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社長はつらいよ
来年は社長の給与差し止めの危機?!
日経DI2013年12月号

2013/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年12月号 No.194

 12月、社員のボーナス支払いのめどがつき、ホッと一息つく。今年は医薬分業バッシングの風が吹き荒れた一年だったが、これも来年の診療報酬改定を巡る駆け引きなのだろう。財源が厳しい折、調剤を削って医科の点数をキープしようとする意図があると聞く。さらには20店舗以上のチェーン薬局の基本料を下げるだの、各報酬項目の算定要件が厳しくなるだの、色々聞こえてきている。

 同じように経営していても利益が上がったり下がったりする調剤報酬改定は、薬局経営者としては非常に頭が痛い。しかし社員たちは、あまり興味がないようで、どこ吹く風といった様子。自分たちの点数は、自分たちで守らなくては、という意識が希薄なのだ。調剤報酬改定の時期には毎回、「今回は厳しい」と社員に言い続けてきたが、まるでオオカミ少年のようになっていて、今では誰も聞いてくれない。

 もっとも、2年前も4年前もその前も、「今回は厳しい」と言いながらも、蓋を開けてみれば、それほど厳しくなかったというのが実情だ。実際、上場している薬局チェーンの決算を見ると、売り上げは対前年比でおよそ8%増、利益は十数%も増加している。バッシングがあれど、まだまだ優遇された業界だ。薬局経営者の多くは、「さすがに、ここまで進んだ医薬分業を、今さら元に戻すことはないだろう」と考え、「真面目に経営していれば、つぶれることはない」と高をくくっているのであろう。

 ただし、来年は消費税率の引き上げがある。薬局経営者とっては、調剤報酬改定よりも、むしろ問題はこちらだ。政府は増税分を診療報酬に上乗せして調整する方針を示しているが、最近ではその話があまり聞かれなくなった。一体どうなることやら……。

 薬局は医薬品や備品などを仕入れる際に消費税を払っているが、患者からは消費税相当分を受け取っていないので、何らかの補填がなければ、増税分はそのまま薬局の持ち出しになる。ある試算では、消費税率が5%から8%に上がると、薬局の粗利率は約2%ダウンするといわれている。年商40億円のわが社の場合、2%だと8000万円だ。

 8000万円を捻出するには経費を切り詰めるしかないが、薬局の場合、切り詰められる経費項目はそれほど多くない。手っ取り早いのは、社長の給与を下げることだ。もちろん、8000万円ももらっているわけではないので、社長の給与をゼロにしたところで足りない。

 実は、これまでに何度か訪れた経営危機の際は、社長の給与を差し止めて乗り切ってきた。差し止めといっても、ボクにだって生活がある。霞を食っては生きていけない。そこで会社に借金をして、それで生活をしていた。業績が回復して給与が出るようになった今は、その時の借金を会社に返済している。国家の財政も厳しいが、社長の家計もかなり厳しいのである。

 消費増税に伴う患者の受診抑制も非常に気になるところだ。高齢者の医療費が1割負担となった2002年、所得が一定以上ある高齢者が3割負担となる後期高齢者医療制度が導入された08年には、高齢者を中心に受診抑制が起こった。消費増税によって利益が減る上に、処方箋枚数が減れば、本当に薬局経営は厳しくなる。

 今となっては誰も真剣に聞いてくれない「今回は厳しい」のぼやきだが、これまでと違う意味合いの「厳しい」なのだ。それを分かってくれている社員は少なく、寂しい限りだ。(長作屋)

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