアドジャパン)
健康フェアができるまで
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