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Report
医師・薬剤師大調査 くすりの満足度
日経DI2014年1月号

2014/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年1月号 No.195

 医師は薬物治療を行う際、異なる作用機序を持つ数多くの薬剤を使い分けている。その際、エビデンスに基づいて作成された各疾患領域のガイドラインを一つの指針にするわけだが、薬剤そのものが持つ有効性や安全性、服薬コンプライアンス、費用対効果なども重要な判断材料になってくる。

 では、第一線で患者を診ている医師や、患者に安全かつ確実に服薬してもらうために服薬指導や薬歴管理を行っている薬剤師は、それぞれの薬剤の有用性をどう捉えているのだろうか。そこで、『日経ドラッグインフォメーション』は医師向け総合誌『日経メディカル』と合同で、医師・薬剤師を対象とした薬物治療の満足度調査を実施した。

 調査ではまず、疾患領域ごとに、「治療を大きく変えたと思う薬剤」を自由に挙げてもらった。その結果、最も多くの人が挙げたのは、高血圧ではアムロジピンベシル酸塩(商品名アムロジン、ノルバスク他)、脂質異常症ではプラバスタチンナトリウム(メバロチン他)、消化性潰瘍ではランソプラゾール(タケプロン他)だった。使用実績やエビデンスが豊富で、薬物治療を牽引してきた“大御所”が確固たる地位を示した形だ。

 一方、一部の疾患領域では、近年登場した“新進気鋭”の薬剤が存在感を発揮しつつあることも浮き彫りとなった。例えば糖尿病では、2009年12月に発売されたジペプチジルペプチダーゼ(DPP)4阻害薬のシタグリプチンリン酸塩水和物(グラクティブ、ジャヌビア)がトップに浮上。単剤では低血糖を起こすリスクが極めて低く、良好な血糖コントロールが得られる点で、高く評価されたことがうかがえる。

 また調査では、よく使われる薬剤について、有効性、安全性、服薬コンプライアンスの観点での満足度を尋ねている。さらに「今後、開発してほしい薬剤」について、薬効や剤形のアイデアを自由に書いてもらった。調査結果からは、現場の医師と薬剤師が個々の薬剤のどのような点を評価し、製薬会社が今後満たすべきニーズがどこにあるのかが見えてくる。

 高血圧、糖尿病、骨粗鬆症、認知症の4領域に関する調査結果を見ていこう。

調査概要
『日経メディカル』および『日経ドラッグインフォメーション』が合同で企画し、2013年11月20~26日、インターネット上で実施。医師506人、薬剤師357人から回答を得た。
【医師】男性457人、女性43人。勤務形態別内訳は、開業医120人、診療所勤務医47人、病院勤務医334人、その他5人。年代別内訳は、29歳以下2.4%、30歳代15.2%、40歳代33.8%、50歳代37.7%、60歳代8.3%、70歳以上1.8%。診療科別内訳は、多い順に内科44.1%、循環器科11.3%、消化器科9.7%、外科9.1%など(複数回答)。
【薬剤師】男性226人、女性127人。勤務形態別内訳は、薬局・薬店58.5%、病院・診療所29.1%、製薬企業6.2%、医薬品卸業1.4%、大学・教育・研究機関2.0%、行政0.8%、その他1.4%、無回答0.6%。年代別内訳は、29歳以下8.1%、30歳代35.6%、40歳代30.5%、50歳代20.7%、60歳代3.6%、70歳以上1.1%。
【集計方法】「治療を変えた薬」ランキングは、全ての回答を一般名に置き換えた上で集計した。一部、薬効分類名による回答も有効としている。「満足度評価」では、各薬剤の満足度を1~5点で評価してもらい、有効回答の平均点数をグラフにした。「こんな薬があったらいい!」は自由記述形式。




高血圧
Ca拮抗薬が圧倒的な支持 配合剤や週1回投与製剤のニーズ大

「治療を変えた薬」ランキング

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 「高血圧治療を変えた薬」として医師・薬剤師の双方から圧倒的な支持を得たのは、Ca拮抗薬のアムロジピンベシル酸塩(アムロジン、ノルバスク他)。同薬を挙げた理由としては、「安全で確実な降圧効果」(60歳代男性、内科勤務医)や、「長時間作用型のCa拮抗薬として、服薬コンプライアンスと降圧効果が劇的に向上した」(40歳代女性、薬局薬剤師)という意見が目立った。2位のニフェジピン(アダラート他)については、「強力な降圧作用」(60歳代男性、内科勤務医)を理由に挙げる医師が多かった。

 3位のロサルタンカリウム(ニューロタン他)は、国内初のアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)。治療選択肢が増えたことのインパクトのほか、「腎不全への進行を抑制するデータを初めて示した」(50歳代男性、内科勤務医)という点を評価する声が複数あった。

 続いて、薬効分類別の満足度評価に目を向けてみよう。

薬効分類別の満足度

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 ここでも、Ca拮抗薬とARBの満足度は4点を超える高い評価。Ca拮抗薬からβ遮断薬までの上位5つ(配合剤を除く)は、日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン2009』で、第一選択に位置付けられている薬効群だ。調査では処方頻度を尋ねていないため、実臨床での処方実態を必ずしも反映しているわけではないものの、満足度の分布から、ガイドラインに即した薬物治療が実践されていることがうかがえる。

こんな薬があったらいい!

