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DIクイズ5(A)
DIクイズ5:(A)新しい過活動膀胱の治療薬とは
日経DI2014年1月号

2014/01/10

日経ドラッグインフォメーション 201年1月号 No.195

出題と解答 : 今泉真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤科)

A1

(3)酒石酸トルテロジンの活性代謝物のプロドラッグ

 過活動膀胱(overactive bladder:OAB)とは、突然に尿意を催し我慢することが困難な「尿意切迫感」を有する疾患である。多くの場合、トイレが近い(頻尿)、夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)といった症状を伴う。ただし、尿意を感じてもトイレに行くまで我慢できず漏らしてしまう「切迫性尿失禁」を必ずしも起こすわけではない。

 OABに共通する病態は、蓄尿期における膀胱の不随意収縮であるため、治療は膀胱の不随意収縮の抑制を目的とした薬物療法が主体となる。排尿筋に多く存在するムスカリン受容体を阻害する抗コリン薬が第一選択となる。

 ただし、ムスカリン受容体は膀胱以外の器官にも広く分布しているため、抗コリン薬の服用時は口内の乾燥や便秘、霧視などの副作用が問題となりやすい。OABの症状をコントロールするためには継続した服薬が不可欠であるが、効き目への不満や副作用の発現によって、患者が服薬を中止してしまうケースも少なくない。わが国では、治療開始後6カ月以内に約70%の患者が服用を中止しているとの報告がある。

 今回からKさんに処方されたフェソテロジンフマル酸塩(商品名トビエース)は、抗コリン薬である酒石酸トルテロジンの活性代謝物(5-ヒドロキシメチルトルテロジン:5HMT)のプロドラッグとして開発された。ちなみに、トルテロジンはデトルシトールという商品名で既に販売されている。

 フェソテロジン自体の抗コリン作用は弱いが、消化管から吸収された後、非特異的エステラーゼによってほとんどが5HMTに加水分解され、強い抗コリン作用を示すようになる。一方、トルテロジンは主に肝薬物代謝酵素のチトクロームP450(CYP)2D6によって代謝され、5HMTに変換されるが、CYP2D6の活性には個人差があるため、治療効果にばらつきがあることが指摘されていた。

 通常、成人にはフェソテロジンフマル酸塩として4mgを1日1回経口投与するが、患者の症状に応じて8mgまで増量できる。なお、トルテロジンは4mgが上限とされている。

 フェソテロジンのトルテロジンに対する優越性を検討した海外での臨床試験では、フェソテロジン8mgはトルテロジン4mgよりOABの各症状や患者の生活の質(QOL)が改善していることが認められた。また、トルテロジンによる治療では効果が不十分と感じているOAB患者に対して、フェソテロジンを投与(4mg、8mg)した試験では、8割の患者が満足したとの結果が得られている。

 そのほか、フェソテロジン4mgでは効果不十分の患者に同薬を8mgに増量して投与したところ、症状が有意に改善したとの報告もある。また、8mgに増量した症例は4mgを維持した症例と比べて、口渇や便秘などの有害事象発現率や有害事象による中止率が増加しないことが示されている。

 なお、抗コリン薬の副作用の中で特に懸念される心機能や認知機能への影響は、臨床試験で認められていない。

こんな服薬指導を

イラスト:YAB

 今日からお飲みいただくトビエースというお薬は、以前飲まれていたデトルシトールと同じ働きをします。

 両方の薬とも、体の中で変換されて最終的に同じ物質になるのですが、トビエースはデトルシトールとは別の方法で変換され、デトルシトールに比べて効き目に個人差が出にくいように作られているのです。

 お薬を時々飲み忘れてしまうとのことですが、おしっこの悩みは、治療を続けることで少しずつ改善していきます。トビエースは、もし効いていないようでしたらお薬の量を増やすことも検討できます。続けてお飲みになっても症状が良くなっているように感じられなければ、先生にまたご相談するのがいいでしょう。

参考文献
1)泌尿器外科 2013;26:195-203.

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