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DIクイズ1(A)
DIクイズ1:(A)同じ心房細動なのに薬の量が4倍?
日経DI2014年1月号

2014/01/10

日経ドラッグインフォメーション 2014年1月号 No.195

出題と解答 : 今泉 真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤科)

A1

Gさんの同僚が慢性心不全を合併した頻脈性心房細動であると推測されるため。頻脈性心房細動に対するビソプロロールフマル酸塩(商品名メインテート他)の用量は通常1日2.5mgであるが、慢性心不全の合併例に対しては、体液貯留や心不全の悪化を防ぐために1日0.625mgから開始することとなっている。

 心房細動は最もよく見られる不整脈の一種で、心房で不規則な電気興奮が生じ、心房が小刻みに震えて規則正しく収縮できなくなる病態である。このため心房内の血液のうっ滞により血栓が形成されやすくなり、心原性脳塞栓症を起こすリスクが高くなる。近年、直接トロンビン阻害薬や血液凝固第X因子阻害薬が相次いで登場したことを受け、心房細動に対する抗凝固療法が急速に普及しつつある。

 一方、心房細動には、慢性の進行性疾患としての側面もあることを忘れてはならない。心房が規則正しく収縮できなくなると、心室に十分な血液が送り込まれず、心拍出量(1分間に心臓が動脈へ送り出す血液量)が減少する。早期の心房細動では頻脈を認めることが多いが、130回/分以上の頻脈が持続すると、左心室拡張不全が生じ、うっ血性心不全を引き起こすリスクが高くなる。

 従って、持続性または永続性の頻脈性心房細動に対しては、動悸や息切れといった自覚症状を低減させる効果を含め、心拍数調節療法(レートコントロール)が重要となる。心房細動時の心拍数を、安静時は60~80回/分、中等度運動時は90~115回/分に低下させることが管理目標の目安となる。

 心房細動時の心拍数は、房室結節の脱分極(不応期)によって決まることから、心拍数調節療法では、Ca拮抗薬、β遮断薬、ジギタリス製剤などの房室結節伝導抑制薬が用いられる。

 このうち、心機能が保たれているケースに対しては、Ca拮抗薬やβ遮断薬がよく用いられるが、心機能が低下したケースに対しては、ジギタリスが選択されることもある。ジギタリスは副交感神経系の活性時に効果を発揮するため、活動時の徐拍作用はCa拮抗薬やβ遮断薬に比べて弱い。また、Ca拮抗薬やβ遮断薬が心筋の収縮能を低下させる陰性変力作用を持つのに対し、ジギタリスは心筋の収縮能を増大させる陽性変力作用を持つためである。さらに、慢性心不全でコントロールが不十分な場合は、ジギタリスに少量のβ遮断薬が追加されることもある。

 Gさんにβ遮断薬のビソプロロールフマル酸塩(商品名メインテート他)とCa拮抗薬のベラパミル塩酸塩(ワソラン他)が処方されているのは、持続性の頻脈性心房細動のためと推察できる。ビソプロロールはβ1受容体への選択性が高く、内因性交感神経刺激作用(ISA)がないという特徴を持つ。同薬は高血圧や狭心症などに用いられてきたが、2011年に慢性心不全への適応が追加となった。さらに13年6月、頻脈性心房細動への適応も公知申請により追加されている。

 頻脈性心房細動に対しては通常、1日1回2.5mgから開始する。一方、虚血性心疾患または拡張型心筋症に基づく慢性心不全に対しては、1日1回0.625mgから開始し、忍容性を考慮しながら維持量を決定する。これは、慢性心不全において、ビソプロロールの投与初期や増量時に心不全や浮腫の悪化、体重増加などが起きやすいためである。添付文書上、慢性心不全にその他の適応症を合併している場合は、慢性心不全の用法・用量に従うこととされている。

 心筋梗塞は、慢性心不全の原因疾患の一つである。従って、Gさんの同僚は慢性心不全を合併した頻脈性心房細動であると推察される。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 メインテートは、以前から高血圧や様々な心臓病の治療に使われています。最近、Gさんのような心拍数が多いタイプの心房細動にも効果があることが実証され、使われるようになりました。

 ただ、服用量は、治療する病気によって異なります。心拍数が多いタイプの心房細動には通常、1日2.5mg服用しますが、心臓の機能が弱まっている場合は、病状を悪化させる恐れがあるので、1日0.625mgから服用を始めて、徐々に増やします。同僚の方は、過去に起きた心筋梗塞で心臓が弱まっているので、お薬の量が少なくなっているのでしょう。薬の量が多いからといって、Gさんが重病というわけではないのでご安心ください。

参考文献
日本循環器学会他「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2008年改訂版)」

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