「確実な降圧作用を持つ薬」(50歳代男性、内科開業医)の開発を望む声が多数寄せられた。「胎盤や乳汁移行性が少なく妊婦にも安全に使える降圧薬で、もっと強力なもの」(20歳代女性、産婦人科勤務医)という意見もあった。「少量のサイアザイド系利尿薬、ARB、Ca拮抗薬の配合剤」(60歳代男性、内科・腎臓内科勤務医)、「週もしくは月単位で持続する超長時間作用型の降圧薬」(50歳代男性、消化器内科勤務医)など、投与回数低減のアイデアも。




糖尿病
DPP4阻害薬が治療へのインパクト、満足度ともトップの座に

「治療を変えた薬」ランキング

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 「糖尿病治療を変えた薬」では、初のDPP4阻害薬であるシタグリプチンリン酸塩水和物(グラクティブ、ジャヌビア)が他を大きく引き離してトップに。「血糖改善効果の強さと低血糖の少なさ」(50歳代男性、内分泌・代謝内科開業医)、「これほど守備範囲が広く安全な経口血糖降下薬はないと実感した」(50歳代男性、内科勤務医)など、血糖降下作用の高さとともに単剤では低血糖を起こさない点を評価する声が目立った。

 2位のインスリン製剤は、「糖尿病患者の命を救った」(50歳代男性、内分泌・代謝内科勤務医)と、従来“死の病”として恐れられていた糖尿病の治療を一変させた薬として評価する声が多かった。スルホニル尿素(SU)薬の中では、第3世代と呼ばれるグリメピリド(アマリール他)が挙がった。

薬効分類別の満足度

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 DPP4阻害薬とインスリン製剤の評価の高さは、薬効分類別の満足度評価においても同様だった。両者の満足度は、医師・薬剤師ともに4点を超えている。

 一方、医師と薬剤師の満足度評価を見比べてみると、単独の薬効群はいずれも、医師に比べ薬剤師の方が満足度が高い傾向にあるのに対し、配合剤に関しては、医師よりも薬剤師の評価が低かった。糖尿病治療では高血圧治療に比べ、配合剤のシェアが広がっていないことや、薬剤師にとって成分量や配合比が一目で分かりにくいことが、満足度に影響した可能性が考えられる。

こんな薬があったらいい!

糖尿病治療薬への要望として最も多かったのは、皮下注射以外のインスリン製剤の開発。「インスリンのパッチ剤」(50歳代男性、消化器内科医)、「吸入インスリン」(60歳代男性、内科勤務医)、「インスリンの点鼻薬」(50歳代男性、内科・腎臓内科勤務医)など、様々な剤形が提案された。「経口投与でき、消化管から吸収されて門脈経由で肝臓に作用するインスリン様製剤」(50歳代男性、内分泌・代謝内科開業医)という薬理作用に着目した意見も。




骨粗鬆症
服薬コンプライアンス向上に貢献した4週1回投与の経口BP製剤が高評価

「治療を変えた薬」ランキング

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 骨粗鬆症治療の第一選択薬とされるビスホスホネート(BP)製剤。中でも、アレンドロン酸ナトリウム水和物(フォサマック、ボナロン)を、「治療を変えた薬」として挙げた人が多かった。「ビスホスホネートとして初めて有効性が示された」(50歳代男性、整形外科勤務医)ことを評価する声が多数。また、「1カ月に1回(点滴静注)という新しい投与方法」(40歳代男性、内科勤務医)や、「週1回経口投与によるコンプライアンス向上」(40歳代男性、薬局薬剤師)など、投与回数を低減したことの貢献を評価する意見が目立った。

 2位のミノドロン酸水和物(ボノテオ、リカルボン)は、経口ビスホスホネートとしては初の4週1回投与製剤。そのインパクトは大きく、「月1回まで来るとは画期的だった」(30歳代男性、病院・診療所薬剤師)との声が多かった。

薬効分類別の満足度

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 投与回数の違いは、満足度にも大きく影響しているようだ。全ての骨粗鬆症治療薬の中で、4週1回投与の経口ビスホスホネート製剤は最も満足度が高かったのに対し、1日1回投与のビスホスホネート製剤は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)や活性型ビタミンD3製剤よりも満足度が低いという結果になった。

 なお、4週1回投与製剤と1週1回投与製剤に関しては、医師に比べ薬剤師の評価が高い傾向にあった。これは、患者に安全かつ確実に服薬してもらうことを重視して服薬指導や薬歴管理を行うという、薬剤師の職能の表れかもしれない。

こんな薬があったらいい!

骨粗鬆症治療薬に関する要望としては、「服用方法に制限のない薬」(40歳代男性、老年科勤務医)、「食後服用可能なビスホスホネート製剤」(50歳代男性、薬局薬剤師)という声が複数寄せられた。投与回数を低減したビスホスホネート製剤が登場したものの、患者にとってより服用しやすい剤形がほしいというのが現場の本音のようだ。




認知症
OD錠や貼付薬に高い評価

「治療を変えた薬」ランキング

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 従来有効な治療薬がなかった認知症領域で、症状の進行抑制効果を初めて示したドネペジル塩酸塩(アリセプト他)が断トツ。「日本発の薬」(60歳代男性、産婦人科開業医)、「苦味のコーティング技術」(30歳代男性、薬局薬剤師)を評価する声もあった。

薬効分類別の満足度

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 薬効分類・剤形別の満足度に関しては、特に薬剤師がドネペジルの口腔内崩壊錠を高く評価。コリンエステラーゼ阻害薬と併用可能なNMDA受容体阻害薬のメマンチン塩酸塩(メマリー)や、貼付薬のリバスチグミン(イクセロン、リバスタッチ)が続いた。

こんな薬があったらいい!

認知症患者の増加が避けられない高齢社会を反映し、「アルツハイマー型認知症の根本治療薬」(50歳代男性、脳神経外科勤務医)、「認知症の進行を抑える薬ではなく、認知症を『治す』薬」(50歳代男性、循環器科勤務医)を切望する声が多数寄せられた。「食品などにも使える化合物で予防できるようになれば」(50歳代男性、大学・教育・研究機関の薬剤師)というアイデアも。

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