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Report
持参薬管理に薬局の情報活用
日経DI2013年12月号

2013/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年12月号 No.194

 患者が入院中に服用するために、外来や他の医療機関で処方された薬を持ってくる持参薬。「家にある薬を全て持ってくる」「薬を薬袋から出して1つの袋にまとめてくる」「一包化されているが何の薬か分からない」─といったケースは後を絶たず、病棟の薬剤師や看護師の大きな負担になっている。

 こうした中、地域中核病院や県薬剤師会が先導し、薬局での情報を持参薬管理に生かす動きが出てきた。

岐阜県総合医療センター
20代女性。薬局や医療機関に直接問い合わせ

 岐阜県総合医療センター(590床)は、持参薬の管理に積極的に取り組む病院の一つ。この地域では、以前から様々な薬薬連携に取り組んでおり、そのつながりを生かして持参薬を管理する仕組みを確立している。

 同センターの取り組みの最大の特徴は、病院の薬剤師が、患者の入院前にかかりつけ薬局に直接連絡して情報を入手していること。院内処方の場合などは医療機関にも問い合わせる。

 患者は、飲むべき薬を持ってこなかったり、逆に飲まなくてもいい薬を持ってきたりするため、持参した薬そのものだけを調べる方法には不確実性がつきまとう。それなら、かかりつけの薬局や医療機関に直接問い合わせる方が情報の信頼性は高いというわけだ。事前に情報が得られることで病棟薬剤業務の効率化にもつながる。

 同院副院長で、薬剤センター部長の遠藤秀治氏は、「持参薬確認業務は、患者が持ってきた薬だけを調べて終わりがち。しかし、本当に必要なのは、患者が服用している薬を正確に把握し、アレルギーや副作用といった薬歴を把握すること」と話す。

 同センターでは、2012年6月に病棟薬剤業務実施加算の算定開始に合わせて、センターの玄関のすぐ脇に外来薬剤センターを開設。専任の薬剤師を1人配置して、外来で持参薬確認業務を行うことにした。薬歴提供依頼の手順は表1の通りだ。

表1 岐阜県総合医療センターにおける薬歴提供依頼の手順

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同意を得て薬局に直接連絡
 まず、入院予定の患者に対し、外来薬剤センターの受付で、安全な治療を行うために、患者が服用している薬の情報を病院が把握する必要があることを説明する(写真1上)。

 次に、外来薬剤センターのブースで持参薬の確認業務の手順を説明。病院から患者のかかりつけの薬局や医療機関に連絡して、薬に関する情報を得ることに対し同意を得る(写真1下)。

写真1 外来薬剤センターでの説明の様子

岐阜県総合医療センターでは、外来薬剤センターを開設し、専任の薬剤師を1人配置して、持参薬の確認業務を行っている。

 同意が得られたら、患者が通う薬局と医療機関の名前を全て聞き取り、同意書にサインをもらい、説明を終了する。

 外来薬剤センターと、薬局との情報のやり取りはファクスで行う。外来薬剤センターの薬剤師は、「施設間情報連絡書(依頼書兼回答書)」(図1)に、患者氏名や入院予定日などを記入し、患者のかかりつけ薬局にファクスで送信し、情報提供を依頼する。

 同連絡書を受け取ったかかりつけ薬局の薬剤師は、薬局記入欄に使用薬や薬歴情報を記入し、外来薬剤センターにファクスで返信する。収集した情報は電子カルテに入力し、病棟担当の薬剤師が閲覧できるようにする。

 外来薬剤センターの薬剤師、井上寿江氏は、「安全な治療のために必要であることを説明すれば、断る患者はいない。実際に運用してみて、薬局に直接依頼すれば有用な情報が得られると実感している」と話す。

図1 「施設間情報連絡書(依頼書兼回答書)」の実際の記入例

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 表2は、かかりつけ薬局からの情報提供が有用であった事例の一部。副作用の状況や現在の処方に至る経緯、服用状況なども把握でき、病院での処方設計に活用している。

表2 かかりつけ薬局からの情報提供が有用であった事例(遠藤氏の資料を基に編集部で作成)

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入院までに95%が回答
 同センターに12年5月末から13年3月末に入院した患者(緊急入院患者を除く)9084人のうち、55.5%に当たる5044人が外来薬剤センターを利用した(24.0人/日)。情報提供依頼が必要と判断しファクスを送信したのは、1273件(6.1件/日)。うち入院までに回答が得られたのは1215件で、その回答率は実に95.4%に上った。

 情報提供依頼先は、薬局が1020件(80.1%)、病院・診療所が253件(19.9%)。岐阜市とその周辺地域が90%程度を占めたが、県外に送り回答を得たケースも2%ほどあった。遠藤氏は、「依頼先は非常に協力的で、回答率の高さに感動した」と話す。

 井上氏によると、運用開始直後は、薬局や医療機関から戸惑いの声も聞かれた。しかし、回答を送ってもらった施設に対し、患者の入院時に病棟の担当薬剤師から情報を受け取った旨を連絡し、さらに、退院時に、病院での治療内容を記した「施設間情報連絡書(退院時用)」を作成し、患者から渡してもらう仕組みにしたことで協力が得られやすくなった。

 同センターから情報提供の依頼を受けたことがある下呂薬局(岐阜県下呂市)の中川正樹氏は、「病院での治療状況や処方変更の情報は薬局にとって貴重な情報」と話す。

岐阜県総合医療センターの遠藤秀治氏(左)と、外来薬剤センターの井上寿江氏。

 また、当初は、患者から聞き取った薬局や医療機関の全てに連絡書を送っていたが、その後、紹介状に薬剤情報が正確に記載されている場合や、患者がお薬手帳や薬剤情報提供書を持参し、薬物療法の状況が正確に確認できる場合は、連絡書を送らないことにした。現在はファクスを送るのは1日3件程度に落ち着いている。今後の課題は、カバー率が低い緊急入院患者への対応だという。

鹿児島県薬剤師会
かかりつけ薬局が持参薬を整理

 鹿児島県薬剤師会は、かかりつけ薬局による持参薬整理事業を始めた(写真2)。取り組みの特徴は、薬局が持参薬を整理する点だ。

 発案者の一人、鹿児島県薬剤師会常務理事の沼田真由美氏は、「患者は、かかりつけ薬局で交付した薬を病院に持っていく。かかりつけ薬局こそ持参薬の管理に関わるべき」と話す。

 沼田氏は、鹿児島県薬と病院薬剤師会との意見交換の中で、病院では持参薬の管理に非常に困っている現状があることを知ったという。鹿児島県薬は、以前から残薬の相談事業に力を入れており、独自に作成した「おくすり整理そうだんバッグ」に自宅残薬を入れて薬局に持参してもらい、薬局で薬を整理する取り組みを12年から行っている。そこで、同じバッグを利用して、持参薬整理事業も行うことにした。

写真2 鹿児島県薬剤師会が作成したポスター

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鹿児島県薬剤師会は、患者が残薬や持参薬を入れて薬局に持参するための「おくすり整理そうだんバッグ」を作成し、患者に配布している。

バッグに薬入れ薬局に提出
 バッグを使った薬局での持参薬整理の手順は表3の通りだ。

表3 「おくすり整理そうだんバッグ」と「入院準備連絡票」を使った薬局における持参薬の整理の手順

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 まず、病院の入院説明担当者が、入院予定の患者に、かかりつけ薬局による持参薬の整理事業について説明する。そして、病院が薬局に情報提供を求めることに対し同意を得る。

 同意が得られたら、患者に「おくすり整理そうだんバッグ」を手渡し、服用中の薬をバッグに入れて、かかりつけ薬局に持っていくよう伝える。

 同時に、病院担当者は、患者のかかりつけ薬局を聞き取り、患者との面談後、「入院準備連絡票」(図2)を作成し、かかりつけ薬局にファクスで送る。連絡票には、患者氏名や入院予定日を記し、薬剤情報提供書の添付や持参薬の整理、一包化の情報提供など、薬局に依頼する内容を記入する。

図2 鹿児島県薬剤師会が作成した「入院準備連絡票」の記入例
(提供:マルノ薬局[鹿児島市]丸野桂太郎氏)

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 患者が薬局に持参薬を持ち込むと、薬剤師が薬を整理し、入院準備連絡票に必要事項を記入して、整理した薬とともにバッグに入れ、患者に返却する。患者は入院時にそのバッグを持参するという流れだ。利用者はまだ少ないが、会員薬局や医療機関に周知し、浸透を図っている。

 ドラゴン薬局(鹿児島県枕崎市)は、かかりつけ薬局による持参薬整理を実践する薬局の一つ。同薬局では、以前から「おくすり整理そうだんバッグ」を用いて、自宅残薬の整理を積極的に行ってきた。その延長で、患者が入院する際に、薬局で薬を整理し、入院先の医療機関に、服薬状況や一包化の情報などを情報提供するようになった。

 同薬局管理薬剤師の中久保明子氏は、「以前、病院に勤務していたときに持参薬の管理に苦労した。薬局としてできるだけのことをしたい」と話す。

ドラゴン薬局の中久保明子氏(左)と鹿児島県薬剤師会の沼田真由美氏。

 入院日数が短縮される中、医療依存度が高い患者が病院とかかりつけ医を行き来する機会は、今後ますます増える。入退院時に薬物療法が正確に移行できるかは、医療の安全や質に直結する。持参薬管理に、かかりつけ薬局が大きな力になれることを認識し、具体的な取り組みを考えていく必要があるだろう。

